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【第1046回】 昼間のバスで関西へ+『大洋に一粒の卵を求めて:東大研究船、ウナギ一億年の謎に挑む』の感想(2015年7月5日)
- 昨夜の会は楽しかったが,若干飲み過ぎた。二日酔いで頭が痛い。
- 梅の実を摘んだり,いろいろしているうちに昼を過ぎ,妻に車で長野駅まで送って貰って,大阪行きのバスに乗った。昼間のバスは車中でDVDが2作品流れるのだが,1作目のアナ雪は眠っていて見なかった。2作目は「おにいちゃんのハナビ」という,実話を元にして作られた名作であった。涙をこらえるのに困った。
- 新大阪からJRで神戸に出て,市バスに乗って帰宅したら22:00を過ぎていた。とりあえず洗濯は必須。
- 移動中にかなり読み進めたので帰宅後に読了した,塚本勝巳『大洋に一粒の卵を求めて:東大研究船、ウナギ一億年の謎に挑む』新潮文庫,ISBN 978-4-10-126006-8(Amazon | honto | e-hon),は素晴らしく面白かった。実は『世界で一番詳しいウナギの話』として単行本で3年前に出た本の改題増補版だそうだが,『世界で一番詳しいウナギの話』は未読だったので,これまで番頭青山さんによる採集紀行3部作に登場するユーモラスなボスとしての姿しか知らなかった。本書を読んで,研究者としてのスタンスや企画力を含めて凄い方だと思ったし,ウナギを巡る謎が一つずつ解き明かされてきた歴史と,それでもなお残るたくさんの謎と保全生物学的なアクションの必要性に対して今後どうやってアプローチしていくのかという視座を明確かつ面白く語ってくれていて,高校生や大学生にも是非読んで欲しい本だと思った。もちろんウナギの一生の謎がターゲットなのだが,そもそも魚の回遊とは何なのかというところから説き起こし,琵琶湖の大アユと小アユのスイッチング・セオリーを思いつくに至った経緯を踏まえて,個体数としては少ない中アユが果たす役割が実は鍵なのだという話にも心をつかまれた。ヒトの移動についてはpush要因とpull要因があると考えるのが人口学では普通だから,魚と同じようにpush要因だけで説明してしまうのは少々乱暴かと思ったが,その次の耳石のストロンチウムの分析から,実は繁殖に参加するであろう銀ウナギのうち8割は川を遡上したことがない「海ウナギ」や「河口ウナギ」だった(河川環境が悪化する以前は違ったかもしれないが,現在ではそうなっている)ことを明らかにした話は面白かったし,大西洋のウナギ研究の巨人であったシュミット博士の研究の話から,ヨーロッパウナギとアメリカウナギの産卵が同じサルガッソ海で同じ頃に起こるのに,どうして種分化が起こったのかという謎を提示し,レプトセファルスからシラスウナギに変態する時期の違いではないかという考察から,地理的にヨーロッパとアメリカの中間に位置するアイスランドの川には交雑種が遡上してきて,両者の中間的な特徴を示すという話も大変面白かった。そこからは,著者のチームがニホンウナギの卵採取に成功するまで,どのように試行錯誤しながら戦略を修正し,仮説を立て直しながらウナギの生態を解き明かしていったのかというダイナミックな話が続き,読み進めるのを止められなくなった。なお,最後の方で語られるエフォート裏話には笑ってしまったが,それに続くEASECの立ち上げから緊急提言までの活動には,研究者のスタンスとして学ぶ点が多かった。結論として,最近読んだ中では,1,2を争うお勧め本といえる。
- 洗濯物を部屋干ししたら力尽きたが,風呂に入ってから眠った。
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