Latest update on 2021年7月4日 (日) at 18:43:39.
【第634回】 ワークショップと論文審査と院生指導(2021年1月26日)
- 7:30起床。81.45 kg……。山越えか海回りで出勤しよう。その前に可燃ゴミ出しだな。99%,36.2℃。
- GoToに関して,個人ベースの追跡データは政府が法制化してとるか,巨額の謝金でも用意してデータ提供者を集めるかしないと得られない(そういう研究は,研究費申請してもたぶん通らない)。だから,先月の津川さんたちの論文が出たときも書いたが,西浦さんたちの論文も,集計データに基づいて疫学的な解析をするしかなく,「GoToと感染拡大の因果関係が示されたわけではない」という言い訳がされるのは見えている。しかし政府はそういうデータを取る気がない(何度も書いているように,定性的には関連がないはずがないので,個人ベースのデータをしっかり取ってしまったら因果関係が強く示唆される結果が得られる可能性がかなり高いし,調査をすること自体がGoTo利用者に負い目を感じさせるから抑制的に働きそうだからでもあるだろう)。津川さんたちも西浦さんたちもいわば火中の栗を拾ってくれたので尊敬するが,テレビのコメンテータは,強い結論を言っていない点に突っ込むのではなく,元々関連がありそうなGoToキャンペーンと感染拡大について,整合性のある疫学的な知見が出たのだから,GoTo再開は感染終息まで止めろと言えば良い(元々,感染終息後の景気浮揚策だったわけで,それを前倒しでやったのが間違っているわけだし)。(以下追記)四日市喘息の時にできたことができないのは残念。疫学的知見の政策実装という意味での公衆衛生は,1970年代より後退しているということ。
- ついでに書いておくと,昨日の国会で,野党から,西浦さんを国会に参考人招致しようとしたが政府から民間人なのでという理由で拒否されたというコメントがあった点について,その拒否理由がおかしい点には同意するが,研究者は,専門家として自信をもって言えることは論文に書いているので,参考人招致されても「論文に書いた通りです」しか答えられないと思う。端的に言って時間の無駄になるし,悪くすると研究者がスケープゴートになって身の安全が脅かされる(川端君のインタビュー本でも,西浦さんや尾身先生に脅迫があったと書かれていた。行き場のない怒りや苦しみを抱えた人々はストレスの代償規制としてのスケープゴートを求めてしまうので,何か突出した形で目立つ個人が標的になりやすい)。野党もこのパンデミックを終息させたいなら,そういう形で研究者を権威付けに利用しようとするのではなく,むしろちゃんと研究できるようにする方向でサポートして欲しい。(追記)ぼくがtwitterで固定しているメディア対応を原則お断りしている理由も同じことで,既に書いた以上の情報は,研究者として,あるいは専門家として自信をもって喋ることはできない。
- 今日は午後にGSICSのワークショップと院生相談が各1件入っているが,明日から副査として保健学研究科の修論について口頭試問を何件かしなくてはいけないので,その査読も進めなくてはいけない。院生が投稿予定の論文の原稿チェックもしなくては。
- 1月31日午後に放送大学で統計的因果推論の講義が8回分一挙放送されるので視聴/録画しようと思ったが,いつの間にかケーブルテレビでは放送大学が受信できなくなっていた。残念。
- 久々に海回りで出勤した。須磨海岸を歩くのは気持ちが良い。
- ワークショップ終了。質問紙調査の結果を使うなら,元の質問紙が開発された意図と,どのような対象集団に使えるのかを確認しておくことは必須であろうと思われる。土台をちゃんとチェックしておかないと,その先がどんなに面白そうでも弱い。
- 某研究計画で公衆衛生が意味する内容について長い説明を書いたがボツになったのでここに採録しておく。既にいろいろなところで書いたこと(例えばこれとか)や公知の事実を文章にしただけで,とくにオリジナリティはないが。
公衆衛生は医療のみならず人が健康に生きることのできる社会政策の実装を含む応用科学であり、国際的には医療とは別立ての専門性が確立しているが、本邦では医師法・歯科医師法によって医師・歯科医師が公衆衛生を掌ると位置づけられているため、厚生労働省で保健医療行政に携わる専門職である医系技官の応募資格も医師・歯科医師にしか認められていないし,それにもかかわらず、医学部や歯学部では国家試験対策でのみ重要なマイナー科目扱いであり、公衆衛生政策立案や実装に必要な疫学や統計学、医療経済学、人口学、医療人類学、環境保健学、地域保健といった専門分野を学ぶ機会はほとんどない。近年いくつかの大学で専門職大学院としての公衆衛生学修士課程が設立されたが、相変わらず医療専門職の亜流として扱われている。米国の公衆衛生教育が医学とは別の公衆衛生学大学院で行われ、5つのコア科目として疫学、生物統計学、環境保健学、医療サービス管理学、社会科学と行動科学の系統的な講義が行われており、医療経済学や医療人類学、情報科学やリスク科学も含めて、人々が健康に暮らすことができるための政策の社会実装を科学的根拠に基づいて行うためにどうすべきかを学べるカリキュラムが確立している(そのための教授陣も広い分野にわたって揃っており、例えばハーバード大学の公衆衛生大学院には、社会疫学を専門としコミュニティにおける健康増進の鍵の一つとしてソーシャル・キャピタルが注目されるきっかけを作った河内一郎教授もいれば、COVID-19パンデミックのごく初期の段階からもっとも正確で長期的な見通しまで含めて提言を続けてきた感染症疫学のMarc Lipsitch教授もいれば、RAND医療保険実験で有名な医療経済学のJoseph Newhouse教授もいるといった素晴らしい陣容である)状況と対比すると、きわめて貧弱であると言わざるを得ない。COVID-19対策における政府の専門家会議が、経済のことは専門外であるとして、行動制限や休業要請とベーシックインカムとしての所得補償をセットで実施すべきであると提言できなかったのは、彼らが医療経済学を学んでいなかったことも一因であろう。本来の公衆衛生は政策実装が目的なので、経済的側面の評価も当然含まれるべきなのに、それができなかったのは、本邦の公衆衛生の貧弱さを示している。しかも、本邦の多くの大学の医学部で公衆衛生学教室は衛生学教室と合併させられたり、廃止されたりと、近年ずっと縮小傾向にあった。
- 帰宅してパスタとキャベツを茹で,ベーコンを載せてトマトバジルソースを絡めて晩飯。食材が尽きたのでLIFEに行ってこよう。
- このtweetで知ったが,WHOのAsia Pacific Observatory on Health Systems and Policiesから出ているCOVID-19 Health System Reponse Monitor: JAPAN。後で読もう。しかしこのシリーズ(日本,韓国,タイ)のページは,なぜWPROでなくSEAROにあるのだろう? WHOのHealth System Response Monitorのサイトからはリンクされていないが,これから入るのだろうか?
- 明日の夜22:00にTHE FIRST TAKEにリトグリとPentatonixのコラボは大変素晴らしいことだが,芹奈も入りたかっただろうなあ。でも焦らず体調回復に努めて欲しい。それにしてもリモートでアカペラ一発録りって神業ではなかろうか。
(list)
▼前【633】(会議と講義(2021年1月25日)
) ▲次【635】(修論発表会1日目(2021年1月27日)
) ●Top
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]