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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『恋する寄生虫』

書名出版社
恋する寄生虫講談社
著者出版年
藤田紘一郎1998



Jun 22 (mon), 1998, 17:11

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

性行為感染症の本である。とはいえ,藤田さんの本らしく,「清潔志向」への皮肉や,現代の先進国における「生と性」の不自然さの指摘に彩られている。
第1章「恋を邪魔する寄生虫」と第2章「ムシたちの真剣な性」はインドネシアなどでの体験談があふれていて面白い。まあ当事者にとっては面白いどころではないだろうが。それに比べると,第3章「心の『性』と体の『性』」はほとんどレビューで,かつ読みこみが甘い。第4章「寄生虫たちの平和」は「イスラム教徒がブタを食べないわけ」に代表される有鉤嚢虫の恐ろしさの記述に圧倒される。いやー,ブタの生肉だけは食うもんじゃありませんね。

第5章は精子数減少など環境内分泌撹乱物質の影響だろうといっていろいろレビューしているが,藤田さん,先入観が強すぎてレビューの仕方が反則である。ぼくのページでも見てバランスをとって欲しいものである。


Jun 26 (tue), 2001, 00:28

りりぃ <d2f9b96e.tcat.ne.jp> website

既存書評と比べてみたくて、この本を手にしてみた。

確かに、「そうそう」と重なる部分が多い。インドネシアでの体験談はユーモアを交えていて面白いが、本人達にとっては場所が場所だけにどれも深刻な話だった。


1つ考えを改めさせられる思いがしたのは同性愛者について。彼ら、彼女らの脳が胎児の段階に母体のストレス等の関係で必要なホルモンを受けられなかった事などが理由であったとは!ああいうのは、後天的なもの、育った環境とか、その人の趣味だと思って偏見を抱いていたのだが・・・。でもやはり気持ち悪いな。


また、p.245の次の文章は興味深い。

<たとえば、若い人たちはいずれも母親にべったり構われすぎて他人とあまり遊ばないで育っている。そうすると、自我がひ弱になる。ひ弱な自我は、それを守るために自己防衛が強くなり周囲に適応できなくなる。・・・自我のひ弱な人は、自分を壊されないかと恐怖に襲われる。つまり、過保護、過干渉で育てられた日本人の歪みが、こんなセックスレス現象に現れているというのだ。>

放任も同じような悪影響があるのではないだろうか?兄弟の数もめっきり減って、人同士のふれ合いが小さいときから少なくなっている。清潔志向、中性化、精神的に脆弱な子供が大人へとなっていく現代。こういうのは進化なのだろうか?それとも病的な方向へと進んでいる証しなのだろうか?それでも寄生虫たちみたいに原始的で直向きな恋の存在だってまだまだあることを信じたいし、「愛すること、恋すること、信じること」がエネルギーに代わる社会の存続を信じたい。


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