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論文概要02: Nakazawa and Ohtsuka (1997) MPS, 6: 173-186.

Last updated on October 31, 2002 (THU) 00:31 .

Nakazawa, M. and R. Ohtsuka (1997) Analysis of completed parity using microsimulation modeling. Mathematical Population Studies, 6: 173-186.


小集団での人口再生産には,個人間の関係が本質的である。ヒトが生まれてから死ぬまでに経験する人口動態イベントは,基本的には年齢依存する確率として決定することができるが,小集団の場合は,結婚する確率が如何に高くなっても,婚姻規制を満たす適当な相手がいないために結婚できないという事態が容易に起こり得る。

そのために,初期人口を決め,各個人に人口動態イベントが起こるかどうかを(0,1)の一様乱数が各々のイベントの生起確率より低いかどうかで決定し,一定の年数の間シミュレートしてみることによって,実際にさまざまなイベントが起こっていった場合に,その集団の人口がどのように変化してゆくかを観察する,マイクロシミュレーション分析が有効になる。

本研究では,Hill and Trussell (1977)の年齢別死亡確率モデル,対数正規分布による年齢別結婚確率モデル,Coale and Trussell (1974)の年齢別有配偶出生確率モデルを組み合わせて人口再生産のマイクロシミュレーションモデルを構築した。パラメータについては,パプアニューギニアの南側,フライ河の河口部に居住する人口約2,000人のギデラと呼ばれる一言語族のデータを用いた。

出生と死亡について多産多死,少産少死とその中間の3パタン,婚姻規制について一夫一妻,一夫多妻の2パタンの組み合わせで,初期人口1000人で,300年間のシミュレーションを,乱数の初期値のみ変えて各々100回ずつ行った結果,一夫多妻の方が夫婦の年齢差が大きくなり,同時に適当な相手が見つからないケースが減った。また,多産多死よりも少産少死の方がギデラの完結パリティや娘母親比からみた人口再生産パタンによく符合していた。


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