昨夜は妻が食文化研究会の仕事でいなかったので,子どもたちと一緒に,食事をしてから夕涼みがてら散歩に出かけた。例によって自分が子どもの相手をする代わりに外界の刺激を与えて楽をしようという作戦である。この19日と20日は,根津神社も白山神社も例大祭(…たぶん)ということで,本郷界隈はどこもかしこもぴーひょろろとお祭り音楽が流れている。神社に行く途中も,各町会から御神輿が出ていて,夜のこと故大人の担ぐ大きな御神輿と威勢の良いかけ声に,子どもたちは少々気圧されている様子。かけ声がやっぱりそいやそいやだったのはちょっと残念だったけれど,お祭り特有のはっぴ姿やら捻り鉢巻やらを見ているうちに,なんとはなしに心が浮き立ってくる。
根津神社につくと,まあもの凄い屋台の数である。5月のつつじ祭りのときも凄いが,今回は夜だけに屋台の灯りであの大きな門がライトアップされて仄かに浮かび上がって見え,美しいことこの上ない。なるほど,旧江戸三大天下祭の一つだけのことはある。金魚すくい,あんず飴,わた飴,射的,たこ焼き,などなど昔ながらの屋台に並んで,「ポケモン」の「ピカチュウ」の空気を入れて膨らますビニールモデルらしきものが200個ばかり水流に乗って回転しているのをすくうとか,ビニール製の巨大な恐竜型のものの内部がトランポリンになっているやつとか,変わったものも散見された。金魚すくいは,今では遊びで200円,持ち帰りで300円というのが相場らしい。血が騒いだが,遊びで200円というのも嫌だし,さりとて水槽はこの前ザリガニが死んでからまだ洗っていないので持ち帰りはできない。しかたなく,同じく血が騒いだらしい上の子4歳半を「明日また来よう」となだめて通り過ぎた。金魚すくいは4軒くらいあったか。
何も買わないのもお祭りに来た者としては風情がないし,子どもも欲しがるのでわた飴を買ったのだが,500円もするのには驚いた。まあ二つ分入っているのだが,高くなったものである。それでも,ゆっくり屋台をひやかしながら境内を歩くこと30分くらいだったか,途中で眠ってしまった下の子2歳をおんぶしながらの散歩だが結構楽しめた。家の近くまで帰ってくると本郷森川町会の大神輿も帰ってきていて,ロータリーが上気した顔をした人で溢れていた。見慣れた場所でも,祭りのときには全然違う風景に見えるものだなぁ,と妙に感心した。
それから1時間くらいして帰ってきた妻が,「私も子どもの頃わた飴好きだったのよ」などといいながら,わた飴を一口食べて曰く,「昔と味が違うね。増粘多糖類でも入ってるんじゃない?」と食文化研究者らしい感想をいう。言われて食べてみれば,確かにザラメだけではなさそうな味がする。昔のわた飴ってふわふわ持続時間がもっと短かったような気がするのだが,これは買ってから2時間たってもまだふわふわしているのが,考えてみれば不思議である。こういうのも技術革新ではあるのだろうが,なぜかもの悲しくなったのだった。