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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『天に昇った男 (A Man in the Skies)』

書名出版社
天に昇った男 (A Man in the Skies)光文社文庫
著者出版年
島田荘司1994



Aug 03 (mon), 1998, 04:19

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

文庫書き下ろし460円である。著者あとがきによれば,「いずれにしても,平成の世に入り,死刑という異常が,具体的にはどのような形で行われているか,またこれが,どれほどこの平和な社会にそぐわないものであるかを知ってもらいたくて,この小説を書いた。」とのことである。このことが端的にあらわれている描写は,主人公である死刑囚門脇春男が見る現在の東京のイメージである。しかし,全体としてこの本から受ける印象は,ヒトの心の暗闇である。そのどうしようもない部分が*誰にでも*あるが故に,死刑は廃止すべきだというのだろう。とくに冤罪である可能性がゼロではないような昔の事件に関してはなおさらである,ということか。

ちなみに,去る6月26日に社会民主党の伊藤幹事長が出した声明によれば,死刑の執行停止に関しては衆議院法務委員会で党派を超えた議論がされているところであり,それにもかかわらず法務省・法務大臣によって,6月24日に東京で1名,福岡で2名の死刑執行があったそうである。


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