原著論文で,Shen Y et al. "Community Outbreak Investigation of SARS-CoV-2 Transmission Among Bus Riders in Eastern China"(JAMA Internal Medicine,2020年9月1日)は,3月に西浦さんたちがプレプリントサーバにアップロードした,換気の悪い閉鎖空間での感染リスクが高いことを示した論文をイントロで引用しているが,1月に中国東部で2台のバスに100分間(エアコンは室内再環流モード)乗って150分の仏教儀式に参加した人たちのうち,SARS-CoV-2に感染している人が1人混ざっていたバス2の乗客68人のうち24人(最初から感染していた1人を含む)が後日のRT-PCRでSARS-CoV-2陽性となったのに対して,バス1の乗客60人は誰もSARS-CoV-2陽性とはならなかったという報告。感染したかどうかをバス2の中の座席位置が最初から感染していた人に近かったかどうかの2群間で比べた結果,リスク差もリスク比も統計的に有意ではなかった(接触感染や飛沫感染よりもマイクロ飛沫―この論文ではエアロゾルと言っている―の滞留によることを示唆する)。仏教儀式ではなく換気の悪いバスという閉鎖空間で集団感染が起こったというエビデンスである。