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【第2079回】 六甲で講義(2026年5月14日)
- 今日は(昼からだが)六甲で2コマ講義とオンライン会議と国際保健合同ゼミ。
- モーニングショーに今井眞一郎さんが出演し、S1PCとNMNの臨床試験結果(Cell Metabolismに載っているShort Article――にしては長いが――のニュースリリース、なお、S1PCという略称は湧永製薬の登録商標と書かれている)を含むInter-Organ Communicationの話と、老化を遅らせるためには脂肪組織でサーチュインの生成を高める「酵素A」(湧永製薬のリリースに載っているGraphical Abstractは、S1PC投与群ではLKB1――たぶんこれが「酵素A」――の活性化を通してサーチュインによってNAMPTが増え、それが脳の視床下部のNAD+濃度を高めることによって交感神経を活性化させ、筋力増加や体温上昇、老化指標低下をもたらす図になっている。サーチュインとNAD+の関係は五十嵐正樹さんのミニレビュー「NAD+代謝・サーチュインと幹細胞老化」も参照)が働くことが重要なので、BMIで見ると男性では25-26.9の小太りな人が最も死亡リスクが低いこと(高齢者保健の講義資料にも書いたが、それ自体は東京都老人研の小金井研究など多くの疫学研究で既知。痩せ過ぎでも高齢者での死亡リスクが上がることがわかったことから、BMIの基準範囲が一律18.5-24.9だったのを改訂して、日本人の食事摂取基準2025年版、p.42では、基準範囲の下限が50-64歳で20、65歳以上では21.5となった。まだ上限は変わっていないが)の分子レベルのメカニズムの裏付けが与えられたことを強調されていた。番組中では、NAD+自体は腸管内で分解されてしまうので摂取できないが、その材料になるNMNは摂取できるので、S1PCとNMNを同時に投与すると、よりNAMPT分泌が増加するとも言われていた。高齢者保健の講義資料を更新しなくては。
- 真山仁『ウイルス』をKindleで読了。たぶんバイオ系SFとしては最も重要なウイルスそのものについて、もっともらしく感じさせるメカニズムがまったく出てこないまま、何となく正体がわかり(なぜそういう構造のウイルスの感染力が高くなれるのかについて何も描かれないし、そもそも感染経路の詳細が描かれないが)、何となくPCRが確立し、わりとすんなりとmRNAワクチン作成に成功し、副反応が少ない組み合わせ発見に数回の試行で成功し、短期間で多数の死者を出しつつも収束に成功してしまうストーリーだったので不満が残る。参考文献も載っているし、それなりの専門家への取材もしているようだが、たぶんその辺り詰めが甘いと感じてしまったのは、作者の主眼がそこではなく、人間ドラマの方にあったからなのだろう。つまり、バイオ系SFとしてではなく、パニックSFであって、映画『アウトブレイク』『コンテイジョン』に国際謀略小説風味も加えた作品だと思う。そう思って読めば楽しめる作品ではある。ただ、IHR2005にまったく触れないのは現実世界を舞台にしたパンデミック作品としてはどうかと思うし、COVID-19パンデミックの経験から、現在のWHOや各国政府がどのように法律、制度、設備などの準備性を高め、緩和方策を考えているのかという点を踏まえて、より現実的な科学者や医療関係者の対応を想定して描いてくれたら、もっと面白かったと思うので、川端くんが『エピデミック』を現代の状況に合わせて再構築した『エピデミック2』か『パンデミック』を書いてくれないかなあ、と思ったりした。
- 月曜に緊急事態条項は全権委任法に似ている気がするとメモしたが、もっと精度の高い記述がBIG ISSUE ONLINE(ナチ独裁への入り口となった「大統領緊急令」と「緊急事態条項」の共通性。政権が自由に法律を作り、国民の基本権は停止される?!― 石田 勇治さんに聞く)にあった。広く読まれるべき。
- 今日のドラゴンズはベイスターズと延長12回0-0のスコアレスドロー。田中幹也選手が京田選手のフライを捕ったファインプレーは良かったが、ノーアウト一塁で三番村松選手に送りバントという作戦はセンス悪いよなあ。細川選手が敬遠されてボスラー選手勝負になるのは目に見えていて、そこでまだボスラー選手に代打を出すならわかるが、そのまま打たせてダブルプレーという最悪な展開は、控えめにみても采配ミスといえよう。まあ、負けなかっただけで良しとするしかないのか。
- 『捏造の科学者 STAP細胞事件』(文藝春秋、2015年)で名を馳せた須田桃子さんによる【スクープ】京大教授”出世論文”改ざんの舞台裏 告発した研究員は3カ月後に雇い止めを告げられた(Slow News, 2026.5.12)で指摘されている、Science Advancesに掲載された2021年の論文についての、京大の研究不正の検証結果報告書。これは学部1年生向け講義で分担している『アカデミック・ルール』でも研究不正の例示として取り上げておくべきだろうなあ。
- ガオラーにはお馴染みの西廣さんによるReal Soundの記事は、全ガオラー必読と思う。
- 『The Wakey Show』の人気を支えるパペット操演者――その操演術を未来につなげなければいけない深い理由から始まるシリーズ記事は感動する。元sinfoniaの早希さん、もっと世に知られるべき人だと思うが、楽しんでやっているようで良かった。
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