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【第651回】 集中講義3日目の朝,Chick Coreaの訃報に接してSpainを聴く(2021年2月12日)
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- Chick Coreaが亡くなったとのニュース。享年79歳とのこと。言わずと知れたジャズピアノの巨匠で,『Duet』という形でそれまでオリジナル曲でのアルバム発売に拘っていた(と思う)上原ひろみがスタンダードを弾いたアルバムを出してくれたのもChick Coreaのおかげだったと思う(この動画がとても楽しそうだ)。R.I.P.
- moraで買えるThe Musician (Live)は,2011年にNY Blue Noteで行われた23回のライブからのベストテイクを厳選したというアルバムなのだが,このアルバムに入っているSpainはBobby McFerrinを迎えてビートボックスとベースとスキャットが人の声,ピアノがChickという衝撃的な演奏であった(Bobby McFerrinとChick CoreaのSpainのセッションは2012年の映像もあったが,このチャンネルは凄くて,Bobby McFerrinと器楽的唱法の双璧をなすと言われるAl JarreauによるSpainもあった)。もちろん,上原ひろみとの『Duet』に入っているセッションも凄い演奏だが。ちなみにBobby McFerrinはDon't Worry, Be Happyで世界的に有名で,かつてどこかに書いた気がするが,ぼくはリトグリの"Don't Worry, Be Happy"も凄く好きだし,このMVは何となくクレージーキャッツで植木屋さんが「ゼニのない奴ぁ俺んとこへ来い,俺もないけど心配すんな」と唄っていた雰囲気を思い出させる。Playing For Changeによる演奏も最高な曲だ。Spainに話を戻すと,自分がもっている音源にはいくつかカバーがあったなあ,とTuneBrowserで検索してみたら,Maiko『Hope』と寺井尚子『Pure Moment』に入っているバイオリンカバーや(Maikoさんの方が比較的素直なカバーであるのに対して,寺井さんの方は変拍子にアレンジしていてかなり独特だがどちらも良い),Jake Shimabukuro『Ukulele X』に入っているウクレレカバーに加えて,平原綾香『マイ・クラシックス2』に入っているスキャットカバーが出てきて,通して聴きたくなったのでプレイリストにして保存した。
- このCDの存在は知らなかったが,早速注文した。配信販売されていないようなのが残念。
- 菅田将暉・有村架純主演映画のインスパイアソング(?)「勿忘」が売れているというツインボーカルバンドのAwesome City Club,テレビ番組で空手の演舞を披露していたドラムスが良かったのだが,去年脱退してしまったのだよな。
- WPROの求人,実は川端君みたいな人が適任と思うが(まあ川端君は応募しないだろうけど),ヘルスコミュニケーションにそういう人材が必要だと,WHO自身が認識したということだな。
- 日本医師会と日本循環器連合からの連名で,新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言下の心血管病診療に関する緊急声明(2021年2月5日)が出ていることに気づいた。COVID-19の医療への影響は,基礎疾患としてこれらの疾患をもつ人がCOVID-19に罹った場合に重症化リスクや死亡リスクが高いことばかりではなく,この声明に書かれているような間接的影響を考えると非常に甚大なものになる。
- 杉下先生の講義も大変興味深かった。安全な立ち位置からの浅薄な誤解に基づく批判が人を殺してしまうこともある,というKevin Carterの話(これは,一つにはメディアの伝え方の問題もあると思う。もう20年近く前にマスメディアへの要望を書いたが,改善する気配が見られない。つい最近も,どこかのメディアが北先生の言葉に勝手に括弧書きで言葉を補い,それを北先生の発言と受け取ってtwitterで松永さんが批判し,それをそのまま拡散した人が何人かいたが,本当に害悪が大きい),Independent Churchに代表される「作られた伝統」は,救いの無い現実に何とか対処して生きていくための社会装置と考えれば一種のレジリエンスであるという見方,Hart JTが1971年にLancetに書いたThe Inverse Care Lawという論文から,格差がもたらす貧困が健康を損なうこと,Lancetに掲載されているGlobal Health 2035では,格差を無くす努力をちゃんとすれば2035年にはUHCは可能であると書かれていること,しかし患者だけではなく家庭や地域での予防や健康増進が必要で,そのためには健康面だけでなくシステム全体を変えることが必要なので,住民からの内発的な決定が必要で,国際協力に携わる人は触媒になるべきという話が1コマ目で,2人の院生との質疑が良かった。2コマ目は表象することの意味という話から。James Cliffordの"Writing Culture"の表紙写真について,著者自身が,自分は英語圏の読者に自分の言葉で語ることだけ考えていて,調査対象者に背中を向けて話を聞いていた,と反省したという(この本はポストモダン人類学において議論の的になり,10年以上経ってから"After Writing Culture"という本が出たほどだが,その書評をJames Clifford自身が書いているのが面白い。Clifford, J. (1999). After Writing Culture. American Anthropologist, 101(3), 643-645.)。当初予想と異なり,意外にアフリカではCOVID-19のCFRが高くないし(年齢構造が若いからという点が大きいが,全世界的にだいたい2%前後),人口当たりの死亡率も高くないので,コミュニティで感染拡大がそれほど起こらない社会文化的な仕組みがあるかも,という話から,HIVに対しても薬草からMchapeという薬を作った人がいて,そこに50万人もの人が詰めかけたが,後に効かないとわかって人がいなくなったけれども,開発者は誰かが呪術のかかった物を混ぜたと言っているという話(この論文が参考になりそう)を示して,社会の色々なことが医療と繋がっているのは,ある意味強靱な社会なのかもしれないとのこと。その後は,多元医療や自然と人の媒介物としての妖怪という話に絡めて紹介される絵や本が面白かった(落合俊也『すべては森から』,出口康夫『IからWeの時代へ』,宮本常一『忘れられた日本人』だったと思う――ただ,せっかく宮本常一さんに触れるなら,安渓遊地・宮本常一『調査されるという迷惑』にも触れて欲しかったが――,フーコー『狂気の歴史』,Can the subaltern speak?,ローマクラブ『成長の限界』)。
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