枕草子 (My Favorite Things)
【第250回】 vaio君の不幸と素朴な難問(2000年2月23-25日)
- 予定通り火曜の夜は研究室に泊まったので,水曜日は早く帰ろうと思っていたのだが,公衆衛生実習をやったりして昼間はなかなか忙しく,vaio君がご機嫌を損ねてsafeモードでしか立ち上がらなくなったりもしたので(復帰のためにはEZ Linkケーブルの抜挿のタイミングが鍵だったらしいのだが,Windowsのトラブルというのは何が悪いかわからないので,関係ないところまでいろいろ調整してしまって時間がかかったので),結局終電の1本前,あさま535号に乗った。がら空き。そのおかげか,科研費奨励(A)の報告書を車内でほぼ仕上げることができた。
- vaio君の不幸の副作用で,ブートの時にどうしても自動的に読み込まれてしまっていた余計なソフトを排除することに成功した。スタートメニューのファイル名を指定して実行からmsconfigを呼び出して,ブートタブから要らないソフトのチェックを外せばよい。これは窓の手で自動実行をいじるよりも確実である。
- 24日はセンター試験監督の代休をとっている。やることは娘の保育参観と,パスポートをとりにいくことである。それ以外は,いろいろな原稿を書く予定。ちなみに,今週中に仕上げねばならない原稿は,来週のミーティング用のハンドアウトだけなのだが,来月27日のシンポジウムの要旨は今月中にということなので,ほぼ同時に仕上げる必要がある。もっといえば,Oxford 2000に演題を出すなら,文部省から旅費を出して貰うための申請が来月20日締め切りなので,これも手続きを急がねばならない。
- 去年の今頃は,ヒトは何故肉食をするのか? なんて思いをはせながらも毎日毎日報告書原稿に忙殺されていたことを考えれば,大プロジェクトの最終年度に関わっていない今年の方がずっと楽なはずなのだが,研究が捗らないのは何が悪いのだろう。
- 保育参観では,娘が何でも率先してやることに驚いた(親バカ?)。その後パスポートをとりにいったら,相変わらずがら空きだった。雪がひどいので自転車でなく徒歩でいったため,のどの乾きと寒さに負けて,暖かい缶飲料を買って飲んだが,合同庁舎の自動販売機はどの缶でも110円である。外より安い。
- のどの渇きといえば,立川市立第十小学校6年生からメールで,「人は水を飲まないで何日生きられるのでしょうか?」という問い合わせのメールが来たが,これは難問である。人道的に許されないので実験はできないし,死なないためには体水分量の維持が問題となるはずだから不感蒸泄のレベルが問題となり,気温,湿度,気圧によって結果が変わってくることが考えられるから,厳密には「わかっていない」が正解になる。砂漠に飛行機が不時着したとか,海を漂流したとか,廃冷蔵庫に閉じこめられたとかの理由で「水を飲まないで生存した日数」の記録を調べれば,ある程度代替になるかもしれないが,水以外の要因による生存への影響を除くことが難しいし,1滴も飲まなかったかどうかの確証がないので答えというには弱いように思う(海を漂流した人は,自分の尿を飲んで水不足を補ったという例もある)。主に座業をする成人男性が普通に生活している状態だと,毎日だいたい2.5リットルくらいの水が出入りするが(出典:Davidson and Passmoreの教科書"Human Nutrition and Dietetics 8th Ed.", Churchill Livingstone, 1986),水の摂取が低下すれば,身体はある程度それに順応して代謝量を下げることができる筈である。その能力には個人差がある筈なので,ある程度の例数も必要と思う。さて,何という返事を出したら良いものか?
- 合同庁舎から家に帰る途中,善光寺大本願南門前にある「門前茶寮彌生座」(座は,正しくは人の部分が2つとも口だがフォントがない)という創作郷土料理の店(毎週火曜と毎月第2水曜が定休,営業時間は11:30-20:30)で昼食。味も雰囲気も素晴らしかった。とくに,そば味噌うす焼きが絶品。貰ってきたパンフレットをみたら,「弥生座コーヒー」というメニューの説明に「八ヶ岳山麓で熟成されたコーヒー豆を使用しています」と書かれていたのだが,パーチメントのついたままで輸入して,八ヶ岳のどこかでオールドビーンズにしているということか? それなら凄いけど。
- 就寝時刻が早かったおかげか,3:30に目が覚めたので,ミーティングで紹介予定の論文を読んでいる。が,今ひとつ面白くない。今週のNatureに出ている,熱で制御される味覚の話とか熱帯熱マラリア原虫の多剤耐性を制御する遺伝子の話とかみると,紹介テーマを変えたくなってしまうなあ。
- 雪が降り続いているので,長野電鉄で長野駅へ出て,6:43発あさま502号に乗る。今日の混み方は普通。窓外の景色が白いと思っていたが,例によって上田近くのトンネルを抜けたら晴れていた。荒川を渡った辺りまでは真っ白に雪をいただいた富士山がくっきり見えていたが,赤羽あたりから見えなくなった。やはり東京の空気は汚いのだなあ。
- 大学に着いてみたら,薬学部ゲートで身分証明書の提示を求められた。ああ,そうか,今日は2次試験だったんだ。
- 西村有史自家ページが面白いので時折読んでいるのだが,ぼく(べつに匿名でなくてもよかったのだが「ある読者」として取り上げられている)の問いに対して「昨日までの一言」の「女装論余波」で頂いた答えは強弁だと思う。週刊金曜日の「風速計」に掲載されている佐高信氏の「女装知事」という一文への批判なのだが,論文と違ってエッセイなのだから,言葉を辞書的な意味から離れて使うことは,文脈上,意図が明らかである限り許される筈である。佐高氏の文脈での「女装」は,知事当選者のsexが男か女かということを問題にしているのではなく,女(というgender)を装うことそのものによって集票し当選したことを批判する意図が明らかであろう。男性優位社会に対するアンチテーゼとしてのフェミニズムの存在意義は認めるけれど,本来の性差別をなくすためにはアンチのためのアンチではいけないので(政策や理念と無関係に「女性だから」という理由で支持するって変でしょう?),その意味で,今回の佐高氏の一文にはそれなりの理があると思う。ぼくは,週刊金曜日や佐高氏を無条件に支持するわけではないし,「買ってはいけない」のような単純な環境保護テロリズムには警告を発したいと思うけれど,今回の佐高氏の発言に関しては,西村さんの読みは誤読,あるいは字面だけを捉えた批判ではないかと感じた。
- 八方尾根や軽井沢の雨や雪は酸性(信濃毎日新聞)といっても,大陸から風に乗って硫化物イオンなんかが流れてくるせいだとすれば,現地では対策不可能だよなあ。長野市は対策できるとしても。
- なんかねー,こういう文章を見かけると,結構ショックだなあ。環境社会学の発展形としての生態学的機能主義っていうけど,VaydaとかEllenくらいは読んで書いているのだろうか? こういう関心を持つ人から,学問としての人類生態学が認知されていないというのは,たぶんまずいことなんだろう。
- 今日は研究室にて徹夜でいくつかの文書作成とミーティング準備。
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