枕草子 (My Favorite Things)
【第404回】 EMANON(2000年10月12日)
- 往路は,あさま504号。梶尾真治「おもいでエマノン」(徳間デュアル文庫)を読了。地球上に生命が誕生してから30億年に渡るできごとをDNAに刷り込んで継代してきたと自称する少女“エマノン”を主人公とする連作短編である。遺伝情報だけでなく外界の出来事をDNAに刻んでいるというのは情報量としてありえないように思うが,30億年の間に溜まった遺伝情報を読み出す能力があるとすれば,エマノンはヒトゲノムプロジェクトのメタファーとみなすこともできる。そう思って読んでみると,ポストゲノム時代の意味とか,いろいろ深読みできて面白い。別に深読みしないでファンタジーに浸っても,それはそれで楽しめるが。
- ちなみに,「エマノン」が書き始められた1970年代は,まだヒトゲノムプロジェクトが本格的に立ち上がる前である(1991年に本格的な国際プロジェクトがスタートしている)。基盤技術としての大規模DNAシークエンサを開発した和田プロジェクトさえ1981年から始まったことを考えると,梶尾真治のアイディアが如何に先駆的だったかがわかる(娘を産んだ瞬間に母の記憶がなくなるという設定からすると,厳密には違う発想--たとえば脳に作用し,経産道感染するウイルスとか--かもしれないが,こう読めないこともない)。仮に脳内に実装できる小ささの超高速DNAシークエンサがあって,それを意味のある情報に翻訳するシングルチップコンピュータをアタッチメントにできるなら,エマノンみたいな妄想を生み出す存在があってもおかしくないかもしれない。今書き始めたらハードSFにできるかも。
- サザンオールスターズのEMANONとどっちが先だろう? それにしても,今までEMANONの意味に気づかなかったのは,迂闊だった。こういうことってたくさんあるんだろうなあ。
- 今日こそは実習準備をしなくてはならない。頑張ろう。
- 明日配布するプリントだけできた。試薬はまだだが,食事に行ってきた。久々に生協第二食堂。ハヤシライスには飲み物がついているので,豆からワンタッチで挽いてドリップされる機械で入るホットコーヒーを飲んだ。食後,倉庫をチェックして,採水瓶があることを確認。これから試薬の注文である。
- 最近,SETI@HOMEクライアントは,MultiSetiを使って,自分のデスクトップマシンでだけ,帰る前に走らせ,研究室に来たら止めるという動かし方をしているのだが,V3.0は動作が速いという話なのでftp.cdrom.comからダウンロードしてみた。
- 以前触れた民族衛生学会国際シンポジウムの公式ホームページは,こっちなのだそうだ。プログラムが掲載された。早く発表原稿を作らなくては。
- 博士論文の発表練習を聞くとか(ちょっと細かくコメントしすぎたような気がする。混乱させてたらごめんなさい>発表者),カラープリンタの設定とか,いろいろやっているうちに試薬を電話注文できない時刻になってしまい,FAXを出して帰ろうと思っている現在は20:07である。終電かなあ。
- 予想通り終電になったが,4号車には空席があって座れた。太田忠司「狩野俊介の冒険」(徳間文庫)を読み始め,高崎の手前で読了。なんか,アニメの名探偵コナンみたいな配役である。もちろん,狩野俊介は薬で子どもになっているわけではないのだが。でも,なかなか面白い。次の本にとりかかるべきか否かしばらく悩んだが,娘と遠足に行くのに備え,体力を温存するために眠っておくことにした。
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