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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『橋爪大三郎の社会学講義2-新しい社会のために-』

書名出版社
橋爪大三郎の社会学講義2-新しい社会のために-夏目書房
著者出版年
橋爪大三郎1997



Jul 24 (mon), 2000, 22:59

徒然三十郎 <tkyo3807.ppp.infoweb.ne.jp>

本書は、1995年発行の『橋爪大三郎の社会学講義』の続編であり、雑誌等に発表された多数の論文と未発表の少数の論文とを次の5つの「講座」にまとめたものです。
【基礎講座】社会科学を学びたいあなたに
【講座1】大学について
【講座2】日本について
【講座3】宗教・文化・生活について
【特別講座】新しい社会のために

これらの「講座」の前に「講義にはいる前に 日本をまともな国家にするために」という書き下ろしがついているのですが、ここでは日本国の大日本帝国の後継国家としての正当性(legitimacy)が重点的に議論されています。これだけいうと加藤典洋氏の「敗戦後論」(『敗戦後論』(講談社)所収)と同じであるかのようですが、両者の違いは【特別講座】に含まれる鼎談で明らかになります。参加者の1人である西谷修氏が、戦争によるアジアの2000万人の死者より日本の300万人の死者を先に葬ることで正当性を確立するという加藤氏の論をもちあげるのですが、もう1人の参加者である姜尚中氏と著者とはこのアジア/日本という区別自体を批判します。ここにおいて、著者はポツダム宣言がどういうものであったかを自分なりに理解する必要性を主張します。

同じ著者による『はじめての構造主義』(講談社)、『冒険としての社会科学』(毎日新聞社)等と同じく、知識、分析能力、表現力の3つがそろっていることのすばらしさを感じさせる1冊です。


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