枕草子 (My Favorite Things)

【第91回】 やっと掲載(1998年11月13日;16日ちょっと訂正)

この2,3日,急に安田講堂前の銀杏が色づきはじめている。図書館前の通りと交差するところから3本ほど安田講堂寄り左側に立っている木の葉は,上半分だけ真っ黄色になっていて下半分は緑色なのでなんだかおかしい。こうやって季節が移ろっていくのが,ぼくは好きなんだな。ちなみに紅葉は,「寒くなって葉柄の基部に離層ができ光合成産物である糖類の移動が妨げられた結果アントシアンとフロバフェンが葉に溜まって色づくわけだ」が,銀杏のような黄葉は,「葉緑体のクロロフィルが落葉前に分解し葉柄を通って葉からなくなることによって葉に残ったカロチノイドの黄色が目立つようになる現象」で,発色のメカニズムが違う。件の銀杏の木の下の方の葉にはまだクロロフィルが残ってるってわけだ。まあ,だからどうだってことはないのだが。

ところで,研究者なら誰しも経験があると思うが,論文が受理されてから掲載号が手元に来るまでというのは待ち遠しいものである。去年の12月にacceptされ,今年3月だか4月だかに著者校してから,いまかいまかと涎を垂らしそうになりながら待っていたAmerican Journal of Human Biologyの掲載号がやっと到着した(別刷りはまだなのだが)。これでやっと研究業績の当該論文にページ数を入れることができた。

掲載順を待つこと1年弱というのは長いのだが,裏を返せば投稿が多い人気雑誌ということだから仕方なかろう。商業誌だったら,こういう状態なら超一流の論文しか載せないようにして雑誌の水準をあげて同時に待ち行列を短くするのだろうが,この雑誌はアメリカ人間生物学会のOfficial Journalだからそういうわけにもいかないのだろう。人間生物学の世界では著名な雑誌の一つだし,編集長のDr. Robert Malinaは日本人の下手な英語に対しては大目にみて内容だけを評価してくれるという人なので,きっと日本からの投稿は多いだろうと思う。ともかく嬉しいことである。

あ,そうそう全然関係ないけど,書評掲示板に3冊追加したので,良かったら読んでみてください。


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