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【第482回】 自宅待機(2020年8月19日)
- いったん7:00に起きたが二度寝して9:30起床。76.75 kg。
- 今日は神戸大学に爆破予告があったため基本的に全教職員自宅待機ということになっている。悪戯だと思うが,最近全国の大学に似たようなことが起こっているらしい。早く犯人を逮捕して欲しいのだが,難しいのだろうか。
- 昨夜のTBSラジオ「アフター6ジャンクション」で川端君が瀬名秀明 押谷仁 五箇公一 岡部信彦 河岡義裕 大曲貴夫 NHK取材班『ウイルスVS人類』(文春新書)を紹介していたのでKindle版を即購入し,読んでみた。元になったBS1スペシャル『ウイルスVS人類』シリーズの第1回と第2回は見ていたが(見逃した人は,それぞれNHKオンデマンドで視聴できる。例えば第2回はここで,単品220円で72時間視聴可能),瀬名さんが書き下ろされた第3部が興味深く,総合知の重要性には「共感」した。
- 科学的根拠が明示されない日本の感染症対策の咎【対談】西浦博・京都大学大学院教授×森田朗・NFI代表理事(前編)(JBpress,2020年8月19日)。内側からみると,分科会はリスク評価組織のままリスク管理組織の下に位置づけられたのではなくて,リスク管理組織になったという認識なのか。しかし,リスク管理組織はあくまで財源と権限をもっている対策本部だ。対策本部から財源保証もつけて全権委任されたのではない限り,分科会はリスク管理組織とはいえないと思う。組織としても立場としても体よく対策本部に取り込まれてしまったというのが実態だろうし,西浦さんがこの認識だということは,分科会座長の尾身先生も,そうやって納得させられたのだろう(とくに,座長という立場上,さまざまな意見の集約を語らねばならないし)。西浦さんは,「リスク管理や政策の決断に関しては政治家の人にやっていただかないといけないということを、専門家は相当意識しています」とも言っているが,分科会がリスク管理組織であるならば,尾身先生は政治家の役割を果たさねばならないことになり,矛盾が起こってしまう。アドバイザリーボードがリスク評価組織として残ったという説明だが,厚労省のこのページをみれば(確かにリスク評価組織ではあるのだろうが),情報発信の頻度からしても量からしても,手足を失った専門家会議という感が否めない。結局,組織改革によって起こったことは,政治家が責任だけ専門家に押しつけながら,行動を政治家の制御下に封じ込めたことで,これまでにも何度も書いた通り,リスク論的にはまったくの愚行としかいえない。もう一点,及び腰過ぎると思うのは,予測を示すことも管理に踏み込んでしまうことになるという認識で,確かに「接触を8割減らしてください」と「要請」したら管理に踏み込んでいるが,「8割減らせば1ヶ月で新規感染者数を制御可能なレベルまで落とせる可能性が高い」という予測を示すことは管理ではないし,「何も対策しなければ死者42万人」という計算を提示することも管理ではない。それを管理だと誤解するのは色を付けるメディアやリテラシーが足りない受け手側の問題であって,計算結果の提示などの,評価情報の提供は管理ではない。インペリグループがさまざまな情報やモデルやシナリオに基づいた予測を含むReportを次々に公表しているのも,リスク評価であってリスク管理ではない。西浦さんは,「実効再生産数が、たとえば東京で1.4ですという時には、リスクの高い場所での全接触のうち30~40%の接触を減らすと、実効再生産数が1を割るということにつながります。でも、そうやって言及することは、対策、つまりリスク管理の方の話になってしまうので、専門家がどこまで入り込んでいいのかという葛藤をずっと抱えながらやってきました」と語っているのだけれども,Rtが1.4の時にリスクの高い場所での接触を3-4割減らしたらRtが1を切るという予測を示すことは,3-4割減らしてほしいという要請ではないので,管理ではない。講義資料に書いたように,さまざまなシナリオに基づいた予測を示すことはリスク評価であって,そこから意思決定するのが国民や,国民の意思を代表することになっている議員なので,評価情報の提供を控えることは誰の得にもならない。たぶん,今後は,予測の提示は論文という形でやります,という意図な気はするが。なお,西浦さんが「実効再生産数を計算できるダッシュボードの近日公開を目指しています。市町村等が自分のデータを使って最新の実効再生産数が分かるサイトです」と言われるのは,柏野さんがやっている仕事だと思うが,データの集約は保健所レベル以上でないとできない気がするので,政令指定都市や中核市を除けば都道府県単位で行われるのが現実的と思う。各都道府県の保健統計部門のルーチンに組み入れられたら良いのだろうから,そのために専従の職員を雇ったら良いと思うが。
- 岸田さんのこのtweetは示唆に富んでいて,中でも秘密が困るので,それを避けるためには,感染症法の前文に「我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要」と明記されているように,運悪く感染してしまうことは誰にでも起こりうるのだから(一緒に食事に行ってマスク無しで対面で喋ることを完全に防ぐとか,どこかに触ったら自分の顔や口に入るものに触れる前には確実に石鹸手洗いかアルコール消毒することを1年も2年も常時続けることは,普通の人には不可能だから,感染防御行動を頑張ってリスクを下げることはできるがゼロにはできず,誰でも知らないうちに罹っている可能性があることを前提にするしかない),感染した人が責められたり謝罪を求められたりする風潮は廃さねばならない(既に良く言われていることだが)。もっと言ってしまえば,すべての人の道徳次元が4ならば,すべての情報は完全公開でも問題ないはずだが,それは非現実的か。
- BMJのEditorialで,Shimizu K et al. "Resurgence of covid-19 in Japan"(2020年8月18日)が出ていた。著者の所属はLondon School of Econmics and Political ScienceとLondon School of Hygiene and Tropical Medicineとか東大国際保健政策とか。日本ではcovid-19が再流行し,Rtが1を超えた状態が2ヶ月続いていると書き起こし,これまで日本でとられてきた対策について,当初のクラスター対策は拡大抑制の助けになったが,3月中旬以降の感染拡大を防ぐことには失敗して4月の緊急事態宣言に至り,西太平洋地域ではオーストラリアとフィリピンに次ぐ人口当たり死者数(百万人当たり8.22)という結果になったと書き,何が悪かったのかを検討している。政府に説明と透明性が欠けていたこと,専門家会議に独立性が不十分かつ必要な専門性の代表性が不足していたことによってメッセージが歪められたこと,検査の不十分さ,効果的な接触追跡・隔離・検疫ができていないこと,PPEなどの物資調達の弱さなどを指摘し(それらを強化してデジタル技術を含む効果的な接触追跡・隔離・検疫・無症状者を含む検査を行うことが必要と述べ),政府が"cluster based countermeasures"から上述の必要な対処法へ移行し,遺伝子配列やビッグデータ解析のような先端科学を利用しない限り,日本の保健サービスは再び逼迫し多くの命が失われると述べている。うーん,大筋は間違っていないが,一つ間違っているのは,当初政府が三密回避ばかり言っていて対人距離をあけることや手洗いや在宅や保健システムを守ることの重要性が十分に伝えられてこなかったというくだり(当然ながら引用もないので,著者らの印象なのだろう)。専門家会議が三密回避を言い出したのは2月末からで,1月から手洗いやマスクは推奨されていた。一方,専門家会議が進めてきた「クラスター対策」は三密回避だけではなく接触者追跡も含むし,デジタル化を含む接触者追跡能力の拡充の必要性は3月半ばには悲鳴のように主張していた。政府がそれを採用せず金も人も出さずに行動変容要請だけしてきたのはその通りだが,それは"cluster based countermeasures"にさえなっていないと思うがなぁ。
- 神戸大学の公式サイトによると,予告時刻を過ぎても何も起こらなかったとのこと。やはり悪戯だったか。
- ドラゴンズは11-2で圧勝。ビシエド選手絶好調。福谷投手も先発として完璧に甦った。でもまあ,ここまでの点差がついたのは,スワローズに序盤に守備のミスが重なったことが大きいと思うが。
- 院生からの相談や後期対面科目関係のとりまとめ要請などへのメールの返事を打っていたら2:00を過ぎてしまったので眠る。
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