枕草子 (My Favorite Things)
【第346回】 昆虫採集(2000年7月20日〜21日)
- 海の日はいい天気だったので,子ども2人を乗せた自転車を押して,昭和の森公園というところに行った。炎天下を徒歩1時間,真っ黒に日焼けしてしまったのはいいとして,喉が乾いて乾いて,用意していった1.2リットルの魔法瓶水筒のミルクティーはあっという間になくなり,ペットボトルを都合5本も買うはめになった。昭和の森公園には(といっても昨日は南半分しか行かなかったのだが),噴水があって自由に入っていける水たまりや,フィットネス器具が揃った体育館とか(入らなかったけど),運動遊具や(登ったところが家になっていて机や椅子もある滑り台がいたく気に入っていた子どもたちだった),名前の通り広大な森があって,途中買ったパンを昼飯としながら都合4時間,思い切り遊ぶことができた。森でカナブン,アオカナブン,カミキリムシの類(たぶんノコギリカミキリ)などを見つけたのが,息子にとっては最大の収穫だったようだ(それぞれ1匹を捕まえて,虫かごに入れて持ち帰り,蜂蜜をあげて観察していた。小学校にもっていくつもりらしい)。同じように樹液が出ていても,カナブンが集中している木と1匹もいない木があって,樹液にも美味いのと不味いのがあるのかなあなんて話したり,たくさんいても,採り尽くしたらいなくなっちゃうんだから,残さなくちゃいけない,と教えたり。昼間だったので,カブトを見つけたかったら土を掘ってみるように言ってみたのだが,結局見つからなくて断念したようだ。それでも大満足で帰ってきたから,いい休日だったように思う。
- ところでカブトといえば,昨日は中条村で人工飼育をして放飼したカブトムシの採集会があって,長野県内ばかりでなく山梨や新潟からも親子連れが集まった,という記事が今朝の信毎に載っていた。天然の生物を保護するという観点からは養殖昆虫も役に立つとは思うけれど,それを採集する経験というのは,なんか違うんじゃないかと思う。近県からも集まるほどのイベントになってしまうとは驚きである。飼育して放したカブトムシなんか,捕れるのが当たり前だろう。子どもの頃の昆虫採集の醍醐味である,何がいるのかどれだけいるのかわからないという,未知との遭遇的な側面が欠如している。もっとも,記事によると「予想外の大きなクワガタムシを捕まえて喜ぶ親子も」いたそうだから,800匹のカブトムシは最低保障みたいなものかもしれないが,本来昼間は樹上になどほとんどいない筈のカブトムシをそうやって採集することは,疑似自然というか,作られた採集経験になってしまうのではないかと懸念する。そうはいっても,養殖ニジマスのつかみどりとか釣り堀とかいったものも他の生物に触れる機会を与えるという意味はあるから,養殖カブトでも実物を手にする機会だと考えればいいのかもしれないのだが,へん,それなら自然のカナブンの方がずっといいや,と思ってしまう。なぜここに拘りたいのか,自分でもつきつめて考えているわけではないのでよくわからないのだが。
- ところで信毎といえば,最近大分改善されたと思っていたが,今朝のマラリアワクチンへ見通し,とかいう記事は久々に駄目だった。阪大の堀井研がウガンダで50人の子どもを対象にして,SERA産生DNAを大腸菌に遺伝子組換えして作ったワクチンの臨床試験をやったら症状が軽くなったという話なのだが,何人で有効だったのか,どういう感染状態のときにどういう症状になったのか,原虫のstrainは押さえてあるのか,といった重要な点がさっぱりわからない。SERAを使った研究もこれまでたくさんあるので,それとどこが違うかといったこともわからないから,本当に何段かぶち抜きの大見出しをつけるほどの新発見があったのかも判断できない。致命的なのは,「20日までに明らかにした」というだけでソースが書かれてないことだ。何度も指摘しているように,ソースを明記するのは鉄則である。改善を強く要望したい。
- 今日の往路は6:43発あさま502号。実は今日,農学部でオープンキャンパスというのをやっているらしいが,一昨日の夜,人類学会サテライトシンポジウムのポスター送付先について相談したときに大塚教授(東京大学の広報委員長でもある)からイベント広報の難しさの例として話を聞くまでは,そんなことが行われているとは知らなかった。たしかにイベント広報の難しさはあると思うけれど,学内他部局でもしられていないという状況はまずいのではないかと思った。どうせなら全学的にとか,あるいは研究室単独企画でも,もっとやればいいのになあ。まあ,フィールド中心の教室だと,見学しただけでは何をやっているのかわかりにくいと思うが,実験系なら高校生にだってそれなりに面白いと思うのだ。こんなに狭いところで本や論文に押しつぶされそうになっていますよ(右写真),というのを見て貰うだけでも,設置基準を満たさない研究環境はひどい,という世論がもりあがる……ってこともないか。
- ソロモン諸島では,昨日からオーストラリア海軍のHMAS Tobrukという船の上で,停戦会議が進行中である。今日からはウェスタンの州知事も加わるはずで重大な局面だと思うのだが,日本のマスコミは子どもを毒殺した母親と沖縄サミットと古田がオリンピックに出ない話ばかりで(もちろんこれは印象の話で,中東和平とか北朝鮮とロシアによるNMD批判とかも報道されているのだが),ソロモン諸島に関する報道はない。ちゃんとフォローしろよなあ。
- 人口学研究の編集委員会ではこれまでの経緯とかを聞いてきた。新刊短評というのを1つ担当する他,1本投稿することになった。投稿する方は査読があるから通るかどうかわからないが,探してみると眠っているネタというのはあるものだなあ(たぶん意味不明と思うが,独白なので気にしないで欲しい)。
- 帰りは終電。大宮から座れた。
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