Latest update on 2021年7月4日 (日) at 18:43:39.
宿題の締め切り日なので原稿を仕上げなくてはいけないが,明日には庭木の手入れをしてもらうことになっているので,その前に草刈りを完了しておかねばならない。
妻は仕事に行ってしまったし,娘は大学で勉強するというので,ぼくは自分のペースで,この2つの仕事を済ませるのが今日のミッション。
ゲス乙女・川谷絵音氏のtweetで批判されている「知らないというマウントの取り方」は,たぶん多数派であることが正しいという盲信と関係あると思う。
Robert Sapolskyの"Behave: The Biology of Humans at Our Best and Worst" (Vintage,2017年)は,ヒトの行動を非常に広い視野から多角的に説明しようとする面白い本だ。同書では,現代社会の分断をUs vs ThemとかUs-Themingと呼んでいる。
TAP the POPの記事にも書いたが,社会における分断が生まれる原因の一つは,世の中に溢れる情報がヒトの合理的な情報処理の容量を超えてしまったために,直感や先入観に基づいて注目すべき情報を限定し,過去に上手くいった行動パタンを選択するという行動をとる人が多いことにある。
この傾向は認知バイアスと呼ばれる。詳しくは笹原和俊『フェイクニュースを科学する:拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(化学同人,2018年)に書かれているが,インターネット,とくにソーシャルメディアの発達によって起こった情報量の爆発的増大が,この傾向を加速したことは間違いないだろう。
『フェイクニュースを科学する』に紹介されている,Salganik MJ, Dodds PS, Watts DJ (2006) Experimental study of inequality and unpredictability of artificial cultural market. Science, 311: 854-856. (pdf)は,無名のアーティストの知られていない曲を自由にダウンロードできるようにし,ダウンロード数によって人気を測るという社会実験であった。
ランキングがなければどの曲のダウンロード数もランダムなばらつきの中に収まるのに,ランキングとしてダウンロード数が参照できる形になるだけで,ランキング上位の曲のダウンロード数が増えてヒット曲が生まれるという結果が出ている。
おそらく,”Us”としての自分が属する社会集団のまとまりを強くしたい欲求が,「みんなが知っている」ものは知っておきたいので,ランキング上位の曲をダウンロードするという行動につながったのだろう。
この結果は衝撃的で,ランキングを操作すればヒット曲は作りだせるという可能性が示されてしまった。
Billboard JAPANは,この論文が発表された翌年である2007年夏から本格的に日本でのランキング発表を始めたが,ファンがストリーミング回数を操作して,好きなアーティストの新曲を上位に押し上げることが売り上げを伸ばしている可能性があるという指摘もあり,ファン以上にプロデュース側にランキング操作のモティベーションが生まれても不思議はなく,そのように大量の広告費を使って作り出されたヒット曲が,実際にいくつかあるのではないか。
この傾向がさらに進むと,冒頭に書いた,多数派であることが正しいという盲信,裏返すと,無名なものは無価値という錯覚につながる気がする。さらにこれが道徳次元2のマジョリティによく見られる「仲間内だけを大事にする」傾向と組み合わさると,「知らないというマウントの取り方」をしてしまう人が出てくるのではないか。
5月5日にはKOBE JAZZ WALKがあると先日書いたが,同日夜に『アンフォゲッタブル』の著者松宮宏さんのトークショーと,同書に描かれているジャズの演奏からなるイベントが板宿の井戸書店で行われると知った。歩いて行ける場所で,こんな素晴らしいイベントがあり,とくに予定が入っていない以上,行かないという選択はありえない。
5月5日はジャズ三昧と洒落込んでみるか。
草刈りをしながら野球中継を聴いていたが,ドラゴンズはタイガースの青柳投手に完封負けであった。
初回と2回,青柳投手のコントロールが定まらなかったときに,四球でノーアウト1塁となったとき送りバントという戦略(2回の高橋周平選手はバントできずに内野ゴロダブルプレーという最悪な結果となったが)が失敗だったと思う。東海ラジオで解説者も言っていたが,あそこはじっくり攻めて連続四球とできれば,序盤で青柳投手を崩すこともできたような気がする。あとは,最終回にビシエド選手がど真ん中の失投(CBCラジオの解説者による表現)を見送り三振してしまったのも痛かった。明日からまた仕切り直しだな。
Case Fatality: Rate, Ratio, or Risk? : Epidemiology, 24(4): 622-3, 2013.は,ぼくが2010年に講義資料の脚注5に書いたのと同じトピック。proportionでなくriskにすることでCFRというacronymを維持しているので若干違うが,この内容でEpidemiologyに載るなら,もう少し議論を敷衍して英文で投稿しておくんだった。
母の年齢と流産リスクの関連についての新しい論文がBMJに掲載されていた。オープンアクセスなので,後でちゃんと読もう。
中山さんのtweetで紹介されている日経の記事は有料契約をしないと読めないが,ここで指摘されているような問題点は,講義でも喋っているが,2015年の機能性表示食品の制度導入時点からわかっていたこと。所掌官庁の消費者庁は,業者宛てにも消費者宛てにも啓発パンフを作っているが,政府というか「アベノミクス」の狙いは消費拡大だったから(参考),こうなることは見えていた。
原稿が仕上がったので送信したのだけれども,あまりにも強く批判しすぎたのでボツになるかもしれない。それはそれで仕方ないような気もする。たぶん掲載しても誰も得をしないし。とはいえ,もし載るなら書評として指摘すべきところはしないわけにいかないので,ある意味では究極の選択。
長野滞在4日目だが,そろそろちゃんとした音で音楽が聴きたくなってきた。長野の家にはパイオニアのアンプとスピーカーがセットしてあり,チューナーもあるので,FMで音楽を聴くとそれなりに良い音はする。けれども,スマホやPCにストックしてある音源は,そこからは再生できない(当然だが)ので,やはり持ち運びできるスピーカーが欲しい。Amazonで検索してみると2000円以下のアンプ内蔵スピーカーはいくつも見つかるのだが(アンプ内蔵スピーカーとしてはハーマン・カードンのエッジが効いたデザインのやつにも惹かれるが,持ち運びには向かなそうだ),それらとは一線を画す凄そうなモノを見つけてしまい,物欲に駆られている。これだとポタアン(これとかこれみたいな)も必要だが,そこはSoundBlaster E5を持ち運べば良いわけだし……と思ったが,よく考えてみたらSoundBlaster E5にはパワーアンプは入っていないのでダメだった。いずれにせよ今回は間に合わないのでイヤホンで聴くしかないが。
ただ,落ち着いて考えてみたら,何日も長野に滞在するときはFMトランスミッターを持ってくれば良いのか。それなら新たに買い物をしなくても大丈夫だしな。FMトランスミッターといえば,これの後継となるようなハードウェアが存在しないのが残念だが,需要がないのだろうか。まあ普通はスマホやPCからaptXで飛ばして,これみたいなBluetoothレシーバーをアンプにつないで再生する方に行くのだろうが。
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