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個別メモ

Latest update on 2012年3月5日 (月) at 10:54:46.

【第1831回】 わからない発表(2011年3月30日)

本当にPuは原子炉から?
朝,テレビで枝野官房長官が,プルトニウムが漏れたことは,ほぼ間違いないとコメントしていたので,新たなデータが出たのかと思われたが,データの提示はなかったので判断不能。一昨日のメモに昨日追記したように,5点中2点だけの検出で,うち1点はほぼバックグラウンドレベル(過去の核実験や原爆からのフォールアウトで残って放射線を発し続けているPu238による)で,1点はバックグラウンドレベルの3倍ちょっとの値というのでは,「ほぼ間違いない」とまでは言えないと思う。そもそも,Puの測定自体が,検出限界に近いくらいの低濃度域での測定だろうし,検出限界やCVもわからないし(追記:東京電力が経産省サイトで発表した資料を見れば,1サンプル当たりのCVは計算すればわかるけれども),バックグラウンドレベルの平均値ではなくて分布も提示されないと,1点で平均値の3倍ちょっとの値が出たこと(比が高いことも含めて)の意味がわからない。少なくとも統計学的には,あの5点だけのデータでは判断不能なので,きっと新しいデータが出たということ(か,邪推すれば,未発表のもっと決定的なデータがあるのか)なのだろうが,それを含めた発表にしてほしかった。
花粉がひどい
今日は花粉が凄い。加湿フィルタ入りの立体マスクと花粉防御メガネをかけているのだが,それでも鼻水とくしゃみが出続ける。これで目が痛痒くなってきたら耐えがたいが,とりあえず,まだ花粉防御メガネが奏功しているらしく,目は大丈夫だ。
『Rの法則』
朝刊を眺めたとき,NHK教育テレビで『Rの法則』という番組があることに気付いた。まさかRによるデータ解析方法を中高生向けに教えるのか? と一瞬夢想したが,もちろんそんなことはなくて,RはResearchとRankingの頭文字なのだそうだ。もし,母集団を中高生とする意識調査をするのが目的なら,サンプリング代表性は確保してほしいところだが,もし調査対象が「ネットクラブプレミアム会員に登録したR'sメンバー」なのだとすると,それは無理だろう。しかし,調査目的が一般化可能な因果推論のためなら必ずしもサンプルの統計的代表性は必要なくて,対象を限定したり確率的に割り当てたりしてもいいので(昨日実習で輪読した『ロスマンの疫学』の第3章に書かれている通り),番組webサイトに書かれているように「Rで新たな法則を見つけよう」とする目的のためには,その法則がbiologicalな普遍性を仮定できるものである限り,サンプリング代表性は必要ないことになる。もっとも,これまで取り上げられたテーマからするとbiologicalに普遍性をもつ法則ではなく,社会文化経済的因子が効きそうなテーマについて,法則を見つけよう(もちろんPopper流に考えれば,反証されるまでとりあえず採用しておく仮説を見つけようということだが)としているので,サンプリング代表性の担保は必要だろう。……などと熱く語っても仕方ないのだが,でもせっかく「R」という名称を冠した番組なので,アンケート結果のグラフ化などにはRを使ってほしいところ。
ルームドナー
矢原さんの日記で取り上げられていた,ルームドナーというサイトに,既に1000件以上のドナー(震災被害にあった方に住居/部屋を提供してもいいという方)の登録があって,世の中には善意の人がたくさいんいて凄いと思うし,応援したいけれども,一方では悪用されないか少々心配にもなる。まあ元々ITベンチャーを立ち上げた人がやっているそうだから,セキュリティなどは大丈夫なんだろうけれども,世の中には火事場泥棒みたいな悪人もいるからなあ。
食品安全委員会の仕事
食品安全委員会は仕事のやり方(リンク先は度々更新されているpdfファイル)を間違っていると思う。そもそも,このページをpdfにし,しかも全体を度々更新している意味がわからない。インデックスページから毎日の情報追加・更新ページへリンクを付けたhtml形式にする方が読みやすいしネットワーク負荷も小さいだろう。内容についても,基準値を出すのはリスク管理だから農水省と厚労省の仕事で,食品安全委員会の仕事はリスク評価とリスクコミュニケーションなのだから,それがはっきりと分離された形で表示されるべきだと思う(リンクを辿って良く読めばわからないことはないけれども)。昨日発表された緊急とりまとめは(専門参考人には知人が何人も入っているので他人事ではないが),厚労省から暫定指標値のリスク評価を諮問されたことに答えたものだが,要するに,情報が足りないので暫定指標値を否定する根拠はないと言っているに過ぎず,決して暫定指標値の正当性を保証したわけではないことに注意すべきだろう(マスメディアの中には誤解した報道も散見されたが)。ここで難しいのは,暫定指標値の正当性が問題になるのは,過大である,つまり緩すぎる場合(安全上の問題)だけでなく,過小である,つまり厳しすぎる場合(農家などの生活上の問題)も不適切になるからだ。福島県でキャベツの有機農業に取り組んできた方が出荷停止措置の次の日に自殺してしまった,という痛ましい新聞報道があったが,もしかしたら,きちんとしたリスクコミュニケーションができていれば防げたかもしれない。今日,やっとリスクコミュニケーション専門調査会と緊急時対応専門調査会の合同会合が行われるそうだが,国民がリスクを誤解無く正当にわかるような情報提供のあり方や風評被害を防ぐためにどうしたらいいかについて提言するべき,リスクコミュニケーション専門調査会は,もっと早く動いて欲しかったと思う。
選択実習3日目
『ロスマンの疫学』第3章の問題の残りを答え合わせ&解説し,第4章に突入した。研究デザインの説明だが,密度症例対照研究の意義をはっきりと把握してもらいたいと思って説明しすぎたかも。2時間では4章の終わりにさえ到達しなかったので,このペースでは今週中に読み了えるのは不可能かもしれない。明日は15:30から19:00頃までにして,なるべく効率よく進めたい。

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