枕草子 (My Favorite Things)
【第392回】 広報(2000年9月26日)
- 5:40に起きると,洗い物をしてゆっくり新聞を読んでも余裕である。子どもを起こして一緒に食事をとってから自転車に乗り,肌寒い空気の中を長野駅へ。往路はあさま2号+やまびこ114号。とはいっても,あさまでは上田まで家森さんの本を読んだ後は熟睡していたので,やまびこに乗ってからvaioを開いている。おっと,もう上野だ。
- 今日は11:00から会議があった。Bulletin,すなわち英文による学科案内(沿革とか構成員とか教育内容とか研究内容・業績,国際会議などを載せるもの)の1999-2000年版を作るための準備会議である。主な読者は海外からの大学院受験生だから,本当は専攻単位で作るべきものである。もしかしたらそうなるかもしれないという話だが,とりあえずスケジュールが大体決まった。要するに学科の広報活動ではあるのだが,こういうものは紙媒体よりもWEBに載せる方が海外からのアクセスはしやすいし,金もかからないと思うから,今後はそういう形に移行していくだろう。
- 広報といえば,東京大学研究者紹介というページがあって,全学の研究者の情報が載っていることになっている(中には協力していない人もいるが)。研究科がどこかわかりにくい研究もあるので,全学のページがあることに意味はあると思う。細かくフレームを使っていてエラーが出やすいし,登録のCGIはどんなアルゴリズムと処理系を使っているのかしらないが遅くて鬱陶しいのだが,まあともかくWEB上で更新できるようになっている。今年も更新するようにという通知が来ていたのだが,ふと気がついてみると締め切りの9月22日を過ぎていたので,慌てて更新した(すぐには更新結果が反映されないというのは,内容をチェックしてるんだろうか? それともデータベース登録をcronでやってるんだろうか?)。しかし,研究者紹介だったら,あんなに階層を深くしないで情報も減らして(業績なんか個人サイトに載せる方がいいと思う),各個人1ページにキーワードをコメントとしてずらずらと書いて個人サイトへのリンクを書いておき,NAMAZUで全文検索するようにしたら速くて使いやすくなるだろう。フィールドサーチだって,フィールド名をHIDDENでつけるとか,工夫次第でNAMAZUで十分出来るはずだ。現状では,ともかくフレームが多すぎるし,反応が鈍すぎて使う気がしない。せめてフレームは止めてくれないだろうか。まさかIISなんか使ってないだろうなと思ってWWWCで調べたら,Netscape-Enterprise/3.6だったので多少安心したが,でも普通Apacheだよなあ。
- まあ,いろんなことをいう人がいるだろうから,担当者の苦労もわからんではないが,効果があがってこそ広報の意味があると思うので,研究者に協力させるなら,最大の効果が出るようにして欲しいと思うのである。
- 以上,神をも恐れぬ行為というやつかも。
- 未来開拓大塚プロジェクトの成果としての小冊子が印刷直前である。これも一種の広報といえよう。今日脚注についてのコメントを求められた表紙の写真もきれいだと思うけれど,それ以上に中身が充実していると思う。WEBサイトにある原稿に加えて,未発表の原稿がいくつかある。どのような形で配布されるのか知らないが,効果的な広報ということを考えた方がいいと思う。よろしく配慮願いたい……って言われても困るか?>担当者Yくん。
- 夕方,助手会研究交流会があった。肥満疫学とT病院での褥瘡調査。肥満疫学はオセアニアの倹約遺伝子の話の絡みで調べたことを肥満のページでまとめていたりするので,かなり関心あるテーマだったし,新しい国際基準とかの話を含めて,大変勉強になった(ただ,質疑応答の部分で聞ききれなかった点が1つ。運動療法でレプチン抵抗性の人でもレプチンが低下するから環境要因が大きいファクターだという回答は,たしかにどんなやり方でも脂肪細胞が減ればレプチンレベルは下がるから環境要因で肥満はコントロールできるのは事実なのだけれども,ぼくが聞きたかったのはそういうことではないのだ。レプチン抵抗性でセットポイントが高い人は,同じレプチンレベルでは食欲が抑えられにくいはずだから,努力して食餌療法や運動療法を続けない限り,リバウンドしやすいのではないかと思われるので,そういう人をセットポイントが低いのに何か別の要因で肥満になっている人と同じ扱いをしては,長期的にみたときにおかしくなってくるのではないかということだ。どうなんでしょう?>L先生)。ともあれ,後で肥満のページを更新しようという意欲が湧いたので,更新に期待してくださっている何人かの方には,やっとお応えできるかもしれない。さてもう一つの褥瘡にはまったく素人なのだが,それだけに目新しくて面白い話だった。目に付きやすい動けない患者についてはケアが手厚いから発症しにくく,それよりも低栄養で皮膚の組織が弱っている患者の高いリスクが見過ごされて発症している(以上,ぼくによる凄く強引なまとめ)という話は,一般にはあまり知られていないのではなかろうか。なかなか刺激になる交流会で,昨年から始まったのだが,これはいい企画だと思う。
- 交流会が終わったら20:30だったので,帰りは終電の1本前かなあ。
- と思っていたが,結局終電。例によって例のごとく。結構混んでいるように思ったが,2号車に空席があって,上野から座れた。肥満疫学の話で気になったので,途中まで読んで放り出していた,柴田博「肉食のすすめ」(経済界・リュウブックス)を読了。いろいろな意味で衝撃的な本である。東京都老人研の小金井研究など丁寧なコホート研究では,老人ばかりでなく中高年全部が従来の考え方よりも太っていて血清コレステロールが高めの方が死亡率は低いという結果が出たという話だ。従来の常識というか権威に楯突く内容だから,そう簡単に受け入れられるとは思わないが,この本に出ているデータを信用すれば,その主張には無理がない。問題はデータがどういう状況でとられたかとかいった細かい部分が十分には書かれていないことで,その意味で原著論文をリファレンスとして是非リストして欲しかったと思う。SHIBATA HでPubMedでも検索するか? (ちなみに以前,引いてみなければと書いた,YAMORI Yはたくさんヒットしたのだが,オンラインで読める雑誌がなかったので,まだ原著は読んでいない)それにしても柴田さんという方は,医師免許をもっている方には珍しいタイプだと思う。巻末の締め言葉として,「幸せな人生が目的であって,健康や長寿が目的ではない」と書かれているが,これにはまったく同感である。もっとも,そうすると肥満改善指導なんかできなくなってしまうかもしれないが。中高年の生き方ということについても,「生きがい」というsuccessful agingを包括する概念がもともと日本にはあったことに触れ,高齢化社会は暗くないと論じ,社会参画,とりわけ相互扶助が大事だと指摘しているのは重要な視点と思う。定年退職後の世代に是非読んで欲しい本である。親に送ってみようかなぁ。
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