枕草子 (My Favorite Things)
【第375回】 堕落(2000年8月31日)
- 今日で8月も終わってしまう。朝は6:00前に起きて,油揚げとナスで味噌汁を作った。今日は好評。しかし,昨日に続いて子どもが寝坊したので,往路新幹線は8:05発あさま504号。数日前に「504号が常態になってはまずい」と書いたが,既に堕落しているようだ。しっかりしなくては。
- 宗田理「13歳の黙示録」(講談社)を読了。さすがにハードカヴァーだけあって,権威主義に凝り固まった愚かな大人を馬鹿にする(という宗田理お得意の手口)だけの本ではない。本書には3つのはっきりした主張がある。取り返しのつかない失敗もあるということと,それでもなお失敗はできるだけフォローの責任をまっとうすべきだということ,物事をよく考えて実行しようということである。同感である。もう一ついえば,不幸は拡大再生産されるので,世の中を良くしようと思ったら他人を不幸にするような行為をしてはいけないということだ。見方を変えれば,他人を不幸にして平気でいる子どもは,世の中をイメージできていないといえる。つまり,地域社会の崩壊は,ここでも不幸の遠因となっている。
- 問題は,学級崩壊を起こしたり個人的に煮詰まっていたりする小中学生が,本書の厚さの本を手に取るかということだ。本当はその層にこそ読んで欲しいのであろうに,この厚さに込められた濃厚な物語を読みとる能力があるかといえば疑問である。それにしても学級崩壊の描写にはリアリティがある。我が子のことを思うとぞーっとして,きちんと子どもに向き合わねばという気になるので,小中学生の子どもをもつ親にも読んで欲しい物語である。
- New York Academy of Sciencesから昨日届いたTHE SCIENCESの特集記事は,「5つの性」というものだった。生物学上の性別は一般に男女の2分法で,それに当てはまらないヒトはインターセックスと呼ばれて,外見上顕著な場合は幼時に外科手術を受けて男女どちらかに割り振られるのがこれまで普通だったが,著者Anne Fausto-Sterlingの推計によれば多く見積もれば4%,少なくとも1.7%のヒトが何らかの意味でインターセックスに分類されるし,成長してから外科手術で決められた性に違和感を感じて再判定手術を受けるケースが多い現状から考えて,幼時での手術はできるだけしない方がいいし,そのためには性別の2分法自体をやめればいいという(1993年に提唱したが,最近一般的に認知されてきたらしい)。つまり,males(男性)とfemales(女性)に加えて,herms(精巣と卵巣の両方をもっている),merms(精巣といくつかの女性外性器の特徴をもっている),ferms(卵巣といくつかの男性外性器の特徴をもっている)という3つの性別があることを認め,性別を5種類にすれば,問題は解決するというのだ。そもそも性別が複数の形質のグラデーションによって決まる以上,厳密な2分法がなりたたないのは当然だが,5種類にしたところで必ず境界例はいそうな気がするから,本質的な問題解決にはならないように思うし,著者もそれは認めているようなのだが,まあ多様性を認めるという意味では2分法よりいくらかましかもしれない。
- CompaqのAlphaLinuxサイトからJumpstart1.0をダウンロードすることにした。これがブートできないということはなかろう。しかし回線が細いのか時間がかかるのには閉口する。
- 昼飯をサンクスで買ってきて,食べながら牧野修「病の世紀」(徳間書店)を読了し,ついでに書評も書いた。
- Jumpstart1.0も一筋縄ではいかないのだった。Netscape Navigatorで.gz形式をダウンロードしたら勝手に展開されて,しかも正しいトラックイメージにならず焼けなかったので,再び何時間かかけて.zip形式をダウンロードして展開したら焼くのに成功した。ところがSRMコンソールで指示どおりにboot dka600 -fl 0とやるとabootまで行くのだがCDROMのマウントに失敗して止まってしまうのだ。またも挫折。SCSIカードはちゃんと認識されているようなので,もしかするとCD-ROMドライブがいかれてるとか? 自分のデスクトップマシンのUltraPlexと交換してみるというのは一案かもしれない。
- 帰りは21:30発あさま535号。4号車では上野から座れた。今野敏「陽炎」を読了。ベイエリア分署安積班シリーズ最新刊の連作短編集。たしかに関口苑生がオビで褒めるように,警察官が集団として活躍し,その一人一人の人生が光っているという,本という形では日本にはあまりなかったスタイルの警察小説だが,テレビドラマではお馴染みともいえるし,島田一男作品とか,島田荘司の吉敷シリーズの一部なんかは近いんじゃないかなあ。「ちょっと良い話」が多くて佳作と思うが,「金字塔」というほどの大傑作とは思わない。
- 帰宅後,妻が茹でてくれていたそばを食べ,洗い物をして米をとぎタイマーをかけてすぐ眠った。午前3時頃,日曜日に疲れが限界を超えたせいか,火曜から帯状疱疹を発していた息子が起きて痛がるので,薬をつけてやったら,再び眠れた様子。小学校1年くらいでは自制心が足りないので,ガーゼでカバーしてやってもすぐに剥いでしまうのが困りものだ。
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