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【第1993回】 会議と実習(2018年11月20日)
- 6:30起床。レトルトご飯を電子レンジ加熱して梅干し野沢菜ちりめんじゃこを掛け,揚げとネギの味噌汁を作り,冷や奴と大根サラダを合わせて朝食。可燃ゴミを出してから西代駅に歩き,阪神電車に乗って新開地で阪急に乗り換え(これは失敗で,たぶん高速神戸で乗り換えるべきだった),三宮で各駅停車に乗り換えて六甲へ。歩いて本部棟の隣にあるプレハブの会議室へ行き,現代日本プログラムの会議。
- 10:00過ぎに終わって名谷に移動。PATIOで久々に牛メシ弁当を買ってきた。事務処理とかメールの返事とかで昼休み。公衆衛生実習の続きをやりたい学生が来たので実習室の鍵を開けてから研究室に戻って牛メシ弁当を食べた。
- 4限から公衆衛生実習グループ実習2回目。セロハンで蛍光灯を覆って作業環境における光の色の影響を調べている班で,セロハンを貼り付けるのに使っていた養生テープが尽きてしまったのは想定外だった。仕方ないのでセロハンテープで頑張って貰うことにした。他の班は統計処理を進めているところが多い。昼休みに来た班はコロニーカウントにImageJを使うはずだが,明日までは培地で菌を増やさねばならないので,明日やるらしい。
- 18:00前くらいに実習が終わったので木曜のEnvironmental Healthの講義資料の仕上げ作業。19:45頃pdfができたが,紙がないので印刷はできない。印刷は明日だな。
- 帰宅後,豚肉とシメジとタマネギをオリーブオイルで炒め,梅干し野沢菜ちりめんじゃこ掛けレトルトご飯とともに晩飯にした。
- 「僕らは奇跡でできている」,自らの体験に基づいた,しかもおそらく言いたくないであろう過去をさらけ出してまで虹一君のために言葉を尽くす相河先生(この場面を演じきった高橋一生は凄い俳優だと思う)の言葉,さらには「虹一君のすごいところ100個言えます」「水本先生のすごいところ100個言えます」から「誰でもできることはすごくないんですか?」という問いかけを経て,根拠のない強迫観念に囚われていた相河先生の回りの人たちが徐々に自己肯定感をもてるようになっていく展開が見事だった。虹一君の母親,あそこまで強迫観念に凝り固まった人だとすると,言葉だけでは翻意しなかったと思うが,そこに虹一君が実は視覚に問題があって白い紙に黒い文字で書かれた文章を読むのが苦痛であるということがわかったという説明が加わることで視聴者も納得する仕掛けになっていた。ここまででも十分,脚本,演出は素晴らしかったのだが,最後のアレは想像を超えていた。そこまでネタをぶち込んで話を盛り上げなくても良い気がするが,ヤマがないという批判や視聴率が上がってこないことをプロデューサが気にしたのかもしれない。そんなこと,それこそ気にする必要がないと思うが,そこはスポンサーから金を貰って番組を作るという民放の宿命だから仕方ないのか。
- 眠る前に,餅月望『カトリングガール:虫好きな女子って変ですか?』光文社キャラ文庫,ISBN 978-4-334-77756-2(Amazon | honto | e-hon)を読了。体裁はキャラ萌えを狙ったラノベっぽいので手を出しにくいのだが,実は本格的な蚊媒介感染症の教養小説になっていて驚嘆した。何せ,カトリングというのが,「蚊取りing」で,ヒロインである昆虫学者(医動物学者?)の名前も香取さんなのである。感染研が舞台で,ドライアイストラップとか人囮採集で吸虫管を使って蚊を吸いとるとかいったフィールドでの蚊の採集シーンだけではなく,捕まえた蚊を検索表を使ってシナハマダラカと同定するとか,ヒトのマラリアはハマダラカが媒介するとか,グラヴィッドトラップはハマダラカには使えないとかいったマニア度中の知識,果ては同胞種(sibling species)の説明とか,ぼくも知らなかったペンギンのマラリアの媒介蚊はコガタアカイエカであること(このリンク先は海老沢功先生による紹介記事。2016年に出たレビュー論文でも,捕獲されて動物園で飼育されているペンギンにおいて,最も重要なマラリア媒介蚊はイエカ属であると書かれている)という究極のマニア知識まで出てきた。しかもそれらが正確なのだ。マラリアの病原体が原虫であることとか,ヒトに感染するマラリア原虫で「臨床的に問題になるのは」四種類という表現とか(最近になって,地域限定だがサルマラリアの中にはヒトにも感染して三日熱――原虫はP. vivax――と区別が付きにくい症状を呈する流行を何度も起こしているP. knowlesiとかP. simiumがあることが報告されてきているが,まだ地球規模で「臨床的に」問題になるほどではないので,この表現は正しい。この情報を語っている香取さんは医動物が専門で,マラリア専門ではないことを考えたら,実に的確な台詞だと思う),かなり練られていると思う。物語後半,ペンギンマラリアの流行が起きて調査しても蚊から原虫が見つからず感染環がわからないという説明とか,最後に実は……と真実がわかったときの達成感など,虫屋にとっても医動物学者にとっても最高のハッピーエンドで,研究者マインドに強く訴えてくるものがあり(そっち系の読者にとってはラノベ風味は邪魔なのだが,それはそれで間口を広げるというか,トラップとして作用してくれれば良いのだろう),絶対にプロが関わって書かれているなと思って最後まで読んでみたら,元長崎大の熱帯医学研究所の医動物で和田先生と高木先生と一緒に蚊の研究をしていらして,ぼくもパプアニューギニアで蚊の採集をする前に相談にのって頂いたこともある津田先生が監修されていたのだった。さもありなん。これは感染症疫学の講義をするときに学生に勧めるべき本かもしれない。蚊のマニア本は椎名誠の紀行文(椎名誠【編】『蚊學ノ書』集英社文庫,ISBN 4-08-748791-1(Amazon | honto))とかいろいろあるが(専門書なら,池庄司敏明『蚊』東京大学出版会にとどめを刺すが,もう少し入手しやすいものだと,嘉糠洋陸『なぜ蚊は人を襲うのか』岩波科学ライブラリー251,ISBN 978-4-00-029651-9(Amazon | honto | e-hon)が素晴らしい),小説では初めてではなかろうか。
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