個別鵯記

【第1527回】 今日もメールを打ってから査読と原稿直しと何かの説明を聞く（2017年3月9日）

• 6:30起床。ご飯にちりめんともずくを載せ，麺汁を掛けて朝食。ヴルストを茹でたものと野菜サラダも付けた。
• 名谷駅で銀行によって瀧川記念の賃料を振り込んでから昼飯を買って出勤。
• 今日は高校生風の若者を多く見掛けるなあと思ったら，前期の合格発表日だったか。
• 電話やメールに返事をしていると飛ぶように時間が経つ。15:00からSAGEのResearch Methodsの説明を聞いたが，個人契約はもちろん無理だが，部局レベルでも入れられるようなものではなかった。入れるなら全学だろうなあ。
• メールで入ってくる要件に対応していたら会議に出られなかった。
• 湊川公園廻り終バス1本前で帰宅。随分前に買っておいたレトルトのタイ風グリーンカレーを温め，茹でたモヤシとうどんの湯を切ってからそのカレーを掛けて晩飯。
• 中西準子さんがアゴラに豊洲について書いていることは，地下水が利用されると誤解した懸念を否定したり，環境汚染だから摂取経路を確定したリスク評価が必要という点はもちろん正しいし，環境基準が近似に近似を重ねた結果厳しすぎる値になってしまったという点ももっともだと思う。けれども，タイトルに答えられる議論にはなっていないと思う。
• 第一に，豊洲を再利用するとしても，生鮮食料市場（住宅地も同様だが）という利用法でなくても良いという視点がまったく欠如している。例えば下水処理場にするとか工業製品の市場にするとか大規模商業施設にするとかいった用途ではなぜいけないのか。築地ではいけないという論拠が「先日、筆者は築地市場を見学した。余りの古さにたじろいだ。もちろん、古いから残すという考えもありうるが、文化的な財産とは意味が違うし、何よりもビジネスの場所だから、どう考えても早く移転するのがいいと思った。」というのは印象論に過ぎず，都市計画的な視点もない。築地は市場であるばかりではなく，その周辺の街にも文化があり，移転により廃れさせることを地元の人の多くは望んでいなかった。改修するという手もあるはずだし，その場合と移転した場合のコスト評価や影響予測を出して地域住民にCVMしてもらうことだってできるはずだがされていない。移転ありきになったのは東京オリンピックという無理筋（今更もう辞退はできないと思うが，最低限，アスリートの健康を守るためには，夏開催は辞めて秋開催にしなくてはならないと思う。話がずれるのでこれ以上触れないが）を通すためであることにも触れられていない（移転したい側の意図としては，豊洲を使いたいというよりも築地に道路を通したいのが本音だと思う）。
• 第二に，「地下水中のベンゼンやシアンについて、やや厳しい措置が加えられたのは、大気に拡散する場合のリスクの懸念からであったが、現実には、このリスクはきわめて小さいことが示され（第６回旧専門家会議、2008）、この付加措置は不要であったことが明らかになっている」と書かれていたので，第６回旧専門家会議の議事録を読んでみたら，この懸念について結論が出たとはいえない議論しかなされていなかった。ベンゼンが高濃度で含まれるホットスポットがあることがわかっているのに曝露レベルを平均値で考えるのは明らかに変なので，この議論では「とりあえずこう考える」というスタンスで結論は先送りしているようにしか読めない。Excelマクロのくせに895ドルもするという米国標準で使われているソフトには離散分布や極値分布を仮定するオプションはないのだろうか？　曝露の影響で健康障害を発生する人の数を予測するためには，正規分布や平均曝露レベルではなく，ホットスポットがいくつ生じうるのか，そこから予測される最高曝露レベルが健康障害をもたらすレベルなのか，そのレベル以上の曝露を受ける人は何人生じうるのかという予測でなければ妥当でないし，そういう意味では議事録に平均値しか書かれていないのは解せない。
• 第三に，たぶん埋設で一番の問題は継時劣化で，その時点で漏出が少なくても，何十年かしてから出てくる可能性は否定できない。住宅地にしたり生鮮食品を扱う場にするのは端から筋が悪い。どうしてLove Canalの惨事に学べないのか。環境リスク論の専門家である中西さんが，この辺りのことを知らないはずはないので，敢えて触れていないのだと思われ，何らかのポジショントークなのではないかと疑ってしまう。
• 以上の理由で，ぼくは豊洲移転には大反対。これまでに金と時間を掛けて一定以上の安全性を確保したからといって，全体像を考えた上で筋が悪いならば辞めるという選択肢はありだと思う。そこで辞められなかったのが「コンコルドの過ち」なわけで。過ちを改めるのに遅すぎることはないはず。

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