Latest update on 2024年12月6日 (金) at 07:47:21.
【第1755回】 風邪が5類にというニュースと公衆衛生実習発表会の夜に宙わたる教室第9回を見た後、韓国戒厳令に驚いた(2024年12月3日)
- common coldを5類感染症に含めたという件、5月や7月の検討を経て、8月までパブコメがされていて、11月29日にパブコメの結果が公表されていたが、ARI全般のサーベイランスをするのが目的で、サーベイランスは年内に始まるという。ただし、2024年12月2日の感染症法施行規則改定では急性呼吸器感染症はまだ5類に含まれていないので、ニュースにはなっているが、まだ法的施行はされてないというのが現状なのか? サーベイランスに法的根拠がないという変な状態が暫く続くのか? ちょっと調べてみなければ。
- COVID-19についていえば、2023年1月の対策本部決定を受け、2023年5月の感染症法施行規則改定でCOVID-19を5類に含めた。COVID-19は、当初は指定感染症、次いで2021年2月13日の感染症法改定から「新型コロナウイルス感染症(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったコロナウイルスを病原体とする感染症であって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)」の一つとして新型インフルエンザ等感染症に含められたが、この時以降現在まで5類の定点報告疾患となっている。感染症法では未だに「新型コロナウイルス感染症(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったコロナウイルスを病原体とする感染症であって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)」は新型インフルエンザ等感染症の中に含まれているので、2023年5月の施行規則改定は、厳密にいえば、COVID-19を施行規則に指定する5類に含めることで、新型コロナウイルス感染症のカテゴリから外したということだ。施行規則ではCOVID-19は「新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。以下同じ。)」と表記されていて、感染症法と感染症法施行規則でカッコ内が違うけれども同じ字面の「新型コロナウイルス感染症」が違う実体を意味するのはややこしい。
- 公衆衛生実習の発表会は、今年もバラエティに富んでいて面白かった。一人、まるでどこかでプレゼンの仕事でもしてるんじゃないかというパフォーマンスを見せてくれた学生がいて驚いた。
- 岸政彦『調査する人生』岩波書店が発売されていることを知って、Kindle版を購入した。6人のフィールドワーカーとの対談集。スマホ読書はゲッベルス本を読み終わったので、次はこれにするかな。
- ゲッベルス本を読んでいてふと思いついたのでBlueskyにポストした(in English | 日本語訳前半 | 日本語訳後半)、情報の信頼性を判断するための私家版チェックリストをここにも採録しておく。後半は日本語版で追加した文があるので、ここではそこを英訳しておく。
English version
- Checklist to judge reliability of information (personal view).
- 1) Consistency with real experience
- 2) Logical consistency
- 3) Testability (Potential to be refuted by observation or experiment)
- 4) Supported by multiple independent sources
- 5) Openness
- and more, probably
- (Bad know-how?)
- 6) No frequent repeat
- 7) Few assumptions
- 8) No unrelated information
- and more, probably.
- Repeated presence, implication based on assumption (but strongly insisting in definite expression), manipulating impression always exist in infodemic.
日本語訳
- 情報の信頼性を判断するためのチェックリスト(私見)
- 1) 実体験との整合性
- 2) 論理的整合性
- 3) 検証可能性(観察か実験で反証される潜在的可能性)
- 4) 複数の独立したソースからの支持
- 5) 公開性
- たぶんまだあると思う
- (バッドノウハウ?)
- 6) 頻繁に反復提示されない
- 7) 仮定が少ない
- 8) 関係のない情報が含まれていない
- たぶんまだある
- 反復提示、仮定に基づくほのめかし(なのに断言する)、印象操作などはインフォデミックにつきもの
- 『宙わたる教室』第9回も良かった。Break out of your bubbleの入るタイミングは、『陸王』におけるJupiterや糸ほど絶妙とは言い切れないものの、この歌詞はとてもドラマの内容に合っている。原作第7章の基本線を抑えつつ、原作にない裏側の物語(前を向いて進み始めた朴と偶然出会って喋った後、三浦のところへ行った岳人が殴られるときのやり取りとか、その後の三浦の表情とか)も良かったし、科学部再始動の場面で、藤竹先生の告白に岳人が間に合わなかったというアレンジも良かったように思う。その結果、原作では、「……科学部もそこで終わりだ。それを避けるためには、当初の予定にはなかったことだが、彼らにすべてを打ち明ける他ない」と思って4人を集めた後、顔を腫らした岳人が入室してから藤竹先生の告白が始まるので、生徒たちに「実験は失敗でした」とは言わないのだが、ドラマでは岳人が来ないまま告白が始まるので、藤竹先生の口から「実験は失敗でした」という言葉が出て、それを扉の外で立ち聞きしていた岳人が部屋に入ってきて、実験かどうかはどうでもいいと言い、たぶん心のなかでは藤竹先生の実験を失敗にさせないという思いが溢れてもいるという名場面になった。ただ、その波及効果として、原作では藤竹先生と岳人の決意の間にあった、佳純が実験なら仮説は何ですかと尋ねてからの、藤竹先生の返事に対して、観察する相手を信じてやるなんて実験じゃないと言い、藤竹先生が「あなたの言うとおりかもしれません」と返す場面が消えてしまったのは、少し残念かもしれない。ただ、ドラマ版の流れの方が、より強く続ける決意を感じることができた気もするので、良いアレンジかもしれない。
- 藤竹先生がドロップアウトするきっかけとなった不適切なオーサーシップについても原作に忠実に丁寧に描かれていた。gift authorshipとかも昔は多かった気がするけれども、最近は投稿する際にどの著者が研究のどの部分を担当したかを書くことが普通になっているし、手を動かしただけの研究協力者でも少なくともacknowledgeはする(もっとも、原作でもドラマでも、高専生は手を動かしただけではなくて、自発的に条件検討などもしていたと思われる描写なので、co-authorshipがあると思うが)のが普通だと思うので、格が落ちるからまったく名前を出さないという石神教授の考え方は不合理なので藤竹先生に強く共感する。世の中には格みたいなものを気にする人もいることは経験上知っているが、co-authorの所属なんて普通誰も気にしないよなあ(first authorとcorresponding authorの所属は多少気にするが)。ほぼ、たんなる石神教授という一個人の自己満足であり、藤竹先生がアカデミアに絶望する必要はまったくないものなので、ストーリーとしても再度希望へと向かう(しかもそれが定時制の高校生たちのおかげである)のが大変良かった。
- 科学の世界は全人類に公平に開かれているべきだと思うし、データ解析ソフトウェアに関しては、かつてSASやSPSSに大金を払う必要があった時代から、R(フロントエンドとしてのEZRやjamoviやcranのライブラリを含む)のおかげで、かなり公平になったと思う。公的研究費を使って書いた論文はオープンアクセスジャーナルに出さねばならないという話も、そういう意味では科学の公平性に貢献する。オープンアクセスジャーナルを維持する経費の出どころを著者に求めていては公平性は損なわれるので、もう1歩進めて、信頼できるジャーナルを認証して、そのAPCはすべて国際機関(UNESCOとか)が肩代わりしてくれるとかまで行くと嬉しい。トップジャーナルに出せば大学がAPCを肩代わりしてくれる仕組みはできつつあるが、IFが高いトップジャーナルであれば信頼できるのかという問題もあるわけで。
- ブラジルの干ばつによるコーヒー豆の価格高騰で、半世紀ぶりの高値とのことだが、3年前の霜害のときも、近所の豆屋さんは生豆価格が上がって辛いとこぼしていて、値上げせざるを得ないという話だった。今回はあれを超える凶作なのか?
- 韓国で戒厳令(徐台教さんによる全訳)が発令されて驚いたが、緊急招集された国会で戒厳解除要求決議が190対0で可決され、1日もかからずに終結したようだ。韓国政治の専門家である木村先生のXへのポストが参考になった。
- 『宙わたる教室』、次回予告によると、「藤竹は恩師の伊之瀬(長谷川初範)から思いがけないオファーを受け、逡巡。岳人が藤竹の様子に異変を感じる」という場面があるとのこと。これは原作にない設定なのだけれども、最近連載が始まった原作の続編では、藤竹先生が東新宿高校定時制を離れているので、もしかするとドラマもそこに繋げる伏線なのだとすれば、ドラマの続編も制作されそうな予感がする。
(list)
▼前【1754】(院生の相談2件など(2024年12月2日)
) ▲次【1756】(六甲で会議など(2024年12月4日)
) ●Top
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]