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Little Glee Monster:「5秒で答えて」関連

最終更新:2017年11月17日(金)

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「5秒で答えて」のインタビューはここ参照。

生き抜くための国語と算数のお薦め

このtweetにまとめられているように,リトグリ6人のうち4人が,「こんな事ならもっとちゃんとやっておけば良かった! と思う事は?」に「もっと勉強しておけば良かった」と答えている。

ここでいう勉強は,「ビリギャル」とか「受験のシンデレラ」のような大学受験のためのものではなく,もちろん「下克上受験」のような中学受験勉強でもなくて,「Girls Be Free!」のMVの冒頭,四則演算と国語の能力とある程度の知識があれば生きていけるはずと言っている(たぶんあれはセリフではなくアドリブだと思う)ところから考えると,生きていくために必要な基礎的な知識や考え方を身につけたいということだと思う。

森高千里の「勉強の歌」は,ちょっと近い気もするが,リトグリのいう意味の方が広い気がする。

リトグリはまだ高校生なので,そういう意味なら全然遅くはなくて,国語に関しては自分が面白いと思うものからでいいので読書習慣をつければ,たいていの場合,自然に読解力は伸びていくし,ブログでもいいので考えたことをまとめて書くという作業を続けていれば表現力も伸びていくはず。川端裕人君の『はじまりのうたをさがす旅:赤い風のソングライン』を楽しめるくらいまでいけば読解力は十分と思う。

四則演算プラスアルファという意味での算数・数学は,ある程度読解力ができてから,新井紀子さんの『生き抜くための数学入門』を読むと良いと思う。できたら,この作品に登場するロックな豚のシャウトにメロディーをつけて歌ってくれたりすると面白い。「Rの法則」に出演するときにやってくれないかな。さすがに時間が足りないか。(鵯記1455

涙の沸点がわかると世界が豊かになる

昨日メモした「Girls Be Free」のMV絡みで,勉強することの意義について若干追記しておくと,いろいろなことを知っている方が世界が豊かに感じられる(それゆえ,それだけ人生が楽しくなる)というのも大事なポイントかと思う。

そういう意味で,当該MVに約4ヶ月前に付けられたb4itis2lateさんの涙の沸点についての考察コメントは,化学で習う,沸点上昇Δtが溶液の質量モル濃度に比例するという原理を使っていて大変面白い(計算自体は,塩分濃度と沸点上昇の比例関係しか使っていないので,小学校5年の算数だが)。

少し丁寧に説明しておく。まず,平たく言えば「何か(=溶質)が溶けている液体(=溶液)の方が溶かす前の液体(=溶媒)より沸点が高い」沸点上昇という現象がなぜ起こるのかについては,この解説が詳しい(これを理解するのは理系の大学生でも難しいと思うし,ちゃんと習ったことがある人は世の中でも少ないと思うが,目からウロコが落ちる説明だった)。大事なポイントは,溶けている粒子が多いほど直線的に沸点が上がることである。これを固い言葉で言い換えると,沸点上昇は溶液の質量モル濃度に比例するという。

高校で習うのは,沸点が何度上昇するかは,溶質の種類に関係なく溶液の質量モル濃度に比例するということだ。

モルというのは物質の量を示す尺度の1つで,すべての物質が分子からなっていると考えると,分子1個の重さは種類によって違い,それに基づいて分子量が決められているので,分子量の値にグラムを付けた重さが1モルと決めたものである。逆に言えば,どんな物質でも約6.02×1023個(1023は10を23回掛け合わせるという意味)集めると1モルになる(この個数をアボガドロ定数と呼ぶ)。例えば水ならば酸素原子1つと水素原子2つからなり,酸素の原子量は16,水素の原子量は1なので,分子量は18となって,水1モルは18グラムである。塩はほぼ塩化ナトリウム(普通に入手できる食塩には他の物質も不純物として混ざっているが)なので,塩素の原子量が約35.5,ナトリウムの原子量が約23であることから計算すると(このように計算で求められる分子量は式量と呼ばれる),58.5である。従って,塩1モルは約58.5グラムとなる。0.1モルなら5.85グラムであり,完全に比例する。

質量モル濃度とは,溶媒1キログラムに対して何モルの溶質を溶かすかを示す濃度で,例えば水1キログラムに対して分子量が約180であるブドウ糖(C6H12O6なので,12×6+1×12+16×6=180)を180グラム溶かすと1 M (1 mol/kg)となる。半分の90グラム溶かせば0.5 Mである。ただし,塩水では,塩を水に溶かすとナトリウムイオンと塩素イオンにほぼ100%分かれる(電離する)ことを考えなくてはいけない。つまり,塩化ナトリウム58.5グラムを1リットル(1000グラム)の純水に溶かすと,ナトリウムイオンの質量モル濃度も塩素イオンの質量モル濃度もともに1 Mとなる。沸点上昇を考えるときは溶質の種類に関係ないのだから,溶けている粒子の数として,これらを合わせた値を考えれば良い。つまり溶かす食塩の量に対して,できる溶液の質量モル濃度は2倍と考えれば良い。

そこで,沸点上昇をΔt (K),質量モル濃度をm (M)とすると,溶媒ごとに決まった比例定数で比例するのだから,この比例定数をkと書くことにすれば,Δt=km(右辺のkmはkとmを掛けるという意味)で沸点上昇が何度かわかる。溶媒が水のとき,溶質が何であってもkは0.52であることがわかっている。 つまり,この式は,1 Mの溶液ならば0.52 Kだけ沸点が上がることを意味する。

ちなみにKは絶対温度で,エネルギーがなくて分子がまったく動かない状態での温度を0K(なので,それより低い温度は原理的に存在しない),1気圧で純水が凍る温度(0℃)を273.15Kとする,とケルビンが提案した尺度だ。華氏温度(F)と違って,摂氏温度(℃)との関係は273.15大きくなるだけ(1度の幅は同じ)なので考えやすい。物理や化学で温度を扱う場合,たかだか水の凝固点に過ぎない0℃よりも0Kを基準にする方が確かな基準なので良く使われるが,0.52 K上がるというのは,0.52℃上がるというのとほぼ同じことになる。

b4itits2lateさんが書かれている塩分濃度の単位である%は,化学では質量パーセント濃度(重量パーセント濃度ともいう)で,0.9%食塩水というと,塩水の重さのうち0.9%が塩で占められていることを意味し,厳密には0.9wt%と書く。つまり,塩0.9グラムを水に溶かして100ミリリットルにしたもの(9グラムを水に溶かして1リットルにしたものも同じ)の濃度を示す。よく考えると,1000グラムよりわずかに少ない水に9グラムの塩を溶かして1リットルになるはずだから,重さは1009グラム弱になると思われるが,9/1009は0.00892くらいなので,0.9%だろうが0.89%だろうが涙の塩分濃度としてはどちらでも大差ないだろう。けれども,調理の時に5.8%の食塩水といったら,普通は水1リットルと塩58グラムを別々に用意して混ぜる「水重量の5.8%の食塩を添加すること」を意味すると思う。ちなみに,この食塩水の質量パーセント濃度を計算すると,58.5/(1000+58.5)は0.0552くらいで,約5.5wt%となる。しかし質量モル濃度は溶質のモル数を溶媒の重さ(溶液の重さではなく)で割った値なので,実は調理の「水重量の何パーセントの食塩を加える」考え方と完全に比例する。「5.8%で0.5℃」の出典が調理本ならば,この塩分濃度は,沸点上昇と比例する質量モル濃度とも比例すると考えてよい。憶測だが,たぶん,「1 Mの食塩水≒5.8%の食塩水」で,「0.52℃≒0.5℃」という説明なのではないだろうか。ただし実は水重量の5.85%の食塩を溶かすとナトリウムイオンと塩素イオンが電離するため,できる溶液の質量モル濃度は2 Mと考えるべきで,0.52℃の2倍,1.04℃上がるはずだ。だから,大雑把に言っても「5.8%で約1℃」と考えなくてはいけないが。

これでやっと準備が整った。

仮に涙が0.9%食塩水だとすれば,9グラムの食塩を1000グラムの水に溶かした濃度とほぼ同じと考えられる。58グラムの食塩を1000グラムの水に溶かした溶液で約1℃上昇するなら,Δt=kmから,1=0.52×mで,この溶液の質量モル濃度は1/0.52≒2 Mと言えて,9:58=?:2と立式すれば,?は9×2/58という小学校5年の算数で約0.31とわかるので,これに0.52を掛ければΔt≒0.16となる。従って,涙の沸点は100℃+0.16℃=100.16℃となる。

ただ,Epidemilology: An Introduction的にいえば,海抜ゼロメートルというか1気圧において,という制約をつけなくてはいけない。Epidemiology: An Introductionに例示されているように米国のコロラド州デンバーにいけば水の沸点が100℃よりずっと低いので,涙の沸点も100℃より低くなるはずだ。ボリビアの事実上の首都ラパスならば富士山頂レベルの標高だからもっと低くなる。

もっとも,大気圧と沸点の関係を示す蒸気圧曲線は,その名の通り直線でないから計算が難しいので,とりあえず大気圧が1気圧の条件で考えて,比例計算だけで済ませるのが普通だと思うし,今回のネタについては適切だと思う。

ただし,上記考察でも使ったように,水のモル沸点上昇は0.52 K・kg/molなのだけれども,涙の成分は変化するし個人差もあるし,ちゃんと計算しようとすると意外に難しい話になるかもしれない。たとえば,人工涙液のうるるバランスに容量濃度で示されている成分で計算すると,だいたい0.4Mくらいなので,100+0.52×0.4で約100.2℃という計算になる。

b4itis2lateさんは「永遠に」のライブ動画への詳細解説コメントも読み応えがあったので今後もそういうマニアックなコメントを期待したい。(鵯記1456

多角的な見方ができるようになると自他共に得をする

昨日,一昨日に続いて勉強することの意義をもう1つ書いておく。それは,物事について多角的な見方ができるようになり,無駄な争いを避けたり,問題の解決策を思いつくことができるということだ。

その意味で中学生や高校生にお薦めしたい本が,鄭 雄一『東大理系教授が考える道徳のメカニズム』(ベスト新書)で,鄭君がお子さんの問いかけに答えていくという体で書かれているので,文章自体は平易で,中学生でも読めると思う。書かれている内容を完全に理解できるかというと別問題だが,たぶん日常的に人間関係などに悩みをもっている中学生や高校生にとっても救いになるのではないか。少なくとも幸田文を読んでいるmanakaならば読みこなせるんじゃないかなあ(鵯記1457

中島みゆき『前途』に入っている「Nobody is right」という曲が,ゴスペルクワイア風に始まって最後もそういう感じで終わるので,リトグリがカバーしたら良いだろうなあと思うのだが,歌詞のテーマがまったく上記の鄭君の本と重なるので,「Nobody is right」を聴いて共感した方にも一読をお薦めする。この視点をもてれば,無駄な争いをすることは避けられると思う。

2017年秋にリトグリが発表した,初のメンバー作詞によるシングル曲「明日へ」の中に,「正しさなんて 一つになる日は無い」という歌詞があって,たしかmanakaの作詞だと何かに書かれていたと思うが,まさにこのポイントにアドレスしていて素晴らしい。そこで生じる相克を乗り越える方法は,鄭君の本に書かれている第二の掟が相対的なものであって,第一の掟の方が本質なのだから,「我々」には理解不能な「彼ら」という存在を自らの内側に作り出すことは止めて,「同じ人間」という視点を共有することしかない。そこに気づくためにも鄭君の本は万人に読んで欲しいと思う。

これは実は,上橋菜穂子さんのファンタジー大作『精霊の守り人』の大きなテーマの一つでもある。大河ドラマ版では2017年11月末から放送される第3シリーズでクローズアップされるはずなので,リトグリファンの若者にも見て欲しいところ。

人の顔を覚える能力

tkhr_LGMさんが呟いている通り,確かにリリースイベントの特典会などで,リトグリのメンバーがガオラーの顔を覚えているという話は良く目にする。

数十人しか来なかった頃ならともかく,今では何千人も何万人もいるファンの顔を全部覚えているとは,常識的には考えられないのだけれども,世の中には1%くらいの確率でそういう能力をもっている人がいるそうだ。スーパーリコグナイザー(super recognizer)として最近研究が進んでいて,PubMedに収録されるような論文も普通に出ているその能力があると自ら言っている人もweb上に大勢見つかる。

ぼくはソロモン諸島やパプアニューギニアの村で調査をすることが多いのだが,2度目に行ったときに向こうは覚えているのにこっちは覚えていないということが珍しくない(村人にとっては滅多に来ない外国人1人を覚えるのは難しくないし,だいたい語り草になるので記憶が常に更新されているのだけれども,こちらは短期間で何百人にも会うので覚えにくいし,日本に帰ってくると忙しすぎて偶にしか調査地の村の記憶を甦らせることがないので,2年も経ってしまうと忘れてしまいがち)。それで,最近は健診に参加してくれた人はデジカメでポートレート写真を撮っておき,健診結果とともに調査地でプリントして本人に返すことにしている。こうやって全員の写真を撮っておけば,何度も見直すことができて記憶を更新できる。しかしこれだけ努力しても,なかなか覚えていられない。 そういう立場からしてみれば,スーパーリコグナイザーの能力は,フィールドワーカーとしては羨ましい限りだ。

もっとも,芹奈の能力がスーパーリコグナイザーだと決まったわけではなくて,ツーショット写真を撮っているわけだから,もしかしたら,ぼくが調査地の人々の顔を覚えようとするのと同じような努力をしているのかもしれない。さて真相は?


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