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【第1762回】 講義と会議(2024年12月12-13日)
- 木曜なので7:00過ぎのJRで六甲へ。
- ちょっとメモだけしておくと、SARS-CoV-2の起源について、共和党がまとめた最終報告書(リリース、あと、たぶん同じ報告書だが微妙にURIが違うpdf)は、下のスクリーンショットにあるように(注:報告書の英文で若干気になるのは、COVID-19は疾患名であってウイルス名はSARS-CoV-2なのに、ウイルス名を書かねばならないところをCOVID-19と書いているなど、専門用語として正確な記述ではないところが散見される点だが)、(1)このウイルスは自然界には見つからない生物学的特徴をもっている、(2)すべてのCOVID-19症例は一度だけ人間に感染した症例から分岐したことを示すデータがあり、これまでのパンデミックでは複数回の人間への感染があったのと反している、(3)武漢は中国の最先端SARS研究ラボの所在地であり、不適切なバイオセーフティレベルでウイルスの機能獲得研究をしていた歴史がある、(4)武漢ウイルス研究所の研究者たちが海鮮市場でCOVID-19が見つかったのより数ヶ月前の2019年秋にCOVID様症状を示す病気になっていた、(5)ほぼすべての科学的方法によって研究されているので、もし自然起源の証拠があれば既に見つかっているはずだ、という5つの理由から武漢の研究所から漏れ出した可能性が高いと主張している。一方、Natureのニュース記事は、SARS-CoV-2のどの株をみても武漢の研究所で扱っていたウイルスに近縁なものはなかったので、研究所からの流出起源はありそうにないという、Shi Zhengli博士の報告を紹介している(たぶん2021年にScienceに載っていた情報と同じ?で、(4)の病気の原因ウイルスはSARS-CoV-2と近縁でないと書かれている)。きわめて変異しやすい人獣共通感染症であることが結論を出しにくくしているのだろう(ヒトから他の動物に感染することをreverse zoonosisというが、それによって絶滅危惧の霊長類が危機に曝されるリスクがある)。政治利用はしない方が良いと思うが。
- 金曜は名谷で仕事。事務仕事がなかなか終わらない。学部生が1人、卒業研究で感染症数理モデルをやりたいということで話を聞きに来たので対応。何冊か本を貸した。
- 22:30頃まで仕事をしていたが終わらず、メールチェックすら終わっていないが、疲れたので帰る。
- NHKドラマ班が「宙わたる教室」最終回で使われたスライドを公開してくれた。
- 自然に還らない化学物質PFAS、マイクロプラスチックと合体して最恐の毒に(Gizmodo)は、新聞社や通信社と違って出典の論文がリンクされているのが素晴らしい。まさに複合汚染の研究で、作家の有吉佐和子が『複合汚染』(新潮社)で50年近く前に現代の科学には苦手と指摘していたアプローチ。ぼくは、小学校6年生のときにその部分を読んで痛く感じ入り、大学3年で卒論の研究室を決めるために初めて人類生態学教室に行って鈴木先生と面談した時、魚を使って複数の有機汚染物質への同時曝露の影響を調べる研究をしたいと話したものの一蹴されて諦めてしまったのだが、もし諦めずに続けていたら、今頃は自分がやっていてもおかしくはない研究かもなあ、と思った。
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