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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『東アジアの家父長制-ジェンダーの比較社会学-』

書名出版社
東アジアの家父長制-ジェンダーの比較社会学-勁草書房
著者出版年
瀬地山角1996



Aug 01 (tue), 2000, 22:27

徒然三十郎 <tkyo3140.ppp.infoweb.ne.jp>

家父長制は、男=生産労働/女=再生産労働という性別役割分業によってプロレタリアートを効率的に搾取するためのシステムである。今こそこれを破壊して女性を解放し、ブルジョワジーを打倒しようではないか!

本書『東アジアの家父長制-ジェンダーの比較社会学-』は上記のような趣旨の本ではありません。家父長制は主に儒教との関係でとらえられ、社会主義国においても観察されることが示されます。著者は冷静な分析態度をとっており、「われわれには「女性を解放する」ことなど決してできない。どんなに女性に抑圧的に見える制度であっても、そのなかには必ず受益者としての女性が存在する」とまで言い切ります。

日本についての議論では、一応「家父長制の乗り越え」という見出しも登場しますが、実質的に乗り越えが図られているのは高齢化にともなう介護需要の増大です。著者は主婦を労働力化して介護にあてることを提案するのですが、結局これは性別役割分業ではないでしょうか。

本書の通読には時間がかかりますが、それに値する力作です。


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