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【第1462回】 民族衛生学会2日目(2016年11月27日)
- 7:30起床。駒込に移動して9:10から大会2日目。まずは一般口演から。途中,1つの演題で出てきた「MEMスペクトル解析プログラム(Ver.2)」というソフトがどういうものかわからなかったので質問した結果,MemCalc(株式会社ジー・エム・エス)の前身として20年ほど前に北大で開発され市販されていたソフトということだった。FFTの波の数に制約があるという話をされていたが,そこは,新しいバージョンとか他のソフトを使えば済む話のような気がした。
- 教育講演は「衛星で公衆衛生!!」と題して,JAXAの大吉先生による,リモセンデータを公衆衛生に応用する可能性の話。何年か前に東大で向井千秋さんも交えた会議があってJAXAがそこに乗り出すという話を聞いたが,その後の進展がわかって興味深かった。かなり多種類の地球観測衛星が既に打ち上げられていたり,今後打ち上げ予定だったりして,物凄く多種多様なデータが得られることがわかった。既に多くのデータそのものはネットで公開されているそうで,専門知識が必要だが解析に使えるとのこと。GCOM-W/C(水循環/気候変動観測衛星),空間分解能0.1度全球の降水量データが過去10年分とか,ひまわり(静止地球環境観測衛星)は海面水温,エアロゾル,クロロフィルa濃度などいろいろ,GOSAT,ALOS/ALOS-2(陸域観測技術衛星)による森林/非森林分布図,高解像度土地利用土地被覆図(分解能30メートルのものは無償で公開),等々。ALOS-2はレーダー画像をとるので,光学センサを載せた衛星に比べて雲の影響を受けにくい。Google Earthは光学で水域がぼんやりとしかわからないが,同じところをALOS-2で撮った画像だと水域がはっきり濃くわかる。JAXAは環境情報データセットを提供し,公衆衛生の専門家と協定を結んでさまざまな共同研究を推進してきた。ナイジェリア・カノ市におけるデジタル標高モデルのポリオ調査への活用をWHOと共同研究でやっていたり(ALOS標高データを活用して下水サンプリング点を選定した)。長崎大熱研との共同研究でマラリア発生と環境情報の相関分析@ビクトリア湖周辺(患者数,ハマダラカ数と環境要因のラグ相関をみた。時期がずれているので因果関係もいえるかも? という点が面白かった)。具体的にデータを使うには,リモセン学会での去年の公衆衛生特別セッション「宇宙から感染症をとらえる」で説明した。JAXAは環境情報提供システムを構築している。さまざまな地球観測プロダクトを横断的に入手しやすくする仕組み(串刺し検索・閲覧できるwebシステム)。テキストデータ,グラフ,画像データが得られる。いまは降水量と地表面温度しか入っていないが,そのうちもっと入れる。現在はプロトタイプを公開中。評価向け限定公開なのでIDとパスワードが必要。時間間隔も指定できる。いまのところ動作は遅い。APIは公開していないの? 欠点は,光学センサを使う衛星だと雲によって欠損になってしまう場合があること,用いるセンサによって空間分解能/観測頻度が異なること,空間分解能が高いデータは有償(数キロ四方で何十万円とか,高価)なこと。共同研究も募集しているが,次は平成30年度なので2年後。
- 質疑。地表面温度は雲があるとわからない。エアロゾルも雲があると見えない。観測頻度が高ければ雲が切れた時間が十分な頻度で得られるのでは? とのこと。早期警戒システムみたいなものは? デングの早期警戒システムは現在構築中。これらもプロトタイプができてから公開してチェック。ポテンシャルとしては環境情報がわかっても,人や病気など地上でとれる公衆衛生データの蓄積が乏しいことが限界といえる。公衆衛生のスタンダードなデータを共有して使えるようにしていく必要がある。さっきのプロトタイプについては,APIは今後の課題で行政区名で検索できるようにはする予定,とのこと。欠損データについてはmultiple imputationみたいなやり方で補完してくれないか? 気象は確立しているモデルがいくつもあるので,そういうものの活用も今後考える,とのこと。
- 続いてはランチョンセミナーで,自治医大から女子栄養大に移られた香川靖雄先生の「アジア人の遺伝子多型に対応した最適栄養」という講演だった。最後の方でちらっと触れられた健康寿命の話は,静岡や山梨が長いというからには,国民生活基礎調査の自覚症状の有無を使った結果だから,今日の話の中では身体の栄養よりも心の栄養の話に近いのではないかと思ったが,Sara TishkoffのScience 2015から1976年刊行の本まで幅広く,ご自身が実際にかかわった研究を中心にダイナミックに語られたのは流石だった。冒頭の「栄養学は……」発言にはドキッとしたが。続く一般口演第5セッションでは,高校の養護教諭や保健主事の方が感染症関連情報の収集に大学のサイトはまったく見ていないという話がショックだった。見て貰えればWer-Jは役に立つと思うんだが。最後にポスターセッションがあって,途中からワインを飲みながらの閉会セレモニーのような趣向になったのが洒落ていた。2日間ありがとうございました>女子栄養大の皆様。
- 羽田に移動して飛行機で神戸へ戻った。帰宅後,缶詰のホールトマトと冷凍シーフードを煮込み,途中で青梗菜を加えてスープにしたものと,レトルトご飯を電子レンジ加熱したもので晩飯を済ませた。
- Microsoft R Open,3.3.2は11月23日リリース予定と書かれているまま変わっていないが,まだアップロードされていないし,遅れについてのアナウンスも見つからない(アナウンスを探していて,24日のblog記事で,cowsayというパッケージを見つけた。面白いのだが,日本語環境でやるとバックスラッシュが¥マークになってしまって鶏のアスキーアートが若干間抜けなことになってしまうのが残念)。リリース遅延の理由は何なのだろう?
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