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電車の中と食事中は,新大阪駅構内の本屋で見つけて買った,『ハードナッツ!』のノベライズ本(蒔田光治,山浦雅大,徳尾浩司[脚本],豊田美加[ノベライズ]『ハードナッツ! 数学girlの恋する事件簿』角川文庫,ISBN 978-4-04-101624-4(Amazon | honto | e-hon))を読んでいた。見逃していた第1回と第2回の部分を読んだら,感度や特異度が高くても有病割合が低いと陽性反応的中度が低くなるという話だと思っていた部分は,微妙に違っていた(大した違いではないが)。「精度」が99.9%と書かれていて,くるみと伴田刑事の会話では,「1万人に1人がかかる難病で,検査精度は10000人が受けに来たら,9990人が正しい判定ということ」とされていた。スクリーニングにおいて,検査陽性の人のうち本当に病気の人をa人,実は病気でない人をb人,検査陰性だけれども実は病気の人がc人,検査陰性の結果通りに病気でない人がd人とすると,感度はa/(a+c),特異度はd/(b+d),陽性反応的中度はa/(a+b),陰性反応的中度はd/(c+d)なのだが,ハードナッツの言うところの「精度」は(a+d)/(a+b+c+d)であって,どれとも合わない。有病割合が1/10000という稀な疾病であることから,ここでのくるみの論理は「一万人が検査を受けたとすると(…中略…)10人には間違った判定が下る。ということは,本当に病気なのは一万人にひとりのはずなのに,病気と判定される人が10人くらい出てきてしまうってことなんです。だから,伴田さんの病気の確率は,99.9%じゃなくて,10人のうちのひとり,せいぜい10%ってことなんです」となっていて,結局は有病割合が低いから陽性反応的中度はせいぜい10%くらいだろうという話に帰着するのだけれども。もう少し丁寧に書くと,有病割合は(a+c)/(a+b+c+d)だから1万人が検査を受けたらa+c=1のはずで,伴田刑事の状況はスクリーニングで陽性判定が出た段階なのでa+bの中に含まれており,1から精度を引いた値を考えるとb+c=10だから(a+c=1を代入するとb=a+9となる),くるみが言いたいことは,a/(a+b)=a/(2a+9),かつこの関数はaが-9/2の点を除けば連続で単調増加なので(注:a/(2a+9)をaで微分すると(2a+9-2a)/(2a+9)^2=9/(2a+9)^2なので常に正),a/(a+b)が取れる値は,0<=a<=1ではa=1のとき最大になり,1/11だ! ということになる。「せいぜい」というのは「多く見積もっても」という意味であり,1/11を計算するとわずかに9%は超えているから,「せいぜい10%」という表現はまったく正しいのか。△Read/Write COMMENTS
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