枕草子 (My Favorite Things)
【第216回】 バージョンアップの功罪(2000年1月5日)
- 初日から終電での帰宅となった。大きな荷物を抱えて降り立つ人がいつになく多く,夜というのに上野駅はごった返していたが,終電で長野方面へ行く人は少なくて,あさま537号には空席が目立つ。
- なぜ終電となったかといえば,年末に急ぎでやった登録フォーム作成がうまく行っていなくて,オセアニア学会年次大会参加メールがエラーとなってしまうのを直そうとしていたのだ。第一の関門はcgi自体が実行できないという間抜けなもので,Options ExecCGIと1行書いた.htaccessというファイルをcgiを置いたディレクトリに作ることで簡単に直ったが,真の苦難はそこから始まった。cgi自体はうまく実行できてsendmailが呼ばれるところまでは良い。ところが,BODYのデータフォーマットがおかしいとかいうメッセージが出て,大会担当者にメールが送れないのである。送信部分は1年前にうまく行っていたものをsendmailのパスと宛先だけ変えてみたのだが,これが良くなかったらしい。つまり,1年前はFreeBSD上でsendmail-8.8.8を使っていたのが,現在はLinux上でsendmail-8.9.3にバージョンアップしているため,セキュリティは格段に向上しているものの,MIMEの扱いが変わったらしいのだ。もちろん,送れればいいということで場当たり的にコードを書いたのがそもそもの失敗なのはわかっているが,RAIDのためにシステムをバージョンアップしなければ起こらなかった筈の問題なので,頭が痛いのである。かくなる上は,sendmailのsmtpプロトコルの扱いをきちんと理解してコードを書き直すべきであろう。そう考えてmanページを見たりWEBを漁っていたのが,終電となった原因なのである。結局終わらなかったので,直るまでは,MAILER-DAEMONがエラーとしてrootに送ってくるメールから手作業で登録情報を抜き出して,大会担当者に転送するしかあるまい。あーあ。
- 気の弛みなのか正月ぼけなのか今日も目が覚めたら7:00だったので,あさま2号の次,8:05発に乗っている。戸外は相当に寒くて耳がちぎれそうなほどなのだが,車内は暖かく,キーボード操作も快適である。もっとも,暮れに持ち帰ったSikkim Temiを保温水筒から飲むには,もう少し環境温が低い方が美味しく感じると思うのだけれど。
- Synchronicity(同時性,共時性)ってのは,意味を見いだしたがる脳の癖で,事物から関連を無意識に抽出したときに感じるものが大部分と思うが,最近あったのは「カジマヤー」である。風車祭と書き,沖縄で97歳のお祝いに風車をたくさん立てて町を練り歩くものなのだが,人体IIIで見て,ああ,この女性はいい歳の取り方をしてきたんだなあと思わせる風貌に接して感激した直後,灰谷健次郎「天の瞳 成長編I」を読んでいたら,沖縄に渡った元小学校用務員「オンちゃん」から主人公である小瀬倫太郎たちに宛てられた手紙で,感動的な叙述がなされていたのだ。これは池上永一も読まねばなるまい。なんて,理由をつけては本を買っているから積もっていくのだが。
- 嬉しいこと。ProNASからの無料目次配信サービスを受けているのだが,今日届いていたそれからEditorialの"Power to the People: PubMed Central"をクリックして読んでみたところ,ProNASは,PubMed Centralの「生命科学分野における査読付きの一次研究論文のオンライン倉庫」に参加するということである。なんと,冊子体の刊行後4週間経つと,「誰でも無料で全文読め,引用でき,講義に使える」のだ。快挙というべきであろうし,こういうバージョンアップなら歓迎である。他誌も追随してくれたらいいのに。
- sendmailの問題が解決した。MIMEの問題ではなく,セキュリティの問題だったようである。-fオプションでFrom:を設定することはできるのだが,それだとhttpdの実効ユーザであるnobodyがどこかに残ってしまうらしく,To:に設定したアドレスの一部がUnknown BODY typeだとかいって蹴られるのである。一致しなくても蹴らないように/etc/sendmail.cfを変えるというのも一瞬考えたが,セキュリティ上好ましくないし,後ろ向きな解決は嫌いなのでやりたくなかった。そこで発想を変えてみた。要するに-tオプションで拾ってくるFrom:が真のFrom:と一致すればよいのだから,From: nobody@sv1.humeco.m.u-tokyo.ac.jpとして,Sender:及びReply-to:とメール本文に,WEBからの送信者のアドレスを設定することにしたのだ。自分で試してみたらうまくいったので,取り敢えずOKとしよう。
- Linuxのカーネル,2.2.14がリリースされたという情報。sv1とsv3には入れねばなるまい。アップデートで痛い目にあった直後でありながらそういう行為をとるのは,我ながら懲りない馬鹿という気もするが,セキュリティホールが埋まっているとかいう話を見ると,アップデートするのはインターネット直結サーバの管理者の義務なんだよなあ。取り敢えず,電総研のRINGサーバの当該ディレクトリ(2.2.14は今日の早朝のタイムスタンプでミラーされている)からダウンロードしておく。
- ふと思い立って,在外研究員覚書に,在米中に聞いた講演の記録を追加中。こうしてまとめ直してみると,実に錚々たる顔ぶれといえよう。
- 書評掲示板スクリプトでクッキーの処理にY2kバグを見つけたのでバージョンアップした。バグフィックスをバージョンアップと呼ぶのは,多くのソフト会社がやっていることとはいえ,内心忸怩たるものがある。
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