枕草子 (My Favorite Things)
【第397回】 衝動買いでSP1の存在を知る(2000年10月3日)
- 今日の味噌汁はカボチャとワカメを具にした。カボチャは煮えるのに結構時間がかかるが,6:00に起きたので,新聞を読んで洗い物をして,ゆっくりコーヒーを淹れて楽しむくらいの余裕があった。7:30に家を出て長野電鉄に乗り(昨夜,雨がひどくて自転車を長野駅に置いてきてしまったため),あさま504号に乗り継いだ。窓の外はずっと小雨である。今日は関東甲信越は全部雨なのだろうか。
- 驚いたこととか言って去年触れたNHKの膳場貴子さんであるが,いまや次期NHKの顔といわれるほどの人気らしい,ということを週刊現代で知った。いや,実はその記事が載っていることを新聞広告で見て,長野駅のKIOSKで週刊現代を買ったのだが。その記事自体は予想通りというか,学生時代の彼女から想像するにさもありなんという感じだったが,意外に他にも面白い記事が多くて収穫だった。
- 「森首相”大暴走”で80万人ITリストラが始まる」という特集記事の論点は正しいし,村井純氏のコメントは面白いが,雇用を維持しながら効率化を図る手段はある。ここで何度か書いているように,時短と減給をすればよいのだ。そこに触れないのは思考が硬直していると思う。週刊誌の限界か。明日から開かれる日本癌学会総会(総会のサイトはこちら)の先行報告として,面白そうな論題についてレポートしている記事も面白いが,これを読んで理解できる文系出身のサラリーマンが果たして何人いるのか疑問である。きっと,理解させるための記事ではなく,キーワードやキーパーソンを認識させることが目的なのだろう。それではいかんと思うのだが。読み物としては,榊東行「国家の衝突」というのが意外な収穫。週刊現代の読者と思われるサラリーマン諸氏が,これに対してどういう感想をもったかを是非知りたいものだ。
- 荒川を越えた辺りでほぼ読み終わったが,現代ライブラリーという書評ページのうち,「文庫専科」という欄で紹介されていた徳間文庫の新刊「ゲノムの反乱」というのが面白そうだったので,フローラ上野ブックガーデンの新刊文庫平積みコーナーを見ることにした。案の定,平積みだったので買ってしまったのは予定の行動だが,高嶋哲夫「フレンズ」(ハルキ・ノベルス)といういかにも痛そうな小説と,科学MLや理科教育MLで話題だった佐藤俊樹「不平等社会日本」(中公新書)も買ってしまったのは予定外というか,要するに衝動買いである。
- ついでに衝動買いした週刊アスキーで,SP1の存在を知った。普段は読み飛ばす山田祥平氏のMS社べったりコーナーなのだが,こういう情報源としては役に立つ。SP1とは,つまりWindows 2000 Service Pack 1のことだ。セキュリティ上の問題が多く報告されている(ある意味では,それだけユーザが多いということでもあるが)MS社のOSだけに,セキュリティを改善するパッチも多く入っているが,Media Playerのバージョンアップなど機能向上もいくつか含まれていて,Windows 2000 Professionalユーザならインストールせざるを得ないものである。クライアント版であるProfessional用の高速インストールでも13.8 MB,ネットワークインストールでは87 MBものダウンロードをしなくてはならないので,電話回線では実用的でない。たぶん,MS社からほぼ実費のみで提供されるCD-ROMを買うか,今月発売のコンピュータ雑誌の付録CD-ROMを使うのが,普通は現実的だろう。しかし,研究室の端末は,昨日100 Mbps化された常時接続環境であるし,セキュリティに不備があってはまずいことは明らかなので,SP1導入済みのインストールCD-Rを作ることが可能なネットワークインストール版をダウンロードしている。平均10 kbps程度しか出ないのはMS社のサイトが混んでいるせいなのかしらんが,かなり時間がかかる。まあバックグラウンドでダウンロードさせておけば問題はないだろう……と思ったが,何度やっても途中の15 MBとか25 MBの辺りで止まってしまう。数十分の待ち時間がパァであるのは,実に腹立たしい。失敗したところから続けるというオプションが欲しいところだが,ないらしい現状では,早朝とかの回線が空いている時でないと駄目そうだ。
- いや,しかし。これでは皆困っている筈だから,httpでも中断したところからダウンロードを再開してくれるソフトはあるのではないだろうか? そう思ってベクターデザインのサイトを検索したら,ダウンローダー雨というのが見つかった。インストールしてみたが,レジストリやシステムディレクトリに余計なことをしないし,IEと独立しているというのが気に入った。ダウンロードも快調に進んでいるので万歳である(もっとも,肝心のレジュームについては,止まらないので未確認である)。
- ところで,今朝フローラ上野ブックガーデンを出た後,向かいのCDショップで2枚のCDを買い,今日はそれらを聞きながら仕事をしている。ジャズバイオリニスト寺井尚子の新作「Princess T」と,昔懐かしいABBA(本当は1つめのBは裏返し)の「GOLD GREATEST HITS」である。寺井尚子の新作は衝動買いではないが,後者はまさしく衝動買いである。こういう音楽を聴いていると幸せに仕事ができる。MAMMA MIA,SUPER TROUPER,CHIQUITITA,THANK YOU FOR THE MUSICなどなど,耳だけ20年前に還ったような気分。いいねえ。
- EWS4800マシンだが,秋田大のサーバからsendmail-8.9.3とそのパッチをダウンロードして,tar xvzf sendmail-8.9.3.tar.gz,cd sendmail-8.9.3,patch -p1 < ../sendmail-8.9.3-nec.diff,cd src,sh Buildとするだけでコンパイルできてしまったので,CF-3.7Wpl2を使ってsendmail.cfを作り(CFは偉くて,Master/OSTYPEにews-ux4なんてのがちゃんとあるのだ),インストールしてみたところ,無事に動いているようである。秋田大さまさまである。なぜsendmailを8.8.8から8.9.3にしようと思ったかといえば,リレーの制限をより強化したかったというセキュリティ上の要請ももちろんあるが,複数のメールアドレスの着信チェックをするためにWindows2000に導入したB's Biffというソフトのポーリングに反応させるためである。これで5つのアドレスをいちいちチェックしなくても良くなったのは大きい。
- こうして環境が整うのは嬉しいから癖になるんだが,考えてみると本質的には何も進展したわけではない。その辺りに思いを巡らすと,やや空しかったりもする。いつものことだが。
- 今日は昼が弁当だったので,その時間を利用して,家森幸男『「長寿食」世界探検記』を読了した。何度も同じ記述が出てくるので,著者が言いたいことは実に明確に伝わってくる。健康長寿を目指すならば,食物繊維と魚と大豆と抗酸化物質(ビタミンCやビタミンEなど)を十分にとることが大事で,肉はゆでこぼして脂肪をなくし,塩ではなくて香辛料で味付けをして食べるならば,高齢者の健康に良く,沖縄の伝統的食事はまさにこの条件を満たしている,ということである。2番目くらいに言いたいことは,たぶん,世界の健康長寿社会では,高齢者でも社会の中で役割をもって張りのある生活をしているということだろう。本書中でも小金井研究がしばしば引用されているが,この辺りの主張は,以前触れた柴田博「肉食のすすめ」とかなり共通している。ただ,この本のネタは学問としても小金井研究以上にぼくの琴線に触れるので,原著論文を読まないと勿体無いだろう。
- 帰りは今日も21:30上野発あさま535号。1号車と2号車は待ち行列が長かったので,4号車に席を占め,高嶋哲夫「フレンズ」(ハルキ・ノベルス)を読了。予想通り痛い青春小説だった。紆余曲折を経ながらも若者が目標に向かって努力し,ある意味で目標を達成するという点では,「夏のロケット」と通じるものがあるのに,こんなにも痛いのは,目標が夢と呼べない破滅的な目標だからだと思う。高嶋哲夫の透徹した情景描写力とも相俟って,なんともいえない美しさを漂わせているこの作品の痛さは,ぼくにとっては重松清の痛さよりも理解できる。ピカレスク・ロマンという意味では,小峰元「ディオゲネスは午前3時に笑う」とか高村薫「李歐」の雰囲気に近いものがあるといったら,わかって貰えるだろうか? ピカレスクロマンに感じる痛さというものをよくよく考えてみると,実は悪事に共感する自分自身の心の闇に気づかされてしまうからではないかと思うが,その辺り高嶋哲夫は実に意図的で,語り手のアキにも物語中盤で,「私はごくりと唾を飲んだ。みな殺しという言葉がひどく心地よく聞こえた。頬の痛みが身体の芯にまでゆっくりと広がっていく。私の中の異常がすでに日常になっているのだろうか」なんて言わせている。圧倒的なうまさである。なお,クラッキング絡みで一ヶ所だけ(その手ではパスワードは抜けないし,そもそもトロイの木馬を仕込んだクライアントに来るメールをsniffするだけならパスワードは不要だろう)妙なところがあるが,技術面も概ね不自然ではなかった。
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