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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『天涯の船 上下』

書名出版社
天涯の船 上下新潮社
著者出版年
玉岡かおる2003/2/25



Apr 25 (fri), 2003, 12:13

松木幸次郎 <yahoobb218114160112.bbtec.net>

玉岡かおるのおんな一代記ものですが、「をんな紋」などに比べると、はるかにこちらのほうが優れている。小学校の先生と大学の教授くらい違うといっていい。


さて発端は明治の初め鹿鳴館時代播州の家老家酒井家では息子と娘をアメリカ留学に旅立たせた。ところが船が出てから気がついてみれば娘は居らず、かわりに4歳も年下の御付の娘がいるばかりである。本物の娘は婚約者がいて留学を嫌ってそちらへ逃げてしまったのである。深窓の令嬢の顔は乳母しか知らない時代である。乳母は何とかなるから誤魔化せという。さてそれからその娘の船中での教育が始まった。乳母は

表では娘をお嬢様といってたてるが、うらに回ると灸をすえたり、それは言語に絶する苛めをくわえる。娘三紗緒は最後に耐えかねて、部屋を逃げ出す。そこで

一人ダンスの稽古をしているらしいかわうそ顔の青年にあう。彼は桜賀光次郎。この長いお話の主人公です。


まだ話は上巻の1/3も進んでいませんが、主人公は実は松方コレクションの

松方幸次郎であるらしく、松方を知る人なら興味が深いとおもう。岡倉天心が出てくるが彼の恋愛事件の相手方にもそうとう突っ込んだ見解が加えられている。


「わんな紋」の主人公のラブアフェイア-というのは要するに畳の上の水練のごときもので何をお上品なと反感を買う類のものであったが、こちらでは終始一貫して恋物語りらしい恋物語であった。


力作に半端な書評で誠にもうしわけない。


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