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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』

書名出版社
環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ洋泉社新書y
著者出版年
石弘之+安田喜憲+湯浅赳男2001年5月



Aug 23 (thu), 2001, 18:17

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

地球環境の持続性の危機が叫ばれる現在,環境と文明という視点で世界史を通観する目的で,3人の大御所が長時間に渡って行った鼎談を起こしたもの。

石氏は「地球環境報告」などの著作で知られ,出身ゆえかジャーナリスティックな広い視点が特徴的である。安田氏は実証的な環境考古学を展開している,大変にオリジナリティの高い研究者で,本書前半で鈴木秀夫の影響を受けているというのを知ってさもありなんと思った。湯浅氏は経済人類学者ということだが,フランス革命でのコモンズの研究から,経済史を環境史としてみるという取り組みをずっと進めてきたらしく,日本の経済学系の研究者としては大変にユニークである。この大御所たちが,議論の厳密さには多少目をつぶって,大胆な仮説や意見,そして新しい知見(主に安田氏の)についての議論を丁丁発止とやりあっているのだから,面白くないわけがない。

しかし結局,この500年の人類史を環境史の視点から総括するべきだ,という回顧的な着地点が,良くも悪くもこの世代の方々の役割であり,また限界かもしれない。もう少し若い世代は,既に千年持続学を考えたり,今後100年の地球環境についていくつもの選択できるオプションを具体的な予測としてシミュレートしたり,といった視点に立っていると思う。ただ,若い世代が,この総括を知っておくことは大事だし,その意味で本書の意義は決して小さくない。

●税別720円,ISBN 4-89691-536-4(Amazon | honto


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