枕草子 (My Favorite Things)

【第642回】 読まなきゃ良かった(2001年9月6日)

昨日の復路車内,「ライヴ・ガールズ」を読み始めた。が,こいつは週刊アスキーの評にあった通りの奇書であり,ゲロゲロでギトギトのエロティック・ホラーである,という表現はどうも日本語になっていないような気がするが,それくらいインパクトのある本だった。まずいな,こんな本を読んでいる場合じゃないのに,と思いつつ目が先を追ってしまうのは,この小説に出てくる吸血鬼の魔力に魅入られた男たちが「ライヴ・ガールズ」に通いつめるのと似ているかもしれない。吐き出される毒を吸い続けているような,ある種悪酔いにも似た酩酊感があって,長野駅から家まで自転車を漕ぐのもふらふらしていたような気がする。

たぶん,途中でやめたのが最悪の選択だったのだ。往路あさま550号で読み了えたが,途中から展開が変わり,読後感は意外に悪くなかった。逆にいうと中途半端かも。あのまま突っ走って何の救いもないまま終わったら,それはそれで稀代の奇書という地位を占められたかもしれない。

訳者あとがきや解説を読むと,吸血鬼小説とスプラッタパンクムーヴメントの2つの流れを汲んだホラーであることには納得するのだが,でもやはり,はっきり言ってしまえば,よほど体力と気力と暇がなければ,楽しめない作品である。読まなきゃ良かった。途中で止めることもできないので,読もうという人は相当の覚悟をするべきだと思う。


先週末airWebというブラウザが優れものだと書いたのだが,最近は他にもchallangingなプロジェクトがあるようだ。showさんのホットコーナーで昨日紹介されていたOpera日本語化プロジェクトにも驚いたが,オープンソースで独自エンジンのブラウザとして有望なのがTcl/TkとCで書かれたBrowseXである。キーボードからの操作性のよさが最大の特徴であるOperaに比べると,BrowseXはキーボード重視ではない。しかし,Win32版がMingw32を使ってコンパイルできること,デフォルトで日本語が通ること(バージョン1.50をWindows2000 Professional日本語版上で使った場合),サーバ機能内蔵,Mail Reader内蔵,など多くの特徴をもっていて,かなり有望なのである。ただ,チルダを解釈できないらしく,%7Eと書けば表示できるサイトがチルダ以降表示できなくなってしまうし,不安定だし,cssをサポートしていないという現状から,いま一つ実用性が低いのが残念だ。それに,どうせオープンソースのプロジェクトに参加するなら,Amayaを2バイトコードに対応させてしまう,とかいう方が楽しいかもしれない。そんなことを考えると,なかなかもう1歩踏み切れずに,airWebとNetscape6.1を併用し続けざるをえない。なかなか理想のブラウザには巡り遭えないものである。

今日も多少は人口分析の方法論のテキストを書き進めたが,サーバ管理雑用が突発したりして,今ひとつ進捗が芳しくなかったのを悔やみつつ,いつもの終電1本前に乗っている。本当は仕事をすべきなんだろうが,精神的に参っているので,宮部みゆき「人質カノン」に逃げている。これは心温まる佳作短編集で,読んで良かったと思う。なんとか立ち直れそうだ。


前【641】(フラミンゴウサギ算(2001年9月5日) ) ▲次【643】(あさま号の番号(2001年9月7日) ) ●枕草子トップへ