土曜日は妻が東京に出かけたので,子どもたちを連れて,さてどこへいこうと考えた。壊れたCDプレイヤーの代わりにDVDプレイヤーを買うつもりだと書いていた計画を先日成就したので,DVDかCDのソフトが欲しいと思ってつらつら考えていたら,長野に転居してから図書館に行っていないことに気づいた。つまり,最近,たいていの図書館では音楽CDを貸し出している筈なので,子ども用にちょっとしか聞かないCDを必要とするなら,買うより借りた方が合理的ではないかということである。地図を出して調べてみると,県庁のそばに市立図書館があって,そのすぐそばには「ひまわり公園」という大きな公園がある。うん,これしかない。
以上の考察の元に,子どもたちを保育園に迎えに行ったその足で,一路ひまわり公園を目指したのである。だいたい,保育園からだと徒歩20分くらいだったと思うが,着いてみると,ひまわり公園はいわゆる交通公園だったのだ。もちろん,滑り台やブランコや運梯もあるにはあるのだが,交差点毎におもちゃの信号機が設置された,両側1車線の立派な舗装道路があり,最初に一度だけ名前を書き込めば自由に借り出せる三輪車や自転車で漕ぎ回ることができるという施設が目玉なのである。東京のこの手の施設(例えば荒川自然公園)だと,とくに休日には大混雑をきわめて30分待ちなどという状態が良くあるが,ひまわり公園は利用者が少なく,かつニシキギと銀杏の紅と黄色のコントラストが青空に映え,とっても気持ちよかった。子どもたちも同感らしく,補助輪付きの自転車を乗り回し,2時間ほど飽きることがなかった。
市立図書館は,子どもの本が結構たくさんあって,座って読んであげるためのスペースも確保されており,時間をつぶすには格好の場所であった。子どもコーナーと一般コーナーは一応分離されており,一般コーナーで勉強している高校生などの邪魔になるんじゃないかなどと心配しなくても大丈夫である。そういうわけで,おはなしコーナーで何冊か読んであげていたら子どもがすっかり本を借りて帰る気になってしまい,利用券を作って上限の5冊まで重い本を借りてしまったので,CDを借りるという案は自動的に延期された。長野市民なら誰でも住所を証明する書類があれば利用券は作ることができるので,例えば保険証をもっていけば,子どもの利用券も作ることができる。借りる上限は1人あたり5冊なので,子どもの利用券を作っておけば,大人1人+子ども2人なら15冊まで借りることができる。貸出期間は2週間なので,そんなに借りても読み切れないだろうけれど。
ということで,土曜日は大層充実した休日だったのだが,今日は日本人類学会の「肉食をめぐって」というシンポジウムでコメンテーターをするために,都立大まで行かねばならないのである。講義準備ばかりでなく,学会準備もぼくはたいていの場合泥縄なので,今回もまだコメント内容を詰めて考えていないのである。この新幹線に加え,大宮乗換えで埼京線で新宿まで,さらに新宿から南大沢まで,約3時間半はかかるので準備時間はたっぷりある。このシンポジウムは進化の分科会主催だが,チンパンジーのサル狩りの話から,ペプシノーゲンの種間変異を使った類人猿の食性の評価,遺跡資料から推定される肉食と狩猟の関係,人骨試料に含まれるコラーゲンなどの,長期保存される生体試料に含まれる窒素と炭素の安定同位体比の分析から,古食習慣を推定する話など,多岐にわたっており,コメントするのも大変なのだ。
一般に,シンポジウムのコメンテーターをするには,2つの戦略があると思う。1つは,各演者の発表内容をまとめつつ適切なつっこみを入れてゆき,最終的にそれらを有機的につなげ,シンポジウムのテーマを浮かび上がらせるような方法,もう1つは,シンポジウムのテーマには含まれるけれど,どの演者も直接は触れなかったようなテーマについて,自説を展開することである。後者の方法は,シンポジストが1人増えるということに近い実態となるわけだが,全体をまとめる力のないコメンテイターは,往々にしてこの戦略をとる。ぼくもこのテーマに関して全体をまとめる力はないので,「ヒトはなぜ肉食をするのか」に書いたような話をしてお茶を濁そうかと思っているが,それすらまだ準備が完全でないのが現状である。さてあと3時間くらいの電車の中で,構想がまとまるだろうか?
更新情報としては,Tru64 unix for Alphaが$99で売り出されたというニューズと,書評掲示板に「リスクテイカー」の書評を追加したことくらいか。CGI開発室は未更新である。