Latest update on 2018年3月7日 (水) at 15:42:47.
【第1024回】 日本人口学会1日目(2015年6月5日)
- 6:00起床。実はまだ人口学会での自分の発表資料ができあがっていないのだが,とりあえず急ぎのメールの返事を打ち,豚肉を冷凍オクラと一緒に炒めてめんつゆで味付けしたものを,茹でた素麺に掛けて朝食を済ませた。
- プラ容器包装を集積所に出してからバス停へ。5分ほど待って貿易センター行きのバスに乗り,地下鉄三宮駅前で降りてバスターミナルへ。既に名古屋行きのバスは着いていた。一応指定席なのだが,ガラガラだったので運転手さんに断って席を移動し,広々と使えたし完全にリクライニングできたし,完璧な乗り心地だった。これで三宮から名古屋まで3,400円で行けるのは素晴らしい。名古屋駅からは地下鉄東山線で星ヶ丘に1本であり,星ヶ丘のMA MAISONというトンカツの店で味噌ロースカツランチを堪能してから会場に行っても開始時刻まで30分の余裕があった。電源をとるため一番後ろの席に座ってDynabook R83を開いた。以下,日本人口学会第67回大会特別セッション「第5回 地方行政のためのGISチュートリアルセミナー」のメモ(中澤が勝手にメモしただけなので,内容は無保証)。
- まずはこれまで5回すべてのGISチュートリアルセミナーの組織者である井上さんから趣旨説明と今日のスピーカーの紹介後,事務的な説明ということでアンケート記入依頼と,人口学会加入のお誘い,今日のセミナーの進め方。
- 最初のスピーカーは社人研の貴志さん。小地域統計分析というテーマ。データは入手しやすくなったが,どのような地図を描き,何を見れば良いのかは難しい。Agenda。小地域統計とは? なぜ小学校区単位なのか? どういうデータが小学校区・中学校区データとして集計可能なのか? GISを使った小学校区別人口集計及び将来人口推計。地図の基本。GISを用いた小地域統計分析の例として,小学校区別人口及び将来推計人口を中心とする地図作成(国土数値情報を利用)。小地域統計とは,市区町村未満の地域単位で集計された統計を呼ぶ。農業集落,町長字,小学校区等。なぜ小地域でみる必要があるのかというと,市の単身世帯割合を全体でみるだけでは,中心部の特定町長字できわめて単身世帯割合が高いところがあることがわからないといった例が示すように,人口特性が小地域で大きく異なることがあるから。小学校区は自治会や老人クラブなど各種団体がまとまっていることが多く,街作りの単位として機能しやすいから選んだ。小学校区,中学校区のデータは,国土数値情報ダウンロードサービスから(メモ注:シェイプファイルとcsvでダウンロードできるので,Rでもできるはず)。全地域を網羅してはいないが,全国の小学校区,中学校区の面データが得られる。GISソフトとExcelを組み合わせる。将来推計はExcelでやる。地図の基本としては,タイトル,縮尺,方位記号,出所,凡例(あるいは注釈)を入れること。縮尺がないと,他の地図と並べたときに困る。コロプレス図の場合,暖色高い,寒色低い=濃色高い,薄色低い,で塗り分けるのが基本。面積によって変わる統計指標をそのまま色塗りしてはいけない。色塗りは率で行う(人口が多いところを濃い色,とかは駄目。規模は円の大きさなどに反映)。強調したい境界は色を変えるなどして見やすくする。サイズと率を組み合わせるには大きさの違う円グラフが良い。凡例として,何人がこのサイズの円というものを付けるとわかりやすい。3時点と変化の地図とか,将来の地図とか,現在から将来への変化の地図とか。地図化する指標としては,総人口,年齢3区分,乳幼児,女性20-39歳,前期高齢者,後期高齢者,老年人口指数,潜在扶養指数等。各指標がピークになる(なった)点の地図も示すと良い。例として,過去,現在,未来の総人口を3本の棒グラフで示すよりも,将来人口を現在を100とする指数にしてからコロプレス図にする方が,現状からの変化がわかりやすい。高齢者1人を現役世代何人で支えるかという図としては,現在のコロプレス図と2040年予測値によるコロプレス図を並べるなど。
- 2人目は社人研鎌田さん。長期的な少子高齢化から人口減少が今後進行。行政サービスの基本である公平性の担保のため,住民の居住分布に沿った施設の評価が必要。この報告では,適正配置の考え方から。地域に施設をどのよに配置したら最も良いかを数理的に解く。数理的展開は17世紀の「フェルマーの問題」から。20世紀になると経済学的視点とか,立地の最適化など。指標の一つとして,アクセシビリティ指標を使う。これは地域ごとの施設の利用のしやすさ。施設の供給量(定員,面積等),需要量(人口等),利用者の居住地域から施設までの距離などを使って,利用のしやすさを定量化。対象となる施設の特性により指標の定式化は異なる(フリーアクセス可能か,アクセスが制限されているかなど)。行政施策における適正配置の例として,児童人口の居住分布をもとにした中学校配置の評価,中学校区の設定,住民から公平なアクセスが可能となる図書館配置,住民分布を元にしたバス停配置,医療施設の適正配置研究も多い(健康度評価にも使われている)。到達圏分析としては,三次救急医療機関までの救急搬送(90分または60分で到達できる地域(圏域)の設定)。68%でいいのか? といったことが行政施策検討の資料となり得る。GIS分析の注意点としては,アクセシビリティ指標を用いた施設の適正配置分析はわかりやすいが,数値の閾値の問題が大。行政的にどのような意味があるのか? 等間隔,自然分類,等々。施設の質を評価することができないのは限界。医師の場合は名医という評判が立つと選好度が上がる。その場合,それを無視したGISの分析結果と現実が食い違う。実際の分析例として,保育所の適正配置分析。認可保育所の決定メカニズムも含めて考える必要がある。必ずしも地理的に近いところにはならない。競合性(1つ決まれば他にはいかない)も考慮せねばならない。2つの保育所の中間にある家のアクセシビリティ値をいくつにするかで,他の人も影響を受ける(定員を需要が越えている場合)。次の例は,今後の高齢者支援について。厚労省は地域包括ケアシステムを推進している(先進事例は埼玉県和光市。いまはすべての自治体で行われているはず)。とくに在宅支援。病床が足りなくなる可能性が高いので,住民の分布とどこに支援施設を作ったらいいのかはGISで解決すべき課題。到達圏分析で人口カバー率も出すべき。小規模多機能型居宅介護を増やす際には,GISのルート分析なども使える。地方での訪問介護,訪問看護について,1人の高齢者を訪問するのに何分を超えると赤字になるかという分析なども重要(この例では35分が損益分岐点)。大分県では広域自治体としては先駆的に,和光市モデルの導入を県内市町村に呼びかけ,補助した。救急医療機関への到達圏分析もした。ArcGIS 10.2 Network Analystの機能を使う。ポリゴンの生成(オーバーラップも可能),解析の実行,クリップ,閾値を事前に設定しておき,15分,30分,60分,90分,120分圏を色分けした地図を作成。次に到達圏別人口の集計をするため,ポイントデータを作成し,空間結合によりポイントを集計すると,30分圏内の人口カバー率が76.1%,60分圏内は96.3%。ここに入らない3.7%はいいのか? といった課題を検討できる(今回は隣接県の医療機関の情報は入れなかったが,入れることも簡単。道路データは若干お金がかかるが,医療機関のデータはreadily available)。この程度の分析なら,慣れれば数時間でできる。ArcGIS自治体GIS利用支援プログラムは,無料で1年間,基本機能が使える。自治体の場合は,ArcGIS自治体サイトライセンスというものがあり,有料だが機能制限なく使える。
- 休憩を挟んで3人目は柏市の細江さん。柏市の紹介から。東京のベッドタウンとして人口急増,現在は微増中。今後減少に転ずると予測されている。今後を見込んでコンパクトシティ構想がある。今後空閑地が増えると見込まれるので,「カシニワ」制度を作って推進中。細江さんは柏市のみどり行政に携わり,さまざまな賞を受賞している。それにGISを活用したマップが大いに役立った。適切に管理されている緑地を共有財産としていき(カシニワ),これを進めて柏の町を1つの大きなgardenにしてしまおうという構想。現在,196件登録(緑地保全面積は約18ha)。カシニワ情報バンクとカシニワ公開の2つの枠組み。3つのタイプとして,広場型,樹林型,花壇・菜園型がある。5月中旬に一斉公開「カシニワ・フェスタ」をやっている。今年は10日間実施。ArcGISを使ってウェブマップを作った。QRコードによってスマホなどでも閲覧可能。このようなウェブマップは,ArcGISオンラインのテンプレートを使うと簡単に作成できる。2013-14年度に低未利用地実態調査を国からの委託で実施,1290ヶ所の空閑地があることが明らかになった。その中で活用できる適地を探し(永続性,作業のしやすさ,必要性・意欲などで順位付けして重ね合わせ,閾値を決めて選択),先にニーズの側から目標設定し,それに見合うだけ空閑地をカシニワに転換するというミッション。このプロセスでGISが使える。ただし,カシニワのうち,樹林地は他の2つと目的が大きく異なるので,違う指標を使った。さらに,10個の指標(土地の平坦度など?)について重要度ランキングを作って得点も傾斜配点した。重ね合わせると指標が足しあわされる(メモ注:重要度は少数の人による評価だそうだ。これって,SDGsの先進国向け適用ランキングの報告書のやり方や,エコポイントのCRAと似てるな。掛け算はないが)。指標の閾値は,目標に見合うだけの面積が得られるように定める(メモ注:たぶんback calculationのようなもの)。最後5分ほど,ArcGISによるデモ。最初にした作業は,点と面をリンクさせること。空閑地は点で登録されており,必要なのは面なので,画像からGISで区画を抽出して地番と関連づける。ただし地番が振られていない場所もあるので,最後の微修正は手作業。指標値の入力は,条件に当てはまるところを抽出して一括入力という作業を繰り返す。全部終われば重ね合わせによる合計点の計算も簡単だし,最高点を出した場所はどこかなどもすぐに抽出できる。
- 最後のスピーカーは新潟市の長谷川さん。極小領域における将来人口推計の可能性,というチャレンジングなタイトル。新潟市は人口が80万人くらい。日本側唯一の政令指定都市。行政のためには需要である人口と施設サービスが空間的にどのようにマッチングしているかが重要。GISを使うとそれがわかる。「極小領域」できれば点で抑えたいが,それは不可能。なるべく小さく。現在まだできていないが,可能性は感じている。施設はいったん建てると50年とか使うので,需要については将来人口も考慮する必要がある。施設も古くなって寿命が来たら閉鎖するので,それらをつきあわせてみる。けれども,小地域人口推計は,たとえば新潟市の推計による変化率を,全地域に同じように適用しているのが現状。明らかに正しくない(国交省マニュアルにはやってもよいと書かれているが)。検証のため,住民基本台帳から作成する全住民位置情報をGIS上に点で打ち込み,さらにそれを家屋台帳と重ね合わせると,建築年と年齢の関連を示す図(人が多いところはピクセルの色を濃くする)などができる。特異年などがあるので,標準化する。70代と40代は同じパタンなので1980年のDIDと2010年のDIDは同様に考えられるが,10代はパタンが違うのでDIDを固定した将来推計は正しくなさそう。そこで,全住民データの2007年と2008年の変化をみて,移動状況を把握する。次に観測点という概念を使ってそこから等距離にある範囲(メモ注:メッシュじゃないの?)の人口を計算するなど,GISによる空間集計をした。観測点は新潟市内に7750点。市外からと市内からの転入・転出データを分析。年齢層によって移動傾向が違うことがわかった。新潟では自動車を使った移動がメインであることもわかる。この極小領域での推計は必要な作業量が多いので,3年後に完成予定。質疑:土地利用率はどういうデータか? 都市計画基本調査(?)が自治体に義務づけられているので,それで得られた,住宅用地,商業用地,工業用地(建物が建っているところ)を分子とする土地利用率が計算される,とのこと。
- 最後に総合討論があって(5年間で急増するような開発地域のトレンドを延伸すると変なことが起こるので,小地域推計では人口密度の上限のような物理的制約を考慮する必要があるというのは同感。所有・契約形態別住宅数からの推計で上限が出せるかもというコメントが福井県立大学の丸山さん? からあった。ただし,大変すぎるので二度とやりたくないそうだ。あと,社人研の小池さんからのコメントで,社人研推計では全国一律にする必要から純移動率を使っているが,市町村などで行政担当者がする場合は,是非転入率と転出率別々に将来推計してほしい,とのこと。それはその通りだな),16:30に終了。これから理事会。
- 理事会が終わって外に出たら,かなりの雨だった。栄の隠れ家的な店に行って理事会の懇親会があり,池下に引き返してルブラ王山というホテルにチェックイン。
△Read/Write COMMENTS
▼前【1023】(講義と院生指導(2015年6月4日)
) ▲次【1025】(日本人口学会2日目〜3日目(2015年6月6日〜7日)
) ●Top
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]