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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『天使のリール』

書名出版社
天使のリール中公文庫
著者出版年
喜多嶋隆2000年(単行書は1997年)



Sep 01 (fri), 2000, 11:32

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

女子大生であり釣り船の船長である角田潮里を主人公とする作品。主人公の成長をいくつかのエピソードでつなぐ連作短編的な体裁。続編がありそうな感じの終わり方ではある。

アタッカーとしての心構えが語られているし,情景描写は生き生きしているし,すばらしい釣り文学だと思ったんだけど,1つだけ妙な設定がある。何で主人公は葉山からわざわざ青学の英文科に通ってるのかということ。別に英文学が好きなんじゃなくて,英会話したいだけみたいだし,これだけ本質主義の人だったら,そう,例えば藤沢あたりの英語専門学校へでも行くんじゃないだろうか? うーん,ICUだったら,まだちょっとわかるんだけど……と思っていたら,文庫版あとがきで作者が語るところによれば,妹にしたい女性の理想像を詰め込んだんだそうだ。駄目だよなあ,そういう趣味に走っちゃ。だって矛盾してるじゃん(とはいえ,続編があったら読みたい作品ではあった)。

●税別629円,ISBN 4-12-203682-8(Amazon | honto


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