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【第1560回】 人類は詰んでいるのか(2024年2月18日)
- ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ攻撃は、十字軍とかホロコーストとかルワンダ内戦とかユーゴ内戦とか文革とかクメール・ルージュといった、人類史上連綿と続いてきた宗教紛争や民族浄化やナショナリズムの衝突という文脈で捉えることもできる。民族浄化(ethnic cleansing)とナショナリズム称揚に共通するのは、どちらでも生物種としては同じ人類なのに、「我々」と「彼ら」という違いが強調され、「彼ら」がまるで人類ではないかのように排斥されたり攻撃されたりするという点だ。全人類が道徳次元4の人であれば、そもそも「我々」とは異なる「彼ら」を想定せず、同じ人類として共感してしまうので排斥や攻撃はできず、こういう問題は生じない。ところが、世界のどこかに道徳次元2の集団があると(というか、日本では概ね7割の人は道徳次元2らしい)、手段を選ばず「我々」の利得の最大化を目指す集団には、その人々の考え方すら「道徳次元2と考えれば理解できてしまう」道徳次元4の人は、争ったら絶対に勝てない。環境収容力が十分に大きいうちは、進化論的には道徳次元2の性質をもちやすい遺伝子やミームの方が適応度が高くなるので、7割くらいの人が道徳次元2という現状になっているのだろうが、プラネタリー・ヘルスを考えねばならないくらい、地球の環境収容力が限界に近づいている現在、人々の道徳次元が上がらないと、人類は種として詰んでしまう。有吉佐和子の『複合汚染』を小学校6年生のときに読んで考えたことを、鄭くんが2冊の道徳本(『東大理系教授が考える道徳のメカニズム』ベスト新書・2013年と『東大教授が挑むAIに「善悪の判断」を教える方法:「人を殺してはいけない」は“いつも正しい”か?』扶桑社新書・2018年)で提案している「道徳次元」という言葉を使って言えば、こういう話になる。でもたぶん、SDGsとかPlanetary Healthとかいう言葉を国としては標榜しつつ自国や自政党の利益を最優先にしている各国代表の動きを見ていると、現状やっぱり道徳次元2がマジョリティだし、各国で主導権を握っているのだろうということになる。道徳次元2だと、「彼ら」は犠牲にしても「我々」が生き残れればよい、という発想になるので、環境収容力に余裕がないほど、「彼ら」を排撃する動機は強化される。逆に考えれば、何か技術的なブレイクスルーがあって、地球温暖化やエネルギーや資源の限界の問題が根本的に解決されたら、攻撃性は緩和されるかもしれない。とくに、たぶん可能性は低いが、地球温暖化の技術的解決ができたら、誰も損をしないから紛争も緩和されるかもしれない。一方で、エネルギーや資源の限界は、旧来のそれを寡占して儲けている道徳次元2のエスタブリッシュメントにとって危機だから、そういうブレイクスルーに対して抑制的な動きが取られる動機が存在する。こうやってマクロにみると、現状の人類は、かなり詰んでいるに近い。鄭くんの本で示唆されているように、道徳次元4のAIが社会インフラになっている状態が既成事実になってしまえば良いのかもしれないが、昨年3月頃に画期的な変化がいくつもあったAI業界で実装されているAIは、必ずしも道徳次元4ではない。というか、現在のAI実装には道徳次元という思想は入っていないように思われる。この辺り、鄭くんはいまどう考えているのか聞いてみたい。
- gridグラフィクスが流行している理由が、やっぱり良くわからない。例えば、bob3bob3さんの『データ可視化学入門』をPythonからRに翻訳した話で、日本の人口変化をChatGPT4ベースのCopilotを使ってPythonからRに翻訳させるとggplot2を使ったコードが出てくるようだが、この程度ならデータ定義部分だけ元コードからコピペしてX <- data.frame(year = 1990:2022, pop = c(1.23611, 1.24101, 1.24567, 1.24938, 1.25265, 1.2557, 1.25859, 1.26157, 1.26472, 1.26667, 1.26926, 1.27316, 1.27486, 1.27694, 1.27787, 1.27768, 1.27901, 1.28033, 1.28084, 1.28032, 1.28057, 1.27834, 1.27593, 1.27414, 1.27237, 1.27095, 1.27042, 1.26919, 1.26749, 1.26555, 1.26146, 1.25502, 1.24947))とデータフレームXを定義しさえすれば、コードとしては、plot(pop ~ year, data=X, xlab="西暦", ylab="日本の総人口[億人]", type="b", col="blue", pch=16, las=1); grid()で済む。パイプを使うよりも、データはいったんオブジェクトとして定義(付値)しておく方がRの思想的にもわかりやすいし、すべて標準のbaseグラフィクスで書けば、間違いなくどのR環境でも動くわけだから、Copilotすらggplot2を使うコードを出してくるのが謎でならない。念の為、bob3bob3さんのコード移植にはAI活用が便利という発表主旨には賛成で、スライドも素晴らしいと思うが、世の中で広まっているやり方に引きずられるのは欠点だと思う。
- ドラゴンズはスワローズとの練習試合で2-4で負け。まだ2月中旬とはいえ、仲地投手がちょっと不安。
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