枕草子 (My Favorite Things)
【第475回】 コーヒー・ルンバの謎(2001年1月23日)
- 昨日と同じく,往路あさま506号。朝食時に鮭の小骨が喉に刺さってしまい,それがまだとれなくて気持ち悪い。また刺さった位置が悪くて,飲み込もうとしてだいぶご飯の塊を飲み込んだがダメで,吐き出そうとしてうがいをしたり咳き込んだりしてみてもダメで,してみるとDarwinian Medicine流に考えると,ぼくの身体はdefenseの出来が悪いらしい。
- 今日は,この数日気になっていることを書いておく。そう,「コーヒー・ルンバ」である。「昔アラブの偉いお坊さんが」と始まるアレである。井上陽水がリメイクしたのを聞いたのだが,さても不思議な曲だと思った。その不思議さが頭にひっかかって離れないのである。
- 全体のムードはとてもよい。はまるといっていい。しかし,歌詞をよくよく聞くと謎だらけなのだ。
- 第一の謎として,「アラブにお坊さんがいるのか?」ということが挙げられる。お坊さんといえば,仏教の僧侶を指すコトバだと思うのだが,イスラムの神官(というのか?)もそう呼んで良いのだろうか?
- 次の謎は,「琥珀色した飲み物教えてあげました」である。琥珀色というのは,しばしばコーヒーの色を指すのに使われるが(もしかするとこの歌が原因かもしれない),琥珀に閉じこめられた蚊の化石を思い出せばわかるように,琥珀は黄色に近く,コーヒーよりはずっと明るい色だと思う。パプアニューギニアでインスタントコーヒーを作るときによくされるように,スーパーアメリカンに薄くすれば,琥珀色に見えないこともないかもしれないが,それでは「しびれるような香りいっぱいの」飲みものではなくなってしまいそうだし,「南の国の情熱のアロマ」が出ないだろう。だいたい,モカマタリをそんなに薄く淹れるなんて犯罪的である。
- もっといえば,アラブだったら,本来の作り方は煮出しコーヒーのような気がするから,薄くなんて作れないし,香りも飛んでしまって「痺れるような」のは無理だと思うのだ。
- もし,琥珀色が嘘だとしたらどうか? 例えば,光の加減とかで。それなら「しびれるような香り」や「情熱のアロマ」には納得できる。
- 問題は,アラブ諸国にそういう--ドリップとかサイフォンとか,せめてスティープくらいの--高度な淹れ方があったかどうかだ。きっと,この「お坊さん」は,コーヒーの淹れ方を追求した求道者で,その意味でお坊さんと呼ばれていたのだろう。もしかすると,彼こそが,アラブにドリップをもたらした人なのかもしれない。
- それなら,そりゃあ確かに「偉い」はずだけど,本当にそうなのだろうか?
- 文部科学省のサイトにあった,学術審議会が2000年12月に出した答申「大学等における感染症・免疫研究の推進について--意見の取りまとめ--(学術審議会特定研究領域推進分科会バイオサイエンス部会)を見たら,感染症の総合的な研究の重要性がやっと認識されてきたようで嬉しい。しかし,研究者が少ないのは確かだが,それならポストを作れよと思うし,重要性の認識が分子機構に偏っていて,感染症がヒトとパラサイトの接触なしには起こらないからヒトの行動との関係が本質的に重要だという点への認識が甘いと思う。それでも,「感染症の克服のためには,流行地の集団を対象とした研究が不可欠である。感染症制圧モデルや流行予測モデルの開発を目的に,リモートセンシング,地理情報システム,数理生態学などの分野の参入を得て,フィールドにおけるデータ蓄積とモデルの開発(数学モデル,コンピュータシミュレーション)を互いにフィードバックさせ,感染症を生態学的側面から理解することが重要である」なんて書いてあるのは心強いし,こういう答申がでたってことは,今後ポストが作られるってことなのかもしれないから,期待してしまうなあ。かつてマラリア原虫の分析をご指導くださった群馬大学の鈴木守先生が分科会委員に入っているので,群馬大に感染・免疫研究センターみたいなものができたらいいのになあ,そこにとってくれないかなあ,などと,妄想は膨らむのである。
- 昼間は論文を読んだり書いたりディスカッションをしたり生協で消耗品の注文をしたり雑用をしたり,といつも通りの過ごし方をし,21:06に研究室を出て本郷三丁目から大江戸線で上野御徒町に出て,銀座線上野広小路から上野まで乗ったら乗り継ぎ割引で260円しかSFメトロカードは減らなかったが,ともかく21:30上野発あさま563号で帰宅中。それにしてもまだ鮭の小骨が喉からとれてくれないので,気持ち悪くて集中力が出ないのは何とかならないものか?
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