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【第982回】 fmsbをアップデートしたい(2022年3月1日)
- 8:20起床。寝坊した。83.25 kg、97%、36.8℃。
- 今日は会議がないので、fmsbのアップデート作業をしたい。
- Hart WS et al. "Generation time of the alpha and delta SARS-CoV-2 variants: an epidemiological analysis"(Lancet Infectious Diseases、2022年2月14日)は、西浦さんが2022年1月13日のアドバイザリーボードに提出した資料の1ページ目に、プレプリントサーバにアップロードされている未査読論文としてリンクしているHart et alが、査読を通ってpublishされた論文。UKHSAの前向き世帯追跡データに数理モデルを当てはめ、2020年12月から2021年5月までは優占していたアルファ株が減ってデルタ株優占になったことを(2021年12月にはオミクロン株優占に変わったが)、それぞれの株の世代時間を推定して、その違いで説明している。平均内的世代時間[mean intrinsic generation time]がデルタ株で4.7日(95%信用区間[credible interval]が4.1-5.6日、以下括弧内は同様)と、アルファ株で5.5日(4.7-6.5日)より短く、平均世帯内世代時間[mean household generation time]がデルタ株で3.2日(2.5-4·2日)、アルファ株で4.5日(3.7-5.4日)と28%短い、とSummaryにある。方法論の詳細は読んでみないとわからないが。
- 接触追跡は日本の感染研もやっているので観察データに基づく発症間隔の推定はしているし(例えばオミクロン株についての推定、2022年1月31日や、沖縄県におけるSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)症例の実地疫学調査報告(続報)、2022年2月18日)、家庭内二次感染率の推定もしているが、こういう世帯単位で協力を募って前向き追跡するようなことはしていないのか、Rtの推定に必要な世代時間については(発症間隔と大差ないとして発症間隔で代替することも良く行われてきたが)海外のデータを使っているようだ。それにしても感染研の新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況等(2022年2月24日現在)からリンクされている感染状況分析・評価グラフ等を見ると、沖縄に再増加の兆しがあるのに蔓延防止を2月21日で解除してしまったことは暴挙だったと思うが、それ以上に検査陽性割合があり得ないほど高い(報告遅れと見なし陽性によって100%を超えている)県がいくつもあるのが目に付く。とくに神奈川の150%超は酷い。これでは日毎の新規確定患者数の数字がまったく使い物にならない。
- Little Glee Monster『Your Name』の初回限定盤が届いたが、Amazonはなぜあんなに大きなダンボール箱で送ってくるのだろう? まあ、BDのライブも含めて視聴は夜だな。
- ECDCの"Communicable disease threats report, 20-26 February 2022, week 8"からリンクされているpdfファイルに、北京五輪のリスク評価が書かれている。雑に訳すと、「北京冬季五輪は、夏季五輪に比べて観衆も選手も少なかったしオミクロン株の広がりと中国の制圧・予防政策によって観衆は厳しく行動制限されたし、重要な公衆衛生的手段もとられたが、オミクロン株の伝播性の高さとマスギャザリングイベントという文脈から、SARS-CoV-2伝播のリスクは増えた」。まあそうだろう。
- 分担執筆した、『シンプル衛生公衆衛生学2022』南江堂、ISBN 978-4-524-23156-0(Amazon | honto | e-hon)が届いた。自画自賛だが、この盛り沢山さで、ちゃんと毎年更新していて、2,400円というのは安いと思う。たぶんそれだけ部数が出ているからできる価格設定なのだと思うが。
- 昨日付でIPCC AR6のWorking Group 2のレポートが公開された。物理化学的側面についてのWG1レポートは昨年8月に発表済みだったが、WG2は気候変動の影響、適応、脆弱性についての報告なので、公衆衛生、国際保健、環境保健といった分野の専門家は必読といえる。もっとも、このページからリンクされているフルレポートは3,675ページもあって簡単に読めたものではないが、プレスリリースとプレゼンテーション資料くらいは目を通しておくべきものと言える。
- fmsbにはKendallの順位相関係数τの信頼区間を求める関数が入っていないが、NSM3パッケージにkendall.ci()として実装されている(と、保健学研究共通特講IV/VIIIのテキストにも記載済みである)。この関数のデフォルトはbootstrap=FALSEで、よく知られているフィッシャーのZ変換を使った簡易推定法(リンク先からダウンロードできる論文? には、サンプルサイズが11から24の場合の、0.99から0.40と-0.10から-0.20まで0.01刻みのτについての80%、90%、95%、99%信頼区間を計算するSPSSコードと表も載っているが)だが、bootstrap=TRUEと指定すれば(B=でシミュレーション回数)ブートストラップ推定もできるというすぐれものだが、欠損値対応していないこと(欠損値を含むデータを与えるとエラーになる)、信頼区間だけ表示されて点推定量が表示されないこと、NSM3はかなり大きなパッケージなので、このためだけに使うには大袈裟過ぎる気はしていた。なので、この際、kendall.ci.spss()という関数も作ってみるか……と思ったら、実は、欲しい仕様のものがDescToolsパッケージにKendallTauB()関数として実装済みなのだった。車輪の再発明をする前に気づいて良かった。
- というわけで、予定したデータ追加と欠損値対応を済ませ、fmsb-0.7.3をビルドしてcranに投稿したら、20:40を過ぎてしまった。これから帰って晩飯にすると太るのだが、かといって晩飯を抜くのも辛すぎるので仕方がない。
- 保健学研究共通特講IV/VIIIの講義資料の順位相関係数のところも更新してから眠った。
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