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鐵人三國誌・アーカイヴ

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目次

【第234回】 洗濯と原稿直しと『ニッポニア・ニッポン』(2019年10月26日)

土曜の朝

6:45起床。だいぶ肌寒くなってきたので,扇風機と電気ストーブを入れ替えた。洗濯かごが一杯になったので,浴槽に湯をためて入浴し,残り湯を使って洗濯機を回しながら朝食。

今日はホームカミングデーとのことだが,とくに出席は求められていないので,昨日の続きの発注処理,来週月曜と木曜の講義準備,原稿直しをする予定。

『ニッポニア・ニッポン』

15:30までで月曜の講義準備は完了したので,元町映画館へ行って,『ニッポニア・ニッポン:フクシマ狂詩曲』を見た。

初日だったからか,監督がいらしていて,終演後にパンフレット購入者にはサインをしてくれて,さらにトークセッションのようなものがあったのはラッキーだった。

(※以下,ネタバレを含むので,予断を持ちたくない方はスキップされたい。また,記憶に頼って書いているので,間違っているところがあるかもしれないが,ご容赦されたい※)

トークセッションの参加者全員が感想を尋ねられたので,ぼくは,情報量が多くてまだ整理できないが,イメージの奔流が筒井康隆の「パプリカ」みたいだったと答えた。室町当初の百鬼夜行というイメージでの聖者の行進(元々黒人の葬式の曲)ならぬ亡者の行進アニメーションや,Jazz大名を意識されたという音楽,chaoticな山下教授宴会シーンもまさにそういうイメージ。宴会シーンの曲が五万節の替え歌から入るので,高校生の頃よく見ていたクレージーキャッツ映画を思い出した。高度経済成長期の脳天気さが,狂ったこの国を今でも覆っている,ということかとも思った。歌詞的には暗黒大陸じゃがたらの家族百景に入っていたジャパーンフィクサーよっしゃよっしゃというフレーズとか,RCのカバーズを思い出した。

監督は岡本喜八監督のお弟子さんで,「日本の一番長い日」はヒットしたが岡本監督自身は自分はこれではないと思って作った映画が「肉弾」で,この映画はその「肉弾」を意識しているとのこと。3.11と原発事故の描き方として庵野監督の「シン・ゴジラ」は「日本の一番長い日」で,この作品はその裏側だそうだ。ゴジラ=核を凍結して終わりとか,そんな簡単じゃ無いぞという。

監督はもう1つこだわりがあって,人と人の関係のドラマツルギーではなく人とシステムの関係を描きたかったという(もっとも,主人公がドイツのアウトバーンで事故死した息子の妻だったと思われるハルカ=放射線への怒りを顕わにする医師とともに子供病院のようなところの院内保育園のようなところで保母のようなことをしている=と同居していて,寺で座禅を組むに至るシーンや,幻の少女を海まで見送りに行く少年にハルカが付き添っていくシーンは,人と人の関係性の話だったと思うが)。

「この世界の片隅に」の片渕監督と阿佐ヶ谷のご近所さん。だからトキのキャラデザインがのんなのか(エンドロールで「のん」と出てきて大変驚いた)。

主人公(何度か見たことはある俳優さんだが,トークショーで言われるまで,黒澤映画『影武者』で織田信長を演じた方で,『乱』ではコーディリアに当たる三男を演じた方だとは気づかなかった)は最初から状況に巻き込まれていく存在で,挙げ句の果ては調子に乗った部下が運転するハーレーの後部座席に乗っていたせいで交通事故にも巻き込まれるなど(しかも本人は全治1ヶ月の重症を負ったのに,運転していた部下はかすり傷という),意図的に能動性を無くしているような気がする。その主人公が宴会の差配を任せられ,乱痴気騒ぎを見せられているうちに,ついに「これじゃダメだ」と抵抗の声を上げるのだけれども,その怒りを肯定しつつも,この国はそのようになっている,と語る寺田農演じる「助役」(これがまた,高浜町の地域ボスで関西電力と自民党議員に巨額の贈収賄を差配した「助役」を思い出すと凄い設定だが)の語りから再び亡者の行進に戻ってエンディング。

ここには書かなかったことも含めて情報量が多く,余韻が凄い作品だった。一度見ただけでは整理しきれないな(800円のパンフレットも凄いので,絶対に買うべき)。反核作品として「みえない雲」のようにストレートに悲劇を描くのでもなく,「東京原発」のように正面からリスクと闘うのでもなく,主人公の叫びが何かを変えるわけでもないので,宮崎駿映画のようなカタルシスもないが,確実に何かが残る映画だったと思う。朝食をバクバクとテンポ良く食べ,巨大なお握りを抱えて牛乳を1リットル瓶から一気飲みする,主人公の娘と思われる海も,この登場シーンのインパクトも大きかったが,何か不思議な軽やかさと強さを感じさせる存在で,妙に印象に残っている。原子炉に絡むタコとか,掌の上の奇形のシジミチョウが美しく変わって飛び去るところとか,鮮やかな印象に残るシーンが多く,映画でないとできない表象だったのではないか。元町映画館では1週間しか上映がないので,神戸在住の映画好きは急いで見に行くべし。

企画倒れ

LIFEで食材を買って帰宅後,晩飯を食べてから原稿直し,の前にメールチェックと思ったら,面倒なメールが何通も入っていたので原稿直しができない……。

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