枕草子 (My Favorite Things)
【第367回】 羅針盤が欲しい(2000年8月19日〜21日)
- 今月初旬に書き了えた小集団人口学の原稿には,河辺さんの年齢推計の論文を引用しなくてはいけなかったのを忘れていた。ニュースレターにはどうでもいいが,「エコソフィア」(昭和堂)みたいな雑誌に投稿するならば必須だろう。投稿規定をチェックしておくのも忘れないようにしなくては。
- 今日(これを打っているのは19日土曜)はジュニアパイロット制度で阿蘇に行っていた息子が朝一の飛行機で帰ってくるので,羽田空港まで迎えにいくのだ。往路は6:43発あさま502号。家を出る前に朝食をとりながらNHK総合を眺めていたら,土曜美の朝とかいう番組に出ていた東京芸大の助教授が「いつ死んで最後の作品になってしまっても悔いが残らないようにという心構えで仕事をしている」という主旨の発言をしていて,はっとした。研究論文も同じだよなあ。
- 余談だが,この方の作品は,絵でありながら絶妙の絵の具の厚みと影の付け方で立体感があるもので,どことなくエッシャーの騙し絵を思わせるが,すばらしいものだ。番組で制作過程をフォローしていた「羅針盤」という作品,欲しいのだが高いんだろうなあ。関係ないけど,本物の羅針盤も物欲をそそる。精巧に手作りされたものだから,器械というよりも芸術作品みたいな気がする。実用性のある芸術作品を丁寧に使う文化は美しい。裏返せば,使い捨て文化は醜いということだが。
- ANAのジュニアパイロットで飛行機から降りてくる子どもたちを出迎える保護者たちの居場所は10番出口の前となっているのだが,すぐ隣が喫煙コーナーだし,椅子のある場所は離れているし,甚だサービスがよろしくない。到着アナウンスがあってから乗客が降りてくるまで時間がかかるのはいつものことだが,ジュニアパイロットはfirst in and last outなのか,最後に降りてくるのだった。そうであれば待合い時間が長くなるわけだから,尚更居場所の待遇を改善すべきではないだろうか。もっとも,出迎えの人間は客ではないのかもしれないが。
- 無事に降りてきた息子を連れて京浜急行に乗り,品川経由で上野に出たら,11:58上野発あさま515号が出るまで,約20分待ちだった。大宮も高崎も軽井沢も停まらないためか,がら空きで,ゆっくり座って長野まで帰ってくることができた。家に着いてから待合いの疲れが出たのか,暑さゆえか,ばててしまって昼間はずっと眠っていた。
- 日曜日は牟礼まで桃をとりにいった。年間2万円の果樹コースも,この桃を貰ってしまうと,残すところプルーンとりんごだけになったが,実に充実していると思う。果樹園の場所が公共交通機関の行くところではないところが多く(桃とプルーンとりんごは丹霞郷という場所にあって徒歩10分でバス停があるが,さくらんぼとかブルーベリーの果樹園にはバスではとてもいけない),自家用車がない人など当初考えもしていなかったようだが,主催者側のSさんという方が通り道だからと毎回乗せてくださるので,当面不都合はない。Sさんと一緒に行くおかげでいつも一番乗りなので,助っ人組合の方にも顔を覚えていただけたし,いいことずくめである。
- ブルーベリーなどは自分たちで摘んだし,この日も林檎の摘果(実の数が多すぎると大きくならないので1つの枝に2つも3つも生っていたら一番大きいのだけ残して摘み取ってしまうのだ)は自分たちでやったのだが,桃摘みは1つか2つ体験するだけで,後は予めプロが摘んで取って置いてくれたものをいただく,ということだった。体験した限りでは別段難しくもなくポロッととれたのだが,非常に傷みやすいため,触ったらその桃を取らなくてはいけないなどの理由から,子どもたちにたくさん摘ませるわけには行かなかったのだろう。
- もぎたての桃は,太陽の光を凝縮して詰め込んだような清々しい甘さが口の中一杯に広がって,実に美味だった。
- 桃という重い荷物運びに耐えたため,夏休みの宿題を仕上げるのに苦しむ息子を横目で見ながら,この日の午後もずっと昼寝した。長野は夏休みが短く,今日21日から市内の大部分の小学校は授業が始まるので,たぶんどの家でも宿題対策に苦しむ子どもがいるのだろうか,いつもは頻繁に遊びに誘いにくる息子の同級生たちも全然来ないのだった。3週間余りしかないのだから,あんなにたくさん宿題を出すこともないと思うのだが。
- 21日月曜日,36歳になった。先週末から始めたライフスタイルを継続し,ぼくが味噌汁を作って一家四人で朝食をとってから出発したので,往路は7:50発あさま2号。
- 今日は一番乗りではなく,学生が大勢来ていた。夏休みも終わりということだろうか。メールを見たら何十通も溜まっていた。オーストラリア国立大学のDr. Robin Hideからパプアニューギニア研究者向けに送られたメールがあって,パプアニューギニア各地18600の地名からGPSで測定した緯度経度と地図上の位置を検索表示してくれるサイトが公開されたとのニュース。若干高度情報がおかしいところがあったので問い合わせたら,システムのバグで,改善されるはずだということだった。それにしてもなんと凄いデータベースであることか。
- 肥満遺伝子の書評に肥満ウイルスの発見についてどう思うかというコメントがついたので,一般論をコメントしてから元論文を読んでいる。pdfで全文公開されている(書評ページからURLは辿れる)ので,英語を読むのが苦でなければダウンロードして自分で読んでみることをお薦めする。読売新聞の紹介記事では疫学調査かと思ったが,動物実験だったのには驚き。鶏やマウスの脂肪蓄積メカニズムとヒトのそれは違うし,ヒトアデノウイルスを感染させての結果に何の意味があるのだろう。International Journal of Obesityがこれだけ大きな扱いをするからには何らかの意味があるのだろうが,途中まで読んだところではよくわからない。
- 帰りは終電。上野から座れた。
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