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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『冷たい密室と博士たち』

書名出版社
冷たい密室と博士たち講談社文庫
著者出版年
森博嗣1999(ノベルズ版は1996年)



May 01 (sat), 1999, 17:56

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

言わずとしれた,犀川助教授・西之園萌絵お嬢様コンビが探偵役を勤める10連作「ミステリィ」の2作目。面白くなかったら誰が研究なんかするもんか,とか,なぜ役に立たなくちゃいけないのか,とか相変わらずの犀川節には80%くらい共感する。

推理のネタについては,トリックもうまくはまっているし,動機もそれなりに納得できた。ただ,本筋でないところで引っ掛かった点が一つ。


guestログインの話だが,どうせトロイの木馬を仕込んでsendmailにパッチを当てるなら,他のマシンに送る方がログを見られてもわからなくなるからいいのではなかろうか。天才的な犯人のやることにしては間が抜けているように思う。まあ,些細な問題だが。


Sep 30 (tue), 2003, 23:12

邪雛 <fe025129.fl.freebit.ne.jp>

「森作品にしては動機にリアリティがある」ということを良く聞くが、それは納得できない。なぜなら犯人の、服部珠子殺しの動機が破綻しているからだ。


以下ネタバレする。

犯人は、丹羽に乱暴された経験があって、そのことで丹羽に対する殺意を覚えたのだそうだ。それは納得できる。しかし、その丹羽と服部が婚約したことで、服部もその事実を知ってしまったと思ったから、彼女も殺したとある。

これはどう考えても変である。

普通に考えて、丹羽がフィアンセにそのような事実を話すだろうか? 絶対にありえない。婚約者に「自分はレイプをしたことがある」などと言えるわけがない。

100歩譲って、たとえ懺悔の意味で話していたと仮定しても、その時点で破局→婚約解消であろう。

作中ではこの殺された二人は婚約していたままなのだから、服部が、丹羽の乱暴の事実を知っているということは可能性として限りなくゼロに近い。


以上、証明終了です。


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