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ドラマ「問題のあるレストラン」について

The latest update was done on 24 February 2016, and the second last on 21 March 2015.

これまで鵯記で書き散らしてきた感想をまとめて採録(表記など一部改変,□は追記)。

2015年1月22日(第2話放映日)
■メール送受信しながら22:00から先週に引き続き「問題のあるレストラン」というドラマを見たが,これでもかというほど次から次へとダメな男ばかり出てきた。
■10年もの間,言葉の暴力を受け続けたせいで自己効力感が激しく損なわれた鏡子さんが自分を取り戻していく過程が(まあ,現実にはこんなにすんなりいかないと思うが)良かった。
■予告によると次回は松岡茉優さんの迫力ある演技が炸裂しそうなので,これは見続けるしかないなあ。
2015年1月29日(第3話放映日)
■発表会後に審査会2つを済ませ,コメント付け作業の続きをしていたが,21:00過ぎに空腹感に負けて帰途に就いた。湊川公園廻りで家に着いたのは22:20頃だった。問題のあるレストランを見ながら,アルトバイエルンと白菜を茹でてスウィートチリを掛け,白い御飯と一緒に食べた。
□当日は上記の通り,見たという事実しか書かなかったが,この回の後半,松岡さんと子役が演じるチカちゃんが交互に描かれる料理のシーンは,独白の切なさと相俟って神業だった。この瞬間,このドラマに完全に心を掴まれた。
2015年2月10日(オサレもんが無かった火曜)
■今日は火曜なのにオサレもんが無いのか。若手芸人以上に松岡茉優さんのMCが楽しみで見ているので無いのが残念。その松岡さんといえば,今クールは本業の女優さんとしても『限界集落株式会社』『問題のあるレストラン』という2つのドラマで素晴らしい演技を見せてくれている。
■とくに『問題のあるレストラン』の第3話の後半は涙なしには見られない名演だった。
■ちなみに『問題のあるレストラン』のエンディング映像が第4話から変わったのだが,Anna KendrickがPitch Perfectのオーディション場面でやったやつに似てるなあと思って検索したら,Anna自身がレストランでやってるMVがあった(1億7千万回も再生されていた)。とくに最初パン生地のようなものを捏ねているので,『問題のあるレストラン』の新エンディングは,このMVへのオマージュなんだなとわかった。
2015年2月12日(第5話放映日。とうとう語り始めてしまった)
■明日の夜からカンボジアなので生の食材を補充することはできず,冷凍ブロッコリーと冷凍豚肉小間切れをコンソメスープで煮たものを作って晩飯にした。
■毎週楽しみに見ている「問題のあるレストラン」を見ながらだと,もっと凝った料理を作りたくなるが仕方が無い。今回は高畑充希演じる「量産型巻き髪女子」(ここまで徹底している人は決して量産型ではないと思うが)の心の鎧が剥がれて,つい本音をこぼしてしまうのだけれども,それでも必死に鎧にしがみつき続けるという場面が山場だった。
■それにしても,このドラマに登場する男はどいつもこいつも(レストランの客は別として),見事なほど相手の気持ちをまったく考えてないクズとして描かれているなあ。女性相手に限らず,他人をまったくリスペクトしてないヤツばかりだ。社長を含むセクハラオヤジ3人組,ヒモ(本日最後の登場シーンも,実は怪しげなマンションの男とグルになって,新田さんを売ったのだと思う),ストーカーの5人は犯罪レベルなので論外として,シェフの仕事には真面目に取り組んでいる俺様野郎も,客も含めて他人の人格を認めていない点は同じだから,温かい料理は作れないだろう。まるで世の中のクズを集めて凝縮したような描かれ方。
■ルフィの海賊旗のように旗を掲げ,人と人の心のつながりを大事にして,他人の人格を尊重するヒロイン側との対比を明確にする点でわかりやすい演出だとは思うが。
■なお,エンディングがCupsだったのは先週だけだったのかもしれないが,たぶん演出家か脚本家はPitch Perfectが好きなんだろうなあ,と思ったのは,門司とたま子が腕を突き上げるシーンだった。あれって,Pitch Perfectの中で,Becaが初めて見せられたときは無視していて,2度目に見たときは涙していた,Breakfast Clubのラストシーンへのオマージュなのではなかろうか。Pitch PerfectもBreakfast Clubも背景も能力も性格もバラバラな人たちが集まって何かを達成する話なのが『問題のあるレストラン』と共通しているし。
■もう1点,松岡茉優が演じるシェフのチカが,料理は野菜やお肉とお話をすることです,と食材にリスペクトというか愛をもって大事に接しているのに対し,東出演じる門司シェフは,できたフォンが気に入らないと具材ごと捨ててしまうのは,食材に対する愛のなさとして鮮やかな対比をなしていた。客には出せなくても賄いにするとか,無駄にしないやり方があったはずだ。関連して,最近だと食材への愛を感じさせるシーンとしては,映画『リトル・フォレスト』でアケビの皮まで炒めて食べていたのが印象に残っているが,今回,父親があまりにもクズ過ぎて結局サーブしなかった,実に美味そうなスペアリブのランチを,泣きながら自分で食べていたチカの姿が描かれたのも,実に食への愛を感じさせるシーンだった。
2015年2月19日(第6話放映日,長野にて)
■夜は米を炊いて,ジャガイモとニンジンとタマネギを刻んで豚肉小間切れと一緒にコンソメスープで煮たものを作って食べた。
■毎週楽しみに見ている「問題のあるレストラン」第6話を視聴したが,仲間が揃い,予想外のワイルドカードが登場して本格的に悪と戦う決意を固めたのと同時に,新田さんと川奈さんと一緒に公園でシューベルトのピアノソナタ21番(このとても説得力のあるブログ記事によると,死の恐怖を克服したことが現れているとのこと)を聴きながら,チカが「生きてて良かったな。生きような」と独白するシーンが印象的だった。
■このシーンはまた,この3人が幸せな幼少期を過ごしていたことを示していて,それは,成長期にいろいろ辛い目に遭いつつも3人ともが根っこのところで優しさを持ち続けていられたことへの説明にもなっているのだと思った。
■新田さんが戻ってきて強がりを言うところは,ONE PIECEでメリー号のことでルフィと喧嘩別れしたウソップが帰ってきて強がりを言ったシーンを思い出してしまった。ONE PIECEではゾロやサンジがウソップにもルフィにも筋を通すことを強いるのだったが,BISTRO FOUの仲間たちは,誰もが自ら傷ついた経験者だからか,どこまでも優しくて強がりをわかってくれ,新田さんも川奈さんも柔らかく受け入れてくれるのがまた良い味を出していた。
□ちなみに,麦わらの一味の役回りでいうと,たま子さんはもちろんルフィだが,烏森さんがゾロ,ハイジさんがブルック,チカちゃんがサンジ,新田さんがウソップ,川奈さんがナミ,鏡子さんと息子がロビンとチョッパーかな,と思う。もちろん一対一対応はしないがそんな感じ。
2015年2月26日(第7話放映日)
■「問題のあるレストラン」の第7話は,再びチカに試練が訪れるが,図らずも「真面目に作っているだけだけど」というライバルシェフの言葉で吹っ切れた展開と,その後のチカの笑顔が最高に良かったし,さらに続いて,レストランを訪れた母親の手を取って「チカはもう子供じゃ無くなったの」からの表情と言葉には完全にヤラレタ。やっと声を上げて泣きじゃくることができて良かったね,と思わせてくれた後,田中たま子が「いい仕事がしたい」と言い,チカが全身を震わせながら「思う存分,ここでいい仕事がしたいです」と応えるところまで素晴らしかった。
■なお,エンディングはたぶん本編とは関係なくて,遊び心なのだろう。第4話のエンディングが,おそらくはAnna KendrickのCUPSへのオマージュであるように,もしかすると何かのオマージュなのかもしれないが,わからなかった。
2015年3月5日(第8話放映日)
■問題のあるレストラン第8話を見ながら晩飯。大団円に向かって(?)話が収束し始めた感じもあって,第6話における公園のシーンとか第7話におけるチカの完全な自立のように息をのむような美しさはなかったが,第1話で繰り出した最大の問題(かなり高いハードルだと思う)を乗り越えるための手を不自然で無く展開させた大事な回だった。
2015年3月8日(ついにポトフを作ってしまった日)
■晩飯は,とうとう厚切りベーコンとキャベツとジャガイモとニンジンとダイコンでpot-au-feuを作ってしまった。問題のあるレストランを見る度に作りたくなっていたのだが,逆にハードルが上がってしまって,なかなか作れずにいたのだ。味はまあ,そこそこだったが,春キャベツが美味かった。
2015年3月11日(第9話放映前日)
■明日は問題のあるレストランの第9話がある。第10話ではきゃりーぱみゅぱみゅが客として登場してレストランのスタッフと一緒になってCupsをやるそうだが,ますますAnna KendrickのCupsへのオマージュだな。
■そういえば,第8話の冒頭,五月と高村の出会いのシーン,図書館で棚越しに顔を合わせて微笑んでしまうという演出が,Pitch PerfectでBecaとJesseが大学のFM局でアルバイトをし始めて,レコード棚越しに見つめ合う演出を思い出させた(Pitch Perfectの方はJesseが顔写真がジャケットになっているLPを次々に選んで自分の顔の前で見せるので,最初は仏頂面だったBecaが思わず笑ってしまうというオマケまでついていたが)。
■たぶん間違いなく,演出の誰かがPitch Perfect好きだな。というか,そもそもPitch Perfectのストーリーが,問題のある女声アカペラグループであったBarden Bellasが心を通わせて練習を積み,ライバルの男性グループ(決して悪党じゃなくて,途中でスカウトされたとかで仲間を捨ててどこかに行ってしまったリーダーを除けばいいヤツばかりなのが「問題のあるレストラン」とは違うが)に大学アカペラ大会で勝つ話だったから,「問題のあるレストラン」が深い意味でPitch Perfectへのオマージュであっても不思議はないのだ。
■他人の気持ちに無頓着だったヒロインBecaがJesseに教えて貰った映画「Breakfast Club」を見て涙を流し,他人を思いやれるようになることが,Barden Bellas再生の鍵だったから,まさに通底する作品テーマと言える。
■なお,CupsをやりながらAnna Kendrickが歌っているWhen I'm goneは,Pitch Perfect 2のOfficial Trailerでも歌われているから,Pitch Perfectの制作陣も好きな曲なんだろうと思う。いい曲だし。
2015年3月12日(第9話放映日)
■確定申告関連の作業が必要なのだが,やはり「問題のあるレストラン」は見入ってしまう。
■第9話は三人娘の成長っぷりと絶妙な掛け合いの素晴らしさは安定の見応えだが,何と言っても雨木社長という悪役の凄さが際立った演出だった。
■門司シェフは改心して他人の気持ちを考えるようにはなったが,子供のような純真さには変わりないという設定。まあ,それはそうだろう。
■第7話から少しずつ細部は変えつつ続いている,きゃりーぱみゅぱみゅとコラボしたエンディングは微妙。「問題ガール」という曲が悪いわけではないが,映像的にあれはないよなあ。個人的な趣味としては,Anna Kendrickの「When I'm gone」をそのまま持ってきても良かったし,あるいはGoosehouseの名曲「Good Morning」なら,この物語が訴えたいテーマにぴったりだったと思う(古い曲でも良ければ,チャクラの『南洋でヨイショ』に入っている「まだ」もテーマに合うと思うが)。
2015年3月19日(第10話放映日)
■今日は「問題のあるレストラン」の最終回なので,それを見ることを楽しみにしていろいろな仕事を片付けたい。Goosehouseは,『Milk』に入っている「PopUp!」も「問題のあるレストラン」に合う曲だと思う。
■広げた風呂敷をどう畳むのか注目の「問題のあるレストラン」最終回は,約5分のオープニングだけで外の問題がいろいろ片付き,ビストロフーにはきゃりーぱみゅぱみゅが客として来店し,客全員を巻き込んでCupsをやるという,Anna KendrickのMVへのオマージュ(とはいえ,本家の方が遙かに格好いいのが残念だったが)まで完了してしまった。
□(2016年2月24日追記)2015年当時は存在すら知らなかったが,既にWhen I'm goneを歌いながらCupsするYou Tube動画を公開していたLittle Glee Monsterの6人が,この回に客として出演し,きゃりーぱみゅぱみゅの周囲の席に座って一緒にCupsをやっていた。録画を見直したら,たしかに出演していたのだが,あまりにもエキストラ感が強くて(というか,きゃりーぱみゅぱみゅのビジュアルのアクが強すぎて),客として埋没してしまっていて勿体ない使い方だった。
■外の問題がどうやって片付いたのかを,あと2回くらい使って丁寧に描いてくれた方が良かったのだが,全10回では尺が足りなかったということなのだろう(鏡子さんの離婚調停と親権問題はどうなったのか明示されなかったし,結局のところ五月さんへのセクハラ問題がどう決着したのかも明示されなかった。なんとなくうまく行ったことを暗示はするが)。
■詳しい説明もなかったが,たぶん五月さんが取材に応じていたものを含めたメディアによるバッシング(リアルだったのは,直接取材した一誌だけではなく,様々な雑誌やスポーツ紙がよってたかってバッシングしたと思われる描写)が起こって雨木社長が辞任したということか。
■その後は,実はビストロフーの方もクレーマーによって閉店寸前に追い込まれていたことが示され(注:見ているときは,烏森弁護士がなぜ動かないのか疑問だったが,専門違いなのと,訴訟でも起こしてくれれば別だが,クレーマーの匿名性から動きようがなかったということだろう。その辺り,烏森さんの悔しい思いを吐き出す台詞が一言でもあれば良かったと思う),奇跡が起きない限りはその日が最終営業,という一日が丁寧に描かれる展開。
■間にチカが異母弟に贈った言葉とずっと鍋やフライパンを振り続けたのであろうと思わせる右手の指で泣かされたり,虹が見えたり星が見えたり黄金伝説というかあまちゃん本気獲り回のウニ獲ったどーを彷彿とさせる手紙獲ったどーの叫びがあったり,自己効力感が低かった鏡子さんや給仕の仕事に最初は誇りをもてずにいた「ゼネP」新田さんが自分も含めたフーへの愛をストレートに表明してみせたり(「罰ゲーム」という突っ込みの入れ方を決めた気持ちが背景に暗示されるのが上手い),たま子が夢に見たレストランが夢であることが明らかであるが故に儚く美しかったり,といった場面が挟まれたが,結局ビストロフーも閉店してしまった。
■ここで終わりでも良かったし,その後の1人1人を断片的に描くのでも良かったような気がするが,話は突然300日後になって,コメディタッチで続編の含みをもたせた展開まで描かれて終幕となった(まあ,確かに300日後の髪型や服装から,それぞれの300日を想像することはできるんだが……)。
■Pitch PerfectはBarden Bellasが優勝し,BecaとJesseが心を通い合わせて幕を閉じるのでスッキリするが,本作は,Anna Kendrickの"When I'm gone"で示される旅立ちエンディングへのオマージュなのかもしれないが,結局レストランとしては問題があるまま終わるので,今ひとつ釈然としない。
■雨木社長を絶対悪として描いてしまったためと,たま子が門司シェフを永遠の少年に留めておきたいと望んでしまった(門司シェフのtonerにはなりたくなかった)ため,たま子の夢に出てきたような理想のレストランが実現する大団円を迎えることは確かに難しかったと思うが,別のラストシーンもあり得たと思う。例えば,バッシングに耐えられず辞任前に雨木社長が自殺に追い込まれ,母も蒸発してしまって途方にくれる異母弟を目の前にして放心状態のチカが,門司シェフの料理を食べて再起すると同時に,転がり込んだ遺産を使ってシンフォニックの場所でフーを理想のレストランとして甦らせるとか(そこまでジェットコースターにしてしまうと,他の人の脚本になってしまうか?)。または,伊達さんがクレーマーとの和解には失敗したけれども,別の場所を提供してくれるという,ちょっとご都合主義の展開もありえた。
■既に表参道で固定客も付き始めていたようだし,従業員の気持ちから言っても,客を大事にすることを考えても,何とかして表参道で店を続ける方が筋が通っている(屋台とか移動販売にしてもいいわけだし)。
■そうせずに,フーをいったん閉店した300日後に,海だとますます麦わらの一味の海賊旗のように見えるフーの旗を掲げて(3Dに×がついて2Yだったことのオマージュであるなら,300日でなくて2年の方が良かったと思うが)最初から始める展開を選んだのは,たぶん,現実には世間の問題は何も解決していないから視聴者はゼロから始めなくてはいけないわけで,そういう視聴者にエールを送りたかったのだろう(サブタイトルが「頑張れ,女の子!」だったし)。永遠の少年門司シェフが変わらぬライバルでいてくれる中でゼロからの(だけど「仲間がいるよ」という状態で)再起を図るエンディングは,まあ意図はわかるが,かなりONE PIECE的で,人によって好き嫌いが分かれると思う。
■それでも,役者の見せる一瞬の表情だったり,作中人物そのものの魂の叫びであるかのような台詞だったり,公園でシューベルトのピアノソナタをシェアする3人娘の美しさだったり,宝石のような瞬間がいくつもある,いいドラマだった。

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