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個別鵯記

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【第1244回】 移動しながら『南太平洋の伝統医療とむきあう』を読了し,『身から出た唄』を聴きながら『みつばち高校生』を読了した日々(2016年2月23日)

長野市役所にて
日曜は午前中に月一度だけ日曜開庁している長野市役所に行って用事を済ませ,郵便局と駅を回って帰宅。長野市役所宛に爆破予告があったとかで,TV局の取材班がいくつも来ていてびっくりした。ぼくは昨日長野に着いたばかりで全然知らなかったので,インタビュアーに逆にいろいろ質問してしまった。何でも既に犯人は自首してきているそうだ。何がやりたかったのかわけがわからないが,迷惑な話だと思う。
『南太平洋の伝統医療とむきあう』
帰宅途中に殺鼠剤を買って,天井裏とか何ヶ所に仕掛けてから再び長野駅へ。しなの号とひかり号を乗り継いで新神戸へ。その間,このところ読み進めてきた,白川千尋(2015)『南太平洋の伝統医療とむきあう:マラリア対策の現場から』臨川書店,ISBN 978-4-653-04250-1(Amazon | honto | e-hon)を読了。既に書いたように"My first fieldwork"の(白川さんは,JOCVとしてポートヴィラを拠点として行った最初のマラリア対策活動の2年間と,大学院博士後期課程で文化人類学者の卵として医療人類学的なフィールドワークを行った電気もガスも水道もないトンゴア島での1年間があるので,それぞれ異なる)試行錯誤と逡巡と興奮と感動が伝わってくる良書。フィールドワーカーを志す学生には,山極寿一『京大式 おもろい勉強法』朝日新書,鈴木継美『パプアニューギニアの食生活:「塩なし文化」の変容』中公新書,増田研・梶丸岳・椎野若菜(編)『フィールドの見方』古今書院と併せて推薦したい。いくつか気になった点をメモしておく(書いているうちに長くなりすぎたので,後で書評ページにもちゃんと収録するつもり→収録した)。
  • (p.21)国勢調査人口が1989年の186,878人から2009年の234,023人へ「急増」という記述だが,年人口増加率を計算すると1.13%程度なので,それほど急激な増加ではなく,最近の世界人口の増加率と同じくらいである。2.4%あると30年で倍増なので,たぶん「急増」といったら,それくらい以上を指すのではないか。もっとも,資源も耕作地も限られている島世界だから,この程度でもヴァヌアツ政府は「急増」と認識していても不思議はないが。
  • (p.23)ソロモン諸島やパプアニューギニアのピジンがヴァヌアツではビスラマ語と呼ばれていることは知っていたが,ビスラマの語源が19世紀初期に白檀やナマコなどの交易品を求めてメラネシアを訪れたヨーロッパ人と現地の人々の共通言語として生まれた故に,「ポルトガル語でナマコを意味するビーチ・ラー・マーに由来する」とは知らなかったなあ……と思って調べてみたら,ちょっと疑問が。英語だとナマコはsea cucumber,つまり海のキュウリで,マーはたぶんフランス語のmerと同じく海という意味だと思うので(たしかにポルトガル語でもmarが海らしい),「ビーチ」がキュウリかと思ったが,現代のポルトガル語ではキュウリはpepinoらしい。というか,Googleで調べるとナマコのポルトガル語はpepino do marと出てくる。あれ? ちなみにフランス語でのナマコはbêche-de-merなので,ここに由来するという方がしっくりくる(おそらく現地の誰かがポルトガル語由来説を語ったのだろうけれども)。
  • (p.37)「スライドガラスは血液が乾いた後,臨床検査技師のいる病院へ送る」とのことだが,乾かす前にもう1枚のスライドグラス(たぶんラボ用品としてはこの表記の方がポピュラーと思う)の端をとった血液の上に載せ,スッと引いて血液が薄く塗布された部分を作っていたのかどうかを書いてくれると,当時のヴァヌアツのマラリア検査が原虫の有無だけを調べる厚層塗抹標本の検査だけだったのか,密度(感染強度)も調べるための薄層塗抹標本も作っていたのかがわかるので,その記述は欲しかった。また,臨床検査技師は送られてきた標本をそのまま見るのではなく,ギムザ染色とメタノール固定をしてから油浸の蛍光顕微鏡で見ていたはずだが,そこまでは観察しなかったのか? まあ,あまりにマニアックな記述をしても仕方ないから省いただけかもしれないが。あと,同ページで,ヴァヌアツでのマラリア対策のJOCVの仕事として,臨床検査技師から送られてきた検査結果をパソコンで入力してデータベースを作ることがあった,とサラッと書かれているが,実はソロモン諸島では,その検査結果がヘルスセンターからちゃんと報告されるようにするための仕組みを作ろうというJICAのプロジェクトが大変難航し,結局いつまでも顕微鏡検査者(microscopist)の能力が十分信頼できるレベルに到達しなかったので,本当にそれができていたなら,それだけでも凄いことだと思う。個人的な興味としては,データベースに使っていたソフトが何だったのかも知りたい。ぼくの経験では,2004年にベトナムの医療情報データベースの支援をしたときに,あまりに高機能なソフトは現地の人が使えないという理由でMicrosoftのAccessが使われていたし,1993年にパプアニューギニアのタリ盆地に行ってパプアニューギニア医学研究所のタリブランチが10年以上にわたって記録してきた人口動態統計データのデータベースはFoxProというソフトを使って作られていて,そこからデータを引き出すのが一苦労だった。1991年のヴァヌアツでは果たしてどのソフトが使われていたのだろうか? 操作が簡単だったそうなので,ExcelとかMultiplanとかLotus-1-2-3だったり?
  • (p.42)派遣前に帝京大学医学部寄生虫学教室でマラリアに対する研修を10日間受けたとのことだが,白川さんも亀井先生の弟子だったのか。専門用語を英語で習ったのが現地で役に立ったという記述は重要。
  • (p.59)せっかく配った蚊帳が漁網や畑の虫除けに使われてしまうという記述は,もっと後のアフリカでも起こったことで,蚊帳配布プロジェクトに共通する問題。ここで「マラリアに関する知識が十分にないから蚊帳を使わない」という現地スタッフの考え方は一方的ではないかという着眼点は素晴らしい。ぼくがソロモン諸島で聞き取った結果でも,そもそもマラリアに罹ることを大人はそんなに恐れていないし,蚊帳に入って眠ると「short-breathになる」とか「暑くて眠れない」から,多少蚊に刺されてマラリア感染リスクが上がるとしても(それは村人も皆知っていた)蚊帳は使いたくないという人が何人かいた。ソロモン諸島のマラリア原虫はまだ薬剤耐性がほとんどなかったので,罹ったらタダで貰える薬で治るからいいと思っている人も少なくなかった。さらにいうと,ソロモン諸島の主要なマラリア媒介蚊はAnopheles farauti No.1という早晩屋外吸血性をもつ蚊だったので,眠る時に蚊帳に入ってもさほど効果がないという問題もあった。ヴァヌアツの蚊の行動特性は知らないのだが,もしかしたらそういうこともあったかもしれない。それにしても,この経験から「マラリアやそれに関連するものごとをめぐる人々の側の価値観や考え方,行動様式などについて,残りの任期の間に自分なりに調べてみることにした(p.61)」ことが,後に博士論文のテーマの中に,ヴァヌアツの人々がどのように伝統医療と近代医療を使い分けているのかという問題設定を入れた契機であったろうと思われるので(もちろん,p.70から書かれているように,白川さん自身がひどい下痢になってフランス人医師から処方された薬が効かず,伝統医療の患者として参与観察をする羽目になったということが直接の契機ではあろうが),JOCVの活動としては失敗と評価せざるを得ないような事態に直面しても,そこから得られることはあるというメッセージは大きい。フィールドにいるときは常に目を大きく見開いて考え方も柔軟にしておくべきということが,この話からもよくわかると思う。
  • p.84-90辺りに書かれている,博士後期の院生として調査許可を得るための試行錯誤・悪戦苦闘経験は大変興味深い。自分でこの類いの交渉をしたことがあるフィールドワーカーなら,多かれ少なかれ誰もが経験していることと思う。しかしあまり文章としては書かないことなので,これからフィールドワークをしようという人にとっては大変貴重な記述と思う。
  • p.106-111に書かれているイタクマの家庭状況を見て,本書のスコープとはまったく関係ないが,現在日本政府が少子化対策としてやり始めた三世代同居を奨励するとかいう無理筋よりも(農村部には現役世代の職場が乏しいから),農村部に居住する祖父母が孫を引き取って育てたら行政が補助金を出す仕組みでも作ったら有効なのではないかと思いついた。祖父母世代が都市居住者な場合は無理だが。
  • (p.131)108人から集まった219例の病気や不調のデータについて,『カストム・メレシン』で質的な分析は十分にされていると思うが,各世帯から医療施設や伝統医療の治療師の家までの距離なども含めた量的な分析もできるのではなかろうか。もしまだだったら,GISを使って分析し直したら面白いかもしれない。
  • (p.156)ヤムイモが日曜の昼食や来客時にしか使われない,というのは,ソロモン諸島と同じだ。ヤムイモは焼畑に火入れをして1年目の,地力が高いときしかうまくできないのだとソロモン諸島の村人は語っていて,正月とか教会の祭りとか儀礼があるときはいつもヤムイモを原料にしたプディングを作っていた。キャッサバ(マニオク)やサツマイモ(クマラ)に比べて地力収奪型の作物なのだとしたら,主に儀礼のときに食べるという慣習は理に適っている。(p.157)アイランドキャベツというのは,ソロモン諸島でslippery cabbage,パプアニューギニアではaibikaと呼ばれているのと同じモノだろうか? と思ってちょっと調べたら,アイランドキャベツの方はFAOのサイトに学名Abelmoschus Manihotとあり,どちらも和名トロロアオイ,同じ植物のようだ。
  • (p.160)ナナフシの卵を生で吸うという食べ方ができなかったという告白がされているが,ぼくもパプアニューギニアの村人から貰った食べ物の中で,唯一食べられなかったのは,生きたままのアリだった。手を噛まれても結構痛いのだが,彼らはそれを葉っぱを切って作った巣の中に入っている卵とアリが渾然一体となって蠢いている状態のまま口に入れるのだ。酸っぱくて旨いというのだが,これだけは食べられなかった。加熱されていたら食えると思うのだが。
  • (p.176)調査目的を金儲けと勘違いした噂が流れて困った話は,ぼくも何度か経験したので身につまされた。メラネシアは基本的に噂社会だから,公式の場で語ったことよりも噂の方が信じられてしまうことがままある。たぶん,ぼくもいつもそうしてきたが,時間をかけて態度と行動で信じて貰うしかないんだろうなあ。
  • (p.182-196)ヴァヌアツでのデング熱の歴史,流行時のセンナリホウズキの薬草としての活用とそれが使われるようになった経緯をどうやって解き明かしたかという話は大変面白い。たぶん『カストム・メレシン』にも書いてあったと思うが,完全に忘れていた。3月のオセアニア学会でデング熱について概説しなくてはいけないので,当然この話にも触れなくてはまずかろう。
UMX-AC90CWは1週間も保たずACアダプタ新規購入
帰宅後,Dynabook R83を使おうと先週買ったばかりのACアダプタUMX-AC90CWをつないだわけだが,19Vと表示されるのにDynabookが電力供給を認識しなくなってしまった。元々R83の定格入力が19V,4.74Aで,UMX-AC90CWの出力は19V,4.5Aなので電流は若干足りないのだが,先週はちゃんと使えていたので油断した。動作確認機種ではないのでメーカーに文句も言えないし,これは安物買いの銭失いだったかもしれない。仕方ないのでLABI1でエレコム辺りの19V,4.74Aのアダプタを買い直そう。まあ,そもそもの問題は,R83が入力90Wを要求することで,最近の多くのマシンのように65Wで良ければいくらでも代替アダプタがあるので,その点だけはR83を買ったのは失敗だった。KIRAなどは45Wなんだが。もっとも,その前に使っていてヒンジが折れたVAIO-SAも19.5V,4.7Aという90W機種なので,ちょっと前までは90Wが主流だったはずで,最近急速に低消費電力化が進んでいるということなのかもしれない。(追記)ふと嫌な予感がして調べてみたら,ZoltもPC用65Wなのであった。ああ,ダメだ。Dynabook R83には使えなそう……orz。月曜は朝からGSICSの修論審査会なので,三宮経由で六甲へ。1人目の審査が終わった後,フロンティア館の研究室に行ってDynabook R83に給電できるか,もう一度UMX-AC90CWを試してみたが,やはりダメだった。仕方ないので,とりあえず必要最低限のメールだけ打ち,後は紙の上で仕事をして午後の審査を待った。昼飯は生協で買ったサンドイッチで済ませた。午後の2件の審査が終わって名谷に移動する途中,三宮のLABI1でエレコムの東芝用19V,4.74AのACアダプタを買った。名谷キャンパスに着いてDynabook R83につないだら無事に給電できたのでほっとした。
ミーティング
メールの返事を打ったり教務や会計関係のいろいろな仕事を済ませたりしているうちに18:30になりミーティング。院生の中間発表で,いろいろコメントしたが,ともかく最大の難関をどうやって切り抜けるかが鍵だな。名谷キャンパスに来る途中で買ってきた弁当を食べ,22:00過ぎまで仕事をしてから,湊川公園廻りの終バスで帰宅。
Little Glee Monster・manakaの精神的成熟度
リトグリのブログを眺めていたら,たぶん半分以上はmanakaが書いているのだが,本当に中学生かと思うほど書いている内容が大人。歌のうまさは勿論天才なのだが,精神的成熟度が相当高いと思う(昔風のIQを測ったら150くらいいくんじゃなかろうか)。言葉のクローゼットが欲しいと語りつつ,細野晴臣氏がパーソナリティをしているDaisy Holiday!を聴き,オーファンズというかなり深刻な話と思われる舞台を鑑賞し,読んでいる本が幸田文『流れる』って,本当にこれで中学生かと思ってしまう。極東慰安唱歌のLPを探してるとまで書かれると……まあ当然,Daisy Holiday!経由なのだろうが,細野さんの良さがわかる中学生というのも凄い存在だよなあ。細野さんはこのことを知っているだろうか? 細野さんからリトグリへの楽曲提供とかいう話に発展したら,それはそれで面白いだろうな。
R-3.2.4とR-3.3.0のリリース予定について
2月17日にアナウンスメールが流れていたのをメモし忘れていたが,Rの次のリリースは3.2系最終版のR-3.2.4(コード名:"Very Secure Dishes")で3月10日予定。その次はいよいよ3.3系に入ってR-3.3.0が4月14日リリース予定なわけだが,公表されたコードネーム"Supposedly Educational"をこれまで通りPeanutsから探しても,これくらいしか近いものが見つからなかった。しかしこれはSally Brownの言葉だが,コードネームとは若干違って"Supposed to be educational"となっている。Peanuts以外からそのものずばりを探すと,文の一部として使われている例(とくに「おそらく教育的な」と"Slave Tetris"を形容するもの)が多かったが,イカレたプログラマの短編コミックみたいなものがあった。なかなか面白いので他のも見てみたいところだが,ひょっとするとこの方のオリジナルなんだろうか?
『コーヒーの科学:「おいしさ」はどこで生まれるのか』と『Understanding Human Ecology: A systems approach to sustainability』まずは流し読み
旦部幸博(2016)『コーヒーの科学:「おいしさ」はどこで生まれるのか』講談社ブルーバックスB1956,ISBN 978-4-06-257956-8(Amazon | honto | e-hon)と,Robert Dyball and Barry Newell (2015) "Understanding Human Ecology: A systems approach to sustainability", Routledge, ISBN 978-1-84971-383-2(Amazon | honto | e-hon)がAmazonから届いた。前者は,喫茶的生活を送り,タンニンについてなどを喫茶MLに投稿していた頃から存じ上げている百珈苑を作られた旦部セソセイ(ぼくの知る限り,先生と呼ばれるのは嫌だがセソならOKという方は旦部さんと三中さんのお二人で,半端でない知識量も共通しているが,見かけは全然違う)の該博かつ正確な根拠ある知識を,よくぞここまでコンパクトかつ深みとコクを残したままで書籍化してくださったと感動した。パラパラとめくっているだけで,久々に家庭用電動焙煎機が欲しくなった。まあ酔狂で買うにはちょっと高すぎるので買わないが。後者はフォレスターの図などが出てきて,久々に人類生態学へのシステムダイナミクス的なアプローチが説明されている本が出たという意味でちょっと感心したが,やや悔しかったのは,鵯記にもそれ以前のメモにも何度か書いてきたI=PATのAを分割するアイディアを先に書かれてしまったこと(6.5 Extending the Ehrlich-Holdren relation)。まあ分割の方法が違うし,この著者たちは時間に注目していないから,まだぼくのアイディアを論文にすることはできるが。ちなみに本書の前書き(Foreward: A challenge for human evolution)は,そのPaul R. Ehrlichが書いていて,"Human ecology is now the most important discipline in both the academic an political worlds, since humanity is on a straight course toward a likely collapse of civilization (Ehrlich and Ehrlich, 2013)."と勇ましい。ちょっと「統計学が最強の学問である」みたいに気宇壮大だが,しかし真面目な話,現代のいろいろな問題にaddressするのに人類生態学的な考え方は必要だとぼくも信じている(とくに公衆衛生の実務家は人類生態学を学ぶべきと思う)。
EOS M10
ぼくはマイクロフォーサーズの軍門にくだってしまっているので手を出せないが,EOS M10っていいなあ。
多項ロジスティック回帰
院生から多項ロジスティック回帰分析をしたいという相談を受け(厳密に言うと,アウトカムが3水準のカテゴリで,3水準以上のカテゴリからなる要因について,リファレンスカテゴリに対しての各アウトカムのオッズ比を,他の変数の影響を調整した上で得たいという相談だったが,たぶん素直に考えたらこれだろう),共立出版の「Rで学ぶデータサイエンス」シリーズに入っている,藤井良宣『カテゴリカルデータ解析』を貸して,第6章を読んで真似してみたら? とアドヴァイスしたのだが,6.5にあったのはnnetパッケージのmultinom()関数を使うやり方で,オッズ比を求めるのが若干大変かもしれない。他のパッケージと比べたページを見たところ,VGAMパッケージのvglm()関数を使うのがわかりやすいと思った。とくにこのページは参考になると思う。ということで,以上の情報をメールで伝えた。
帰途は『身から出た唄』を聴きながら『みつばち高校生』を読む
そろそろ洗濯しないと着るものが無くなってきたので,今日は早めに帰りたい。実は食材も尽きかけているので,ダイエーで食材を買って直通終バスで帰るとちょうどいいだろう。日曜夜以降,移動中に聴いているのはGoosehouseの竹澤汀さんのソロ新作『身から出た唄』なわけだが,今日の直通終バスでもそれを聴いていた。声も演奏も良いが,竹澤汀さんについて特筆すべきは,曲と歌詞とアートワークの良さである。本作も全部いいが,とくにニューヨーク旅行の経験を元に書いた「ミッシェル」は良くて,「ヴァンガードのジャズが聞こえる」というところは,二人のみぎわさん(竹澤さんとVJOの宮嶋みぎわさん)が出会ったときの様子を想像してニヤけてしまわずにはいられない。帰宅後,ダイエーで買ってきたモヤシと野菜をベーコンと一緒にオリーブオイルで炒め,レトルトご飯を電子レンジ加熱したものに合わせて晩飯を済ませた。『身から出た唄』をBGMに,ベーコン野菜炒めを食べながら,森山あみ『みつばち高校生:富士見高校養蜂部物語』リンデン舎,ISBN 978-4-86113-391-6(Amazon | honto | e-hon)を読了。諏訪地方にある富士見高校で,とてもアクティブな一人の生徒が思い立ったことがきっかけで,その生徒の情熱に答えてサポートしてくれた周囲の人々(熱い顧問の先生はもちろん,一緒に部を作ってくれた仲間たちや,地域の農家や各地の養蜂の先人たち)に助けを借りてできた養蜂部の活動。とくにその最初の3年間にフォーカスし,農業甲子園(本書を読むまでこんなに凄いものだとは知らなかったが,そういえば京都の桂高校による京野菜の復活だか保存だかの話は以前テレビ番組で見たことがあった)で全国最優秀賞をとってしまうまでの話を,テレビの脚本家である著者が関係者からの聞き取りや資料を再構成して再現したルポルタージュであった。やわらかさを表現したかったのか,丁寧語の文章になっているのが若干読むテンポにブレーキをかけるが,内容は素晴らしい。ニホンミツバチの生態とか養蜂について知らなかったことがたくさんあった。この部活動をきっかけに,いのちの尊さや生物間の相互作用,環境の微妙なバランスといったこと,それらがどのように地域社会や人間活動とかかわっているのかといったことに目を向けていく生徒たちの成長にも感動する。Eテレの地域発ドラマにしたら良さそうな題材だが,ニホンミツバチの映像を撮るのが難しそうだな。

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