枕草子 (My Favorite Things)
【第2回】 曾て聴いた音楽について(1997年5月26日)
- イパネマの少年少女 同じ曲で「少年」と「少女」があり,少年の方は,handsome a boyで,少女の方は,lovely a girlという風に若干歌詞が違う。この曲を初めて聞いたのは,CBSソニーだかが出していた,ホーム・ミュージックシリーズとかいう赤いカセットケースに入った全集物だった。その時は別に何とも思わなかったのだけれど(まあ小学生に良さがわかる曲ではない),10年くらいして聴いた,橋本一子の「Mood Music」というアルバムに入っていた「少年」が良かった。ペンシルヴェニア州立大で仕事をしていたとき,WKPS Student Radioという地元FM局をよく聞いていたのだが,毎日午後になるとJazz spectramという番組でJazzばっかりになり気持ちが良かった。そんなある日,その番組でかかったElla Fitzgeraldの歌う「少女」を聞いて周囲の風景が一瞬にして吹き飛び潮風が吹いてきて以来,ますます好きになり,Antonio Carlos Jobimのcompilation CDを買い漁り,まさに嵌まってしまったのだった。今のところ一番好きなTakeは,Antonio Carlos Jobim and friends: Live in Sao Pauloの3曲目The boy from Ipanemaでヴォーカルはシャーリー・ホーンのやつ。
- Wave Jobimは凄い。これら2曲と,Quiet Nights of Quiet Stars(1999年8月19日訂正:Iさんのご指摘に感謝します)とDouble Rainbowは有名だからたぶん誰でも一度くらいは聞いたことがあると思うけど,知られていない曲も名曲ばかりである。Jazz composerとしてばかりでなく,ギターとヴォーカルも味があっていい。しかし夭折した天才ヴォーカリストElis ReginaのDouble Rainbowを聞くと,Jobim自身のヴォーカルでは到達できない忘我の境に飛ばされてしまうので,やはりJobimの真骨頂は作曲家なのだろう。
- Take the "A" train いわずと知れたDuke Elingtonの名曲。これも,Ellaのヴォーカルでは「Return to Berlin」というライブアルバムで聞くことができるが,この曲は男性ヴォーカルの方が雰囲気がでると思う。Al Jarreauが歌ってくれてないだろうか。Duke本人のinstrumental版も悪くはないけれど。
- My funny valentine この曲に関しては阿川泰子のヴォーカルに思い入れがあって,ぼくの中では他の人が演奏するテイクはどれも物足りなく感じる。Ronny Matthewsのピアノで聞くのもまた一興ではあるけれど。
- Summertime 初めて聞いたのは,角川三姉妹の渡辺典子が映画の中で歌っていたとき。赤川次郎原作のクサい映画だったが,これは良かった。男声ではAl Jarreauの「Tenderness」収録のものが良い。渡辺典子版がクラブとすれば,Al Jarreauは場末のバーといった趣で,まるで違う曲みたいだが。ジャニス・ジョプリン版だとまた別の良さがあり,JOHN COLTRANEのMY FAVORITE THINGSに入っているtakeでのJOHNのテナーサックスの流れるようなSummertimeもまた独自の良さがある。つまりはこれが名曲だということか。
- Saxophoneサックスって金属製だけど木管楽器に分類されたと思う。音色が好きなのだ。Saxophoneといえば初期のKate Bushの曲にもあった(Kate Bushの楽器シリーズではViolinがベストだと思うが)。クォーターフラッシュのMisty Heartでヴォーカルが吹くサックスでsexyという言葉の意味を知ったような気がする。
- My favorite things 枕草子で替え歌できる。テーマも同じなので,もしかしたら,この曲の着想は枕草子から得たのではないだろうか。…というのが,このページが枕草子というタイトルになっている所以である。
この曲を聞くと,ディズニー映画とかJR三都物語をつい連想する。これもJazzなのでいろいろなテイクがあるが,最高なのは,Acoustic Club(中西俊博や赤木りえがやっていたセッションバンド)のAcoustic Christmasというアルバムに収録されているものである。Al JarreauのTendernessで,Kathreen Battleとのデュエットバージョンも良い。Sarah VaughanのAfter Hoursの1曲目に入っているバージョンも,シンプルな中にあれだけの深みのある世界はなかなかないだろう。JOHN COLTRANEだと,Live at Village Vanguard Againに入っているtakeはピアノが他の楽器に比べて弱くバランスを欠くので,この曲と同じタイトルのアルバムに入っているtakeの方が好きだ。
- Takako Minekawa 謎のテクノギャル…だった。WKPSで良く午前中のNew music showの時間にリクエストされてかかるのが,どうも気になったのだった。声の質は尾崎亜美とアメリー・モランの間くらい。音楽的にはプラスティックスとジューシーフルーツとサディスティック・ミカ・バンドを足して3で割ったような。まさにテクノそのもののリズムに,リコーダーのメロディーが絡むのが妙に気持ちいいfantastic catと(この曲はヴォコーダーばりばりなので地の声は全然分からない),尾崎亜美みたいなメロディーラインにラップを絡めた,アイスクリームが溶けちゃう(?)と,挨拶文とか定型句をくっつけたラップの3曲しかまだ聞いたことはないのだった。ああ,アルバムがあるのなら聞いてみたい…と思っていたのだった。ある日思い立ってGooで検索してみたのだった。「…なんでえ,メジャーじゃん。」ポリスターから何枚も嶺川貴子個人でも,L←→Rのキーボード&コーラスとしても,カヒミ・カリィとのデュオでもアルバムをだしていたのだった。CHAT CHATというアルバムには「風の谷のナウシカ」が入っているそうだ。メジャーだとわかってちょっとがっかり。まあ,考えてみれば,全く無名な人がこんだけ面白い音を作っているわけはなかったのだが。
- 太田裕美 空前絶後のファルセット。初期の松本隆・筒美京平時代と,よしだたくろうと組んだりして試行錯誤していた中期1と,「南風」のヒットでまた松本隆・筒美京平帰りした中期2と,アメリカに渡って音楽的に大変身した後期1,それからくじらとか板橋文夫とかGONTITIとかと組んで行く後期2,と勝手に分けて考えている。それぞれまったく曲想から歌い方から違うが,全部いい。初期のアルバムでは「心が風邪を引いた日」,中期1は「背中合わせのランデヴー」,中期2は「海が泣いている」。中期2では企画ものだった,やなせたかしの詩に曲をつけたアルバム「想い出をおく君をおく」もよかった。とくに好きな曲は「しらないところで」。後期の曲では「窓から春の風」「ササラ」「葉桜のハイウェイ」「ロンリー・ピーポーII」とか,GONTITIの「マダムQの遺産」に入っている曲が良い。
(1998年8月14日追記)新曲が出たようです。「魂のピリオド」というミニアルバムで,松本隆・筒美京平コンビです。オフィシャルサイトができたのを見て思い出したのですが,Little ConcertのSimple Little Wordのリフレイン部分とか,粉雪のエチュードの「粉雪舞い散る散る・・」てのも名作でしたね。1992年に出ている「どんじゃらほい」(SONY MUSIC CD/ ESCB1285-6)は,今度知らん顔して子どもに買ってきてやろうっと。(後日談:買ったのはよかったが,やはり太田裕美さんの声はふわふわしすぎていて,子どもには受けが良くないようだ。けんたろうお兄さんとあゆみお姉さんのインパクトのある歌の方が好きみたいだ。粋のわからぬ子どもたちであることよ。)
(1999年9月3日追記)「神様のいたずら」というミニアルバムがまたでた。「インチキ25周年記念」のボックスは買わなかったけれど,このミニアルバムは買ってみた。MP3にしてVAIOに入れて聴いてるんだけれど,これは良い。
- GONTITI 牧瀬里穂の北海道生ビールの宣伝と鈴木杏樹のミネラルウォーターシャンプーの宣伝でかかっていた曲が両方入っている「Black ants life」は,GONZALEZ三上さんとTITI松村さん御本人たちが言っているようにジャケットが秀逸なのだが,もちろん曲も秀逸。仕事をしながら聞くには,もう少し前の「マダムQの遺産」とか「冬の日本人」とかの方がいいけれど。
1998年8月16日追記:「Strings with GONTITI」をきく。いろいろなスタジオでいろいろな弦楽団とセッションしているようなのだが,やはりGONTITIはギターだなぁと思わせる。Bamboo Chairってのがお気に入り。しばらく前に研究室にあった,インドネシア土産とかいう籐の椅子に座って,リゾート地のプールサイドの葉陰でくてーっとしているような気分になる。Foggy ValleyとKiss on the Cornerは,結構ストリングスが前面に出てきているけど,これはこれなりにいいのであった。
- G-Clef 仕事をしながら聞くには最高のG-Clef。Feltまでいくと眠くなっちゃうし,GONTITIだとちょっと聞き入っちゃうし。「五右衛門」が一番好きだ。彼らの音楽にはタンゴの影響があるのだなぁ。Piazzollaを聞いてからわかったけど。
- Finlandia シベリウスには惹かれる。やはりオッコ・カム指揮ヘルシンキフィルがベストか。ティンパニーの連打が好きなだけではないけど,H'mが好きな人,Ki motionが好きな人にもお勧めできるクラシック(H'mとかKi motionなんて知っている人なら,Finlandiaくらい聞いたことあるだろうなぁ)。
1998年8月16日追記:The Wood-Nymphを聞く。OSMO VANSKAさん指揮,LAHTI SYMPHONY ORCHESTRAである。CDジャケットの絵のようなはかなげな妖精ではなくて,むしろワルキューレの騎行とか禿山の一夜に出てきそうな自然に密着した恐ろしげな妖精のイメージ。この曲は,レミンカイネン組曲と平行して書かれていたらしい。CDの構成からいうと,1曲目がタイトル曲のオーケストラバージョンで,最終曲がメロドラマバージョン(ピアノ伴奏でのナレーション)。ちなみに世界初レコーディングらしい。
- Hommage a Piazzola オーディオマニアの友人が絶賛するので,そんなに良いなら一つ買ってみようと思い,買ってきたもの。で,ぼくは自らの不明を恥じた。凄いとしかいいようのないものであった。タイトル通り,ヴァイオリニストのGidon Kremerが,タンゴの神様ことPiazzollaの死に際して捧げたアルバムなわけだが,Piazzollaの作曲の素晴らしさも然ることながら,Kremerの演奏,例えば6曲目にクラリネットとベースだけがクレッシェンドしていった後に,絶妙の間を置いて,すぅーっと入るヴァイオリンの音色は神業としかいいようがない。
- Spice Girls こんだけかかれば買うわな。ペンシルヴェニア滞在中,もう異様なまでにラジオでかかっていたヒット曲「Wannabe」が入っているアルバムを買おうと思ってアパートの近くのレコード屋(ここはまだアナログレコードも売られているので「レコード屋」と称する)に行ったら,ちょうど中古が入ったところで,2ドル安く買えてラッキー! そのWannabeが1曲目で,さすがに聞き飽きたので,2曲目から始まるようにCD-Playerというソフトにセットしている今日このごろ。
- Japanese Girl 現在,ImpressのインターネットラジオでFrom N.Y.というコーナーを担当している「マッシー川口」こと川口雅代さんは(てことはまだ独身なのか?),その昔「1年B組新八先生」で榊原解子という数学教師役(岸田聡史演ずる新八先生のクラスの副担任でもあった)をしていたのだ。で,「3年B組貫八先生」が終わったあたりで「桜中学大音楽会」というスペシャル番組があって,その時に彼女が歌った曲がこれ。もともとは小泉今日子(だったと思う)に書いた曲だとか言っていたような気がするけど。当時彼女は「がーちゃん」という愛称で,Saluteという永遠の名作デビューアルバムとシングル4枚を出し(4枚目がちょっと売れた「メモワール」),このJapanese Girlや「桜っ娘」や「花鳥風月」は,次のアルバムに入るという話だったのだが,結局「次のアルバム」は発売されずじまいだった(涙…1万円くらいなら払うから作ってくれないかなぁ。この3曲だけでいいんだけど)。実は文化放送の「ミスDJリクエストパレード」を担当していたときに差し入れをもってサインを貰いに行ったくらいの大ファンだった…なんて,こんなところに書いていいのだろうか?
(1998年5月15日追記)昨日,御本人からメールをいただき,ホームページURLを教えていただいたので見に行ったところ,上記記載が大嘘であることがわかってしまった。ぼくの記憶力も相当いいかげんである。sed形式で訂正すると,s/1年B組新/2年B組仙/g,s/岸田聡史演ずる新/さとう宗幸演ずる仙/,s/小泉今日子(だったと思う)/三田寛子/,s/4枚目/3枚目/,s/「メモワール」/「メモワール」で4枚目が結構売れた「ピリオド」/,である。なお,1998年7月3日に発売される彼女のベストアルバム"masshy@love.net"に「Japanese Girl」は入るそうで,めでたい限りである(3曲で1万円払うといった以上は,もちろん1曲でも入れば普通の3000円くらいのCDは買うつもり)。
(1998年8月10日追記)「桜中学大音楽会」を録音したテープ(テレビからなのでモノラルだし音質も最低だが)を偶然発掘して聞いてみたところ,再び記憶の大間違いに気づいた。それがあったのは1983年4月1日,しかし川口雅代さんが歌ったのは「やさしいAffair」1曲のみで,「仙八先生」組では,前に宮崎美子さんの「今夜は二人」,後がシブがき隊「バージン・ショック」とさとう宗幸さんの「もゆる想い」の4曲だけというものだった。すると,「Japanese Girl」と「桜っこ」(よく考えてみると実は「娘」か「子」か「こ」か,わからない)と「花鳥風月」は何で聞いたのだろう? テレビ(もしかするとラジオ?)のライブで1回聞いただけなのに音は鮮明に覚えているというのも不思議だが。同じ番組だったよなぁ。。。
(1998年8月16日追記)"masshy@love.net"をとうとう購入。一度通して聞いた後,Creative CD Playerの設定でトラック9のJapanese Girlをリピートにして聞いている。いま10回目くらいか。例によって若干記憶と歌詞が違っていたが,最後の「桜色」がかぶるところ,最高である。確かに,誰かが彼女の伝言板で書いていたように,新しい曲は昔より声が若いと思う。再収録曲は,アレンジも変わっていないし,声も昔と同じようだから,新録音はしなかったのかな? 夏少女は好きなんだけど,ヴァイオリン1本の伴奏とかで聞きたいなぁ(>贅沢?)。新しい曲の中ではSMILEがよかったけど,やっぱりこのCDの中ではJapanese Girlが最高。聞きながら思ったのだが,これを聞いた番組は,「ひなまつりコンサート」のような気がしてきた。イントロが鮮明に記憶にあって,「ジャカジャカジャーン・ジャンジャカジャカジャカ・(クレッシェンドで)ジャカジャカジャーン・ジャンジャカジャカジャカ・(さらに大きくなって)ジャカジャカジャーン・ジャッジャッ・ジャジャジャン・(ここから歌詞が入る)」だったのだが。
- 捨てるほどの愛でいいから 中島みゆき「寒水魚」のA面1曲目。これ,イントロのアレンジに参ってしまった。後は詞が凄かった。「夢でもいいから,嘘でもいいから…あの人に贈る愛に比べたら,ほんの捨てるほどの愛でいいから。」こんな愛され方をしたらぞぞーっとして大抵の男は逃げ出しちゃうね,って言ってたのは,こすぎじゅんいち氏だったか。しかし,こんなに心揺さぶられる旋律は魔女でもなければ書けないんじゃなかろうか。これと,同じアルバムの「鳥になって」のメロディーとクラシックの交響曲風のアレンジは気絶しそうにいい(ヴァイオリンがこれほどはまっている曲は他にないのではなかろうか)。一方では,「断崖」や「おまえの家」みたいに素朴なやつも好きなんだけど。基本的にぼくは人間性善説なので,「エレーン」とか「ミルク32」とか「傾斜」とかは耐えられないけど,でもああいう世界を書かせたときの中島みゆきの天才はよくわかる。「世情」とか「時刻表」とか「店の名はライフ」とかも好きだなぁ。なんだ,ぼくは中島みゆきのふぁんだったのではないか。
- カントリー・ガール 谷山浩子が小さかったときの曲。「おはようございますの帽子屋さん」はさすがにリアルタイムでは聞いていないけど,「カントリー・ガール」は大石吾郎がラジオで紹介していたのを覚えているからリアルタイムで聞いていたはず。これ,メロディーも詞も美しい。声はもちろん透き通るような感じで良いし。「てんぷら・さんらいず」みたいな意味不明の曲もいいんだけど,でもやっぱりぼくは「カントリー・ガール」の方が好きだった。
- Hey! kids こうなると順序としては八神純子なわけである。これはたぶん彼女の初めての全部英語の曲。メロディーもアレンジも印象強い。これが入っていたアルバムには「Johannessburg」というレゲエ風の曲も入っていて,それも印象強い。まあ,もちろん「Polar Star」とか「想い出のスクリーン」とかメロディーも彼女の声もすばらしいのだが,詞が単なるラヴソングを脱出するのは,このHey! Kidsが入っているアルバムからではないかと。あんまり,ありがちなラヴソングって好みじゃないので。
- 17歳の地図 ぼくは護国寺には行かなかったけれど,尾崎豊は凄いと思う。詞の鮮烈さと歌唱のうまさばかり取りざたされるけれど,メロディーメーカーとしても一流である。とくに,この曲は凄い。1サビの後の,「人波の中をかき分け,壁伝いに歩いても,しがらみのこの街だから,強く生きなきゃと思うんだ。ちっぽけな俺の心に,空っ風が吹いてる。歩道橋の上振り返る,焼けつくような夕陽だ」のメロディーと詞のコンビネーションは絶妙。言い古された表現だけど,長生きするにはあまりに天才だったんだろう。
- ナイト・ナイト・ナイト スペクトラムの「セカンド・ナビゲーション」に入っているとっても格好いい曲。スペクトラムといえば「イン・ザ・スペース」での衝撃的なデビュー時の姿(あれだけ銀ピカファッションでホーンばかり並ぶと壮観)が忘れられないが,実力派だったのだよな。
- No blood 白井良明の最高傑作。
- TV dinner Studio Romantistという鈴木恵一の奥さんのアルバムに入っている曲。
- Don't trust any more over 30 うーんつまりムーンライダーズが好きなのだ。気付いてみればぼくもover 30だなぁ。
この項,これにて一件落着。
▼前【1】(曾て読んだ本について(1997年5月6日)
) ▲次【3】(コンピュータの組み立てについて(1998年3月7日;2000年9月14日ミスタイプを修正)
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