枕草子 (My Favorite Things)
【第331回】 ゆりかもめに乗って(2000年6月29日)
- 今日は晴れ。朝4:00に子どもたちに起こされて,もう一眠りと思ったのが失敗で,目が覚めたら6:30だった。仕方ないので,7:50発あさま2号に乗った。昨日の復路から読み始めた,池内了「わが家の新築奮闘記」(晶文社)を往路で読了。共感する点が実に多い本だ。とくに,金銭を単位とした消費行動としての現時点の損得勘定では,将来の物価変動という社会変化によっていかようにも変わりうる要因の影響を受けるので意味がなく,エネルギーや物質を単位としてLCAをやるべき(EPTとか二酸化炭素ペイバックタイムというのは,そういう思想である)という指摘は,その通りと思った(預金より利率がいいとかいう記載も最後の方には出てくるが,勇み足というか蛇足であろう)。最後の方で出てきた「煙突税」というアイディアにも共感したが,サイクルが長くなるという欠点をもっているから,青空ML[160]で提案された「裸地税」([187],[191]など関連コメントあり)の方が優れていると思う。池内さんが青空MLに入ってくれたら面白いと思うんだがなあ。
- 先週末からThinkPad535の電源が入らないか,入ってもすぐにLow Batteryという警報が出て切れてしまい,バッテリーを外しても変わらないという症状に見舞われていたので,今日はIBMのサービスセンターに持ち込むことになっており,上野から京浜東北線とゆりかもめを乗り継いで芝浦ふ頭に行った。ゆりかもめはゴムのタイヤがついたモノレールなのだが,短距離の割に料金が高い(新橋から芝浦ふ頭はたった3駅で10分もかからないのに往復480円もする)のと,お台場が若者の集まる場所になってしまったことから往路が混むのが欠点だ。IBMのサービスセンターの受け付けの方は感じがよい応対で,5分もかからずにThinkPad535を預けることができた。午前中は新橋行き(ぼくにしてみれば復路)のゆりかもめは空いているので,10分間とはいえvaioを開けてここまで打った(後で若干修正)。
- 銀座線,丸の内線経由で研究室に着くと,ソロモン諸島の首相選は,国会議員がマライタ・イーグル・フォースとイサタブ・フリーダム・ムーヴメントの攻撃を恐れたためにキャンセルされて無期延期という報道でがっかりした。その後,オーストラリアの軍艦の上で明日行われるという情報が入ってきて一安心したが,まだ予断を許さない状況である。
- 同窓会の下準備など昨日に引き続きRJの一日。
- Nature JapanのサイトからリンクされているPE BiosystemsのBioNewsに面白い記事が2つ載っていた。1つは,ハマダラカの遺伝子組換えが可能になったというもの。青空MLで小宮さんがこの話についてのロイターの記事を紹介してくださったが,記事のネタ元は先週のNatureだったようだ。それ自体は遺伝子組換え系技術の進歩として意味があるのかもしれないが,マラリア対策として使えるかもしれない,なんて主張は山師的である。ぼくも青空ML[2090]でコメントしたが,今回のBioNewsの記事にも,その形質だけではマラリア対策として有効なほど在来種を置き換えるとは思えないし,置き換えた場合は遺伝子汚染が心配だという,ぼくのと同じ主旨の意見(言っている人は別々)が載っていたのでちょっと安心した。「遺伝子操作をめぐって」と題して去年指摘したように,遺伝子工学の研究者は往々にして生態学についての配慮を欠いているのが致命的にナイーヴなのだ。
- 2つ目は,木の中から食べ物になる葉を見分けるために霊長類だけが三色型の色覚を発達させたという話。Journal of Experimental Biologyの2000年6月13日号に載っているそうだが,2000種類を超える果物と葉,背後の森の日陰における光の反射率の測定結果から,果物や葉を背景から見分けるのに理論上最適な錐体光受容体の分布を計算したら三色型だった,という手口が面白い。二色より三色の方が食物を見分けるのに便利だったというのはわかるが,四色との比較はしたのかどうかがこの記事ではわからない。おそらく四色とは差がなくて,最節約原理に従って三色というのだろうとは思うが。
- 帰りは終電。上野から座れたので楽ちん。
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