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【第1490回】 グローバルヘルス合同大会(2023年11月24-26日)
- 6:00起床。ホテルでもテレビ体操。昨夜リンガーハットの帰りに買っておいた握り飯とサラダで朝食を済ませた。
- 歩いて東大に移動し、グローバルヘルス合同大会開始。事前打ち合わせ、基盤Aのシンポジウム、会議など忙しくしているうちに一日が終わった。
- 土曜も6:00起床。テレビ体操。朝食は昨日同様に握り飯2つとサラダ。
- 今日も歩いて東大に移動し、グローバルヘルス合同大会2日目。ポスターセッションと母子保健関連の口頭発表のセッションに参加し、自分が座長をした栄養・NCDのセッションが終わってから鉄門講堂に移動し、保健学同窓会の保健学科70周年記念シンポジウムへ。
- 疫学・生物統計学教室の松山さん、看護の山本さん、人類生態の小西さんが発表された。松山さんはデータサイエンスとして患者レジストリの活用のために開発された、さまざまなデザインの話。trial-ready cohortは世界ではかなり行われているが、日本では少ない。松山さんが関わっているJ-TRC研究はその1つ。POTENT試験で乳がん診療ガイドラインが変わるまでに7年掛かっているが、trial-ready cohortがあればもっと早く結論が出たはず。RWD (real world data)への適応的ランダム化デザインの適用。対照群の類似度をどのように統計学的に評価するかと妥当な併合の仕方が問題。マスタープロトコル試験というのも、もっと使われるべきデザイン。COVID-19に対する複数の薬剤の効果を見るためのプラットフォーム試験としてはACTT試験とRECOVERY試験が有名。すべて製薬会社ではなく大学・研究所がやっている。ARO (Academic Research Organization)はCRO (Contract Research Organization)は別々の役割があり、AROはもっといろいろやるべき。AIは役に立つか? もデータサイエンスのトピック。心不全発症のリスク因子を見つけるため、深層学習を使うなど。統計専門家からはそんなに難しいことをやっているわけではない。データの質と中身がちゃんとわかっているかが問題。医療DXも現在進行中のRWD活用。データは国民の財産なので、データシェアリングが重要(→プライバシーとかセキュリティが問題になると思うが)。山本さんは幸福寿命の延伸を促すケアサイエンスの展開、というタイトル。東大看護のミッション。人が生きることを支える包括的学問=ケアサイエンスと名付けた。地域看護、家族看護、看護管理、老年看護/創傷看護、精神看護、母性看護・助産、高齢者在宅長期ケアそれぞれの分野が、さまざまな研究を展開している。統合を次に考えている。Global Nursing Reseach Center (GNRC)が2017年4月発足、既に基盤事業化している。若手研究者養成。EAFONSのような国際展開・国際アピールも。2025年4月から目白台土地有効活用事業でケアイノベーションのスマートヘルスケアホーム"WAGAYA"、文理融合型ケアシステム地域展開等。隣人にケアの手を差し伸べること(ケアコンピテンシー認定制度、暮らしの保健室)も重要。専門職者のサポートも重要。お金がいるので、「グローバルナーシングリサーチセンター基金」で寄付募集中。小西さんは「人口減少社会におけるヘルスサイエンスの貢献」というタイトルで、環境・生命専修ではなく小西さん自身の研究を中心に紹介。医学の役割(長生きに寄与)とヘルスサイエンスの役割(もっと広い。人々が生まれ、健やかに人生をまっとうし、可能な限り幸福に死んでいくことをサポート)、出生について、TFRが置き換え水準を下回ることを指す少子化は50年以上続いている。対策は1990年代から。「異次元」で数から質へ転換。対策してもTFRは上がっていない。ごく最近はさらに下がっている。なぜ対策しても上がらないのか? が小西さんの問題意識。proximate determinantsの紹介から、それぞれの部分を調査。ARTによる出生が6割を占めればTFRが置き換え水準を上回るが現実的でない。性行動としては性交頻度が低いと不妊リスクが高いデータが出た。「文化的不妊」、加齢に伴う妊娠待ち時間の延長(避妊していなくても)。今後増加する移民の研究も重要。
- 続いて総合討論。自分も手を挙げてあまりにもザックリした質問をしてしまったが、このテーマでは1つのまとまりをもつのは難しいよな。
- 同窓会サロンは途中で抜けて渋谷へ。だいぶ遅れてソフトボール部OB総会に出席。一部復帰したのはめでたい。毎回現役部員の年間活動報告ビデオを見るのを楽しみにしているが、今回も良かった。身体を動かしたくなってきた。終了後、同期とそれより若干若いメンバーと8人で軽く二次会をしてから、殺人的な混雑の埼京線から都営三田線に乗り継いで板橋区に移動し、母と弟が2人で暮らしている家に泊めてもらった。
- 日曜は都営三田線と大江戸線を乗り継いで本郷三丁目に移動し、まずはplanetary healthのセッション(『ワークショップ10 プラネタリーヘルスの使い方』、長崎大プラネタリーヘルス学環とJICAの共同企画)。知保さんは人間の健康と環境の健康を分けて考える話。one healthとplanetary healthは国連の現在の定義ではほとんど同じという話、オリジンは違うので、アナロジー的には収斂進化のような話だなあ。最後の方でポロッと言われた「人類生態学からしたら当然、何をいまさら」ということで語り尽くしている気もするが、これが通じるのは人類生態学者だけであろうなあ。EAT-Lancetとか、カーボンプライシングとか、話は盛りだくさんだったが、むしろ我々人類生態学者は、欧米を巻き込んでムーブメントを作るだけのパワーが無かったということを反省すべきかもしれない。まあタイミングの問題もあるが。
- メールの返事を書くために検索していて、Tomarigiを知った。学生に使ってもらったら良いかもしれない。
- 次は在日外国人医療の口演1のセッションへ。ミャンマー人1件、ベトナム人4件。5題中3題がオンライン調査だったのは、コロナ禍のため。
- 次は栄養のシンポジウムに参加中。最初は厚労省の日下さんによる講演で、健康日本21(第三次)が来年度から実施されるということで、その内容のうちの栄養関連のものが紹介されている。次は栄養士会の中村丁次会長によるアジアに栄養士制度を、という話。エネルギー収支による低栄養と肥満の話だけではなく、ビタミンやミネラルなど微量栄養素まで考えたら三重の問題になる、というところから話し始められたが、これも人類生態学では何十年も前から常識だよなあ。ミネソタ飢餓実験の紹介は、若い人は知らないかもしれない。確かに今では不可能な人体実験。低エネルギー摂取が続くと精神状態も悪化するという点を強調。日本が戦後の国策として栄養改善に取り組んだのは世界でも特異例。焼け跡の何もないところに栄養士が誕生した。100歳の現役栄養士会員(注:いまでも会費を納めているという話には驚いた。名誉会員とか功労会員の制度はないのか?)からの、焼け跡で蛇を集めて蒲焼にしたというエピソード。情報の混乱、フェイクニュースのまん延、といった状況下で、信じられる情報提供者としての栄養士という制度を作った。戦後に制度化されたわけだが、戦前に栄養士養成学校はあった(最初の卒業生は13人)ので、新制度にフィットしたのは良かった。アメリカ小麦戦略の話。世銀からもらった金でアメリカの農産物を買って、栄養教育車(キッチンカー)に栄養士が乗って全国を行脚し輸入食料の普及啓発をした。学校給食は1/3食提供というだけではなく、栄養士を配置して生きた教育媒体となった(注:しかしこれが食文化の破壊でもあったという視点は見事なくらい無視だなあ……)。栄養学者-管理栄養士(RD)・栄養士(DT)-栄養改善ボランティア(食改さんとか)という3層構造がうまくいった。欧米ではRDやDTは医療専門職、途上国にはRDやDTが存在しない、公衆衛生分野でRDやDTが活躍しているのは日本の特徴、という話(注:欧米、と一括りにするのは大雑把すぎると思うが)。ベトナムとラオスでの活動の紹介。ラオスではトップダウンでRD/DTを制度化するように動いている。学校給食を出すのにイランの栄養士を雇ったら残食が増えて子供が低身長になったのは食文化を無視したからで、ラオス人のRD/DTが必要。マラウイの話、パリ栄養サミット2024の話。著書は"Japan Nutrition" Springerとしてwebで無料で読める。次は須藤さんが栄養のUHCへの統合の話。2021年東京栄養サミットで、「栄養のUHCへの統合」が宣言された。WIC(女性と乳幼児を対象とした栄養補助プロジェクト)で、食品配給と栄養教育をセットで提供した過去。日本の特徴は、個々の食品ではなく献立としての食事・料理を指導する点(注:これも人類生態学者としては当然だし、最近は知られるようになってきたが、栄養学の研究ではまだそこまで常識化はしていないので、こういうシンポで触れるのは良いと思う)。最後の演者はWPRO Nutrition Dashboardの紹介。
- 昼飯は正門近くの中華料理屋でエビチリ定食と油淋鶏を食べた。
- 次の企画は林玲子さんが司会で、東大総長がインフルエンザ陽性になってしまったとのことでオンライン講演し、林芳正前外務大臣が講演した後のピアノ弾き語りでのLet it beとImagineには驚いたが、まあそういえば昔Gi!nsだったんだよな。
- 学生部会企画は実に学生らしかったが、度胸と志は凄いと思う。まあ学生のうちはそれで十分だろう。
- 来年はjstmとjaghの2学会だけの合同大会で那覇で11/16-17とのこと。
- 新幹線で新神戸に向かい、22:30頃に帰宅したが疲れた。しかし明日も1限と2限は講義で、3限と4限は実習対応があるんだよなあ。
- リトグリの「UP TO ME!」パート割を明示した歌唱動画が公開されていたが、リトグリの超人っぷりがよくわかる(ので、他の曲でもやって欲しい)のと同時に、コーラスアレンジの凝り方が尋常ではないと思った。
(list)
▼前【1489】(会議の後で東京へ(2023年11月23日)
) ▲次【1491】(講義と実習(2023年11月27日)
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