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【第67回】 院生の相談に乗ってからシンポジウム(2019年3月22日)
- 6:00にアラームで起きたが二度寝してしまい,7:30起床。
- 名谷に出勤して院生の相談に乗ったら12:00を過ぎた。郵便物をピックアップして慌てて三宮に向かう。古澤拓郎『ホモ・サピエンスの15万年:連続体の人類生態史』ミネルヴァ書房,ISBN 978-4-623-08444-9(Amazon | honto | e-hon)をご恵贈いただいた。ありがとうございます。
- 若干遅れたが,とりあえずInternational Symposium 2019 - The support for gender and vulnerability of the aging society -に出席中。以下メモ。
- 基調講演はカロリンスカ研究所のOTの方。スウェーデンの老人ホームの話と家庭での介護の話をされていた。現在進行中の,老人ホームにおいてうまく共有空間をデザインすると帰属意識を生むのではないかという話が,タイトルだけだったのが残念だった。帰属意識ができるのは良いことなのか? という点をツッコんでみたい気もしたが,中身に触れなかった話のさらに末節に触れるのもどうかと思うので止めた。
- シンポジウム最初の発表者もヨアネム大学のOTの方で,ご自身の研究所で進められているプロジェクトをいろいろ紹介された。都市計画までOTが関与するのかというのは驚きだった。が,考えてみれば,ソーシャルキャピタルを高めることに寄与するであろうweak tiesの形成などを考えたら都市計画も考えるのは本質的だな。
- シンポジウム2人目は台湾の方で,最初は女性研究者が恵まれていないという話をしていて,ここまでの高齢者のケアの話と若干かみ合わないかもと思っていたが,話の後半は高齢者を含む,社会の中でvulnerableな人がケアのターゲットというような視点で展開したのでつながった。
- シンポジウム3人目はタイの方で,幼児の保育者のエンパワメントを発展させるのに,"skip generation family"において祖父母が孫を養育することの可能性というトピック。タイでも出生率低下と寿命の延長と移入者の増加が起こっているが,平均寿命はまだ70代なのでスウェーデンなどとは事情が異なるとのこと。2013年に出たThai familiesの型別の割合の推移を示したグラフによると,タイでも単身世帯が増えているが,祖父母と孫の世帯(skip generation family)が増えている。これって中国の留守児童と同じだな。イサーン(東北部)では親世代が出稼ぎに行ってしまうので祖父母と孫だけという世帯が多いという。若者もバンコクなどに出てしまって家に帰ってこない(祭りの時を除く)。チェンマイ近くのランプーンという工場地帯でも親世代は工場労働者となって,家には祖父母と孫だけという家族が多い。mixed methodで研究した。子育てにネグレクトが多い。栄養の知識が無いため,体重増加が遅く低身長になるとか,虫歯になるという問題も起こっている。そういう子供をサポートするためのdisciplineも存在しない。コミュニティ参加(普通はinvolvementだと思うが,participationと言っていた)を含む包括的なプログラムが必要。GSICSの院生が中国の留守児童の研究で明らかにしたところでは,祖父母が養育者である留守児童でも寄宿制の学校にいればとくに栄養の問題は起こらないので,そういう対策はないのか,と全部終わった後で演者に尋ねたところ,おそらく学童期になればそうかもしれないが,問題はもっと小さいときだということだった。まあそれはそうかもしれない。乳幼児では食事調査が極めて難しいので,実証研究は難しいと思うが。
- 4人目はグライナー教授で日本の高齢者の問題について。前期高齢者と後期高齢者,あるいは男性と女性ではケアを要する原因が違っているので,介護予防のアプローチも変える必要があるといった話。運動,栄養,口腔機能,等々。後期高齢者になると要介護が23.5%になるのでケアが大切とか。家族の介護では女性が介護者として大きな負担がある。介護のために仕事をやめた人の7割以上が女性。老老介護も問題。とくに認知症高齢者が認知症高齢者を介護するような場合。これから1000万人以上が認知症ケアを受けることになる。新オレンジプランで対策。そのため,認知症看護能力(dementia nursing competency scale)を評価するスケールを開発した。看護師対象で調査を行い妥当性検証。5因子。AGFIが0.6台であるように見えたが見間違いか? 仮に看護師では使えるとして,一般家庭での能力評価にも使えるか? そのほか,VRエピソードを使った「縦断的な」急性期病院の看護師トレーニングの研究も紹介された。事前事後だけではなく2ヶ月後にも効果が残っているかを検討中とのこと(だからlongitudinalなのか)。前述の尺度の改善が,対照群よりも介入群の方が有意に良かったとのこと。
- その後は総合討論が45分ほどあって閉会となった。上述の通りちょっとspecificすぎ,かつ時間が掛かりそうな質問しか思いつかなかったので手は挙げず,個別に聞いて済ませた。
- 明日は朝早くから京都に行って人口学会関西部会なので,懇親会にも出ず直帰した。『ホモ・サピエンスの15万年』に目を通したところ,確かに古澤さんが言っていた通り,人類生態の小ネタ集という側面はあるけれども,人類の生存は多様で複雑だということが一貫したトーンであり,新しい文献も多々引用されていて,大変面白い本だった。プリオン病耐性遺伝子G127Vの話は知らなかった。かつて森山和道さんから人類生態学は面白いと思うが教科書がつまらないという感想を伺った記憶があるが,この本ならば面白いと言っていただけるのではないかと思った。
- 今日のプロ野球オープン戦はナイトゲームで,ドラゴンズはイーグルスと9回表を終わったところで2-2の同点。後はサヨナラ勝ちか引き分けか。高橋周平選手のサヨナラホームランだと盛り上がるんだがなあ……と思ったが,ノーアウト一塁で回ってきたため送りバントであった。次の堂上直倫選手と勝負してくれたのでヒットが出たが,ここで走者遠藤選手が二塁から進塁しなかったため(ショートが捕るかどうかギリギリのゴロヒットだったらしいが,それでも9回裏だし進塁を狙う場面ではなかったか),今日は乗っている加藤捕手をそのまま打たせる手もあったと思うが代打に出した福田選手が右飛に終わり,最後京田選手も内野ゴロに倒れて引き分けであった。ここを決め切れれば強いんだがなあ。それにしても去年が嘘のようにリリーフ陣は完璧だな。
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