Latest update on 2026年5月1日 (金) at 23:34:44.
【第2063回】 講義でも喋った地域医療構想絡みのメモ(2026年4月27-28日)
- 月曜は公衆衛生学と環境・食品・産業衛生学の講義。公衆衛生学は疫学の2回目だったが、疾病頻度の指標、効果指標、バイアス、交絡と丁寧に説明していたら(今年はちゃんとプール化と標準化も説明した)、危惧した通り時間が足りず、臨床疫学の説明はほとんどスキップし、臨床試験とか実験計画の部分は省略せざるを得なかった。その結果、ITTは期末試験に出せなくなってしまった(と宣言した)が仕方がない。環境・食品・産業衛生学は騒音と振動の話をした。モスキート音の実演をすると、毎回、12kHz辺りから学生には聞こえるのに自分には全然聞こえないことがわかってしまって悲しい。
- docomo Starlink Directの運用が予定通り4/27(月)から始まり、国内携帯キャリア主要3社は、すべてイーロン・マスクのSpaceX社が提供するStarlinkを使ったLEO(低軌道衛星)によって衛星通信サービスを提供することとなった。次に買うスマホはStarlinkへの対応は必須条件だな。イーロン・マスク依存なのはインフラとしては怖い気もするが(依存度が高まったところで突然高額な使用料を要求してくるとか?)、僻地でもメッセージングができるのは、山岳医療とか僻地医療でドクターヘリ出動を要請するなどの用途には向いていると思う。LEOによる通信は、地震や津波で地上の基地局が機能停止したときにも避難所と外部支援団体との情報のやり取りに役に立つけれども、その用途ならLEO一択ではなく、docomoが開発しているHAPSも有力な選択肢といえる。能登地震で明らかになった脆弱性への緩和方策として能登HAPSパートナープログラムが既に始まっている。
- 火曜の1限は国際情報検索で検索のリアルタイム実演、2限は保健行政論の講義をしたが、保健行政論は喋る内容が多くて10分延長してしまって申し訳なかった。
- OECD Digital Education Outlook 2026 日本語版: OECDデジタル教育アウトルック2026(東京大学・吉田塁准教授による)は、OECD Digital Education Outlook 2026: Exploring Effective Uses of Generative AI in Educationの日本語訳で、「本書は、生成AIが学習者の学び、教員の支援、教育システムや機関運営、教育研究にどのような可能性と課題をもたらすかを扱っています。」とのこと。
- RStudioの最新版で、Projectのアイコンの左にできている、Posit Assistantというアイコンは、Posit AIを契約すると使えるAIアシスタント機能らしい。あまり自分で使う気はしないが。
- 以前からフォローしている榎木英介さんが病理診断クリニックを開業したそうだ。直接患者を診療するわけではないので、たぶんお世話になることはないと思うが、地理的にはご近所さんだ。素人考えだが、近くにある神戸協同病院の病理専門医は1人しかいないようなので、連携が取れるのではなかろうか。
- 榎木さんのnoteで医療法等の一部を改正する法案が昨年末に成立した際に、「五、都道府県知事は、外来医師過多区域において診療所を開設しようとする者に対し、地域外来医療の提供をすべき旨の要請、勧告等をすることができる。厚生労働大臣は、当該勧告を受けた診療所の保険医療機関の指定を行うに当たっては、三年以内の期限を付することができる。」が医療法に組み込まれたことに触れられていた。榎木さんのnoteでは、病理診断クリニックが外来医師過多区域には開業できなくなるかもしれないというポイントが書かれていたが、今日保健行政論で喋った、日本の医療法では去年をゴールとする地域医療構想が進められ、地域包括ケア体制を整備することで、病院の平均在院日数を減らそうという政策が展開されてきたにもかかわらず、受け皿となるべきプライマリ・ケアを担う一次医療圏の医療計画設定が地方自治体に義務付けられていないのは矛盾しているという話から考えれば、自然な流れではある。ただし、一次医療圏の計画的な整備を義務付けたわけではないので、この裏側(=医療過疎区域に最低限の診療所と医師を配備する)はできていないままである。医学科の地域枠設定に補助金を出して僻地医療に携わる医師を増やそうと計画したが、地域枠で医師になっておきながらプログラムから逃げてしまうことに制約を課した山梨県が敗訴した事例など考えると、一次医療圏への計画的な医師配備は絵に描いた餅のようだと言わざるを得ない。しかしそれを実現しているキューバのファミリードクターも所得の低さからブラジルに亡命したりする事例もあるわけだし、勤務地限定が基本的人権の侵害と主張されれば否定することも難しいので、これを解決するのは難問だと思う。
- bob3bob3のqiita記事Direct LiNGAM の原理はわかりやすく面白い。暇があれば試してみたい。
- 茂木良平さんの、2024年の日本の死亡数が160万5378人で過去最大を更新したというXポストは、『「率」と「数」の関係を誤解していると危ないよ、という警鐘ポスト』だったそうだが、2つコメントしたくなってXにポストした。一つは、人口動態統計は、2025年確定数が出るのは2026年9月なので、2024年までの確定数ならたしかに死亡数は増加しているのだが、実は速報でみると、2025年の死亡数は、2024年の死亡数よりも1万人ちょっと減っているという点である。速報には死因別死亡が出ていないので、なんで減ったのかはわからないのだが、2025年11月までの月報概数を見ると、COVID-19による死者が前年比1万2千人くらい減っているので、その影響とも思われる。もっとも、COVID-19の罹患が見逃されて、別の死因として死亡診断書が書かれている事例は増えている可能性もあるので、確実なことは言えないが。もう一つは、人口が漸減している現状で死亡数が増えているなら率も増えているということで、実際、人口動態統計での粗死亡率が上昇していることはRでlibrary(fmsb); plot(CDR ~ YEAR, type="b", data=Jvital)とすれば描かれる折れ線グラフで一目瞭然だが、これは明らかに高齢者人口が増えていることによっていて、第二次世界大戦終戦後の数年間に生まれた第一次ベビーブーム世代の高齢化が進み、年齢別死亡率が高い後期高齢者にこの人口のボリュームゾーンが差し掛かったことによって死亡数が増えるのは必然である。だから、茂木さんはわかった上で簡略化して書いているのだとは思うが、たんに「率」と「数」の関係というよりは、年齢による交絡を無視しては危ないよ、という方が正確だと思う。もっとも、団塊の世代の高齢化に併せてボリュームとして大きな医療資源が必要になることが予測された流れで2025年をゴールとする地域医療構想が推進されてきたというのも事実であって、公衆衛生的には数を意識することは間違っていない。
- 公衆衛生実習で二酸化窒素を測定するのに、柴田科学のミニポンプのようなちゃんとしたものは高いので、大きなポリ袋に捕集した空気を使うことにしていた。けれども、こういう安いポンプが上手く使えれば、TEA含浸シリカゲルチューブに捕集させても良いなあ。
- ドラゴンズはベイスターズとの初戦、金丸夢斗投手の好投があり、村松選手の先制タイムリーと阿部選手の復帰後初ツーランホームランもあり、最後はピンチになったが松山投手が何とか踏ん張って3-0で勝ちきって4連勝。この調子だ。
- 今日衆議院で可決されたという健康保険法改正案の骨子。OOPを増やすのは、保険者が破綻しないために仕方がない面もあるのだけれども、協会けんぽにおける保健事業の推進については、特定健診と特定保健指導同様に、エビデンスが乏しい事業に金を突っ込んでいるような気もする。生成AIによる文書作成支援というのも、人件費をAI企業への外注経費につけかえるだけにならないかという懸念がある。マスメディアが注目しているOTC類似薬の値上げの仕組みは、一部保険外療養と呼ばれ、選定療養と同じ、混合診療の枠組みで行われる。OTC類似薬の薬剤費の1/4(+消費税)が「特別の料金」として自己負担に追加されるという形で、2027年3月施行予定とのこと。選定療養と同じ枠組みということは、患者が望まない限り、ロキソニンやアセトアミノフェンは医師が処方しなくなるということなのか? まだちょっと良くわからないところがあるので、保健行政論の第8回までには確認しておかねばならない。
🦋 (list)
▼前【2062】(Rのグラフィックデバイス(2026年4月26日)) ▲次【2064】(祝日(2026年4月29日)) ●Top
🦋 = Cite and link this article to post bluesky, if you have logged in bluesky.
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]