Brauner JM et al. "Inferring the effectiveness of government interventions against COVID-19"(Science, 2020年12月15日)は,1月22日から5月末までの欧米を中心とする41ヶ国の各国政府のNPIsによる介入(日本は解析対象に含まれていない)の有効性を,ベイジアン階層モデルで統計解析し,感度分析もした結果,学校閉鎖と10人以上の集会禁止のRt減少効果が大きかったのに対して,それに加えて在宅命令を出してもRtはそれほど低下しなかったと結論している。インペリグループReport 9のシミュレーションとは異なり,学校閉鎖単独でも効果が大きいという結果が出ているが,考察の中で,学校閉鎖が人々にもたらした警戒感による間接効果なのか学校閉鎖自体の直接効果なのかを区別することはできないし,解析対象にしたデータでは小中高校の閉鎖と大学の閉鎖が同日に行われた場合が多かったので,その効果の区別はできないし,幼稚園保育園についてはわからないと論じている。結果が施策実施の順番の違いに左右されないかとも思ったが,感度分析でもロバストだと言っているから良いのか?
The Lancet "Science during COVID-19: where do we go from here?"(LancetのEditorial,2020年12月19日)は編集委員の誰かではなくThe Lancetという名義で書かれている。確かにCOVID-19のパンデミックは科学のあり方に大きな影響を与えた。世界規模の研究協力やオープンデータによって物凄い速さで研究が進んだことを踏まえ,次世代の科学が「ここからどこへ?」という問いかけは,希望を含んだものと思われるが,それを進展させるのが我々の責任である,という結語は重い。