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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『洗剤とまれ』

書名出版社
洗剤とまれ績文堂
著者出版年
柳澤文正1982年



Nov 18 (sat), 2000, 23:13

りりぃ <d2e091a5.tcat.ne.jp>

この本は絶版で、もう買うことはできない。読むきっかけは、このような本があると教えて、貸してくださった人がいたからだ。大きな図書館には今でも置いているらしいが。

この本では、著者は資料に重点を置いている。半分以上を資料が占めている。国会でのやりとりが、その大半であるが、合成洗剤追放運動をかなり過激な考えで推し進めていった著者とその弟で、東京医科歯科大学教授の柳澤文徳先生もそれぞれその答弁に登場する。

注目すべきは、資料Ⅲの「第四〇回国会・衆議院科学技術振興対策特別委員会の記録(昭和37年4月4日)」である。合成洗剤の歴史では、昭和36年にミヨシ化学(株)の合洗係長が原因不明の死を遂げたことに、なっている。
ところが、何故か、それを切っ掛けにその会社では、社員の健康診断が行われていたりする。非常に封印された部分なのである。誰もが、その死を合成洗剤製造に関係するものではなかったのだろうか、と推測しそうだ。だが、その証拠というべきものがない。

ところが、その国会の記録に残っていた。やはり、その合洗係長の死因は、ABSの中毒死と思われると現場に居合わせた名古屋市立医科大学病理学教授により指摘され、それ故、残存の工員の健康診断を進言されたのだ。係長は夜半より呼吸困難を訴え、翌日の朝、救急車で入院、同日午後一時急死している。

先に紹介した柳澤先生の本でのライポンF誤飲死亡事件といい、この合洗係長の死といい、消費者には正しく伝えられていない。四〇年近くも経ってしまい、生分解性のよい合成洗剤がある、と言われる今日だが、遺伝毒性等、まだ、不安な要素がいっぱいである。メーカーがその製品に対する、負の情報も正しく伝えない限り、正しい消費者教育はできないのではなかろうか?

消費者も自ら勉強することを怠ってはならない。化学物質過敏症が知られるところとなる今、勿論洗剤だけを継子虐めするのは、時代遅れである。身の回りに溢れた一見便利な石油系化学合成品の慢性毒性等を個々の品々についてもう一度、各自認識する必要がかなりあると思う。また、それらに何の疑問も抱かず使ってしまっている人たちへ、知る者達が教えていくべきではないだろうか、根気強く。


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